こんな僕ですが、VRMMOを始めてみました!〜初心者ゲーマーが世界でも有名なプロゲーマーになっていた話〜

@hina0303

第1話 路地裏の店

 Fantastic World Online

 (ファンタスティックワールドオンライン)


 通称FAO。


 世界で始めて作られた、史上初のVRMMOだ。販売された一週間のこのゲームを売る店はどこもかしこも行列の嵐。そしてそれがテレビに話題にもなったほど。


 プレイヤー人口も、どんどん伸びていき一週間後くらいには一千万人ほどまで増加。大人気のオンラインゲーム。


 その事実を僕も前から知っていた。


 だから、ファンタジーな世界とかよく知らなくても、こんなに話題になっているものだから買いたくて、でもここの近くの店はすべて売り切れでどこにも売られていなかった。


 だから、諦めていた。いや、諦めようとしていた。諦めきれなかったのだ。


「………はぁ。テレビでもよく出てくるから、買ってみたかったんだけどなー。」


 やっぱり、諦めようと思っても、諦めきれないよ。そう思いながらため息をつく。


 そんなことを考えながら、僕は高校から家に向かって下校していた。……ちょっと残念な気持ちになっていたことが影響してか、足の動きも遅い気がする。


 でも、VR技術がこんなにも発達するなんて、今の大人たちは思いもよらなかったんだろうな。今日、先生から昔の話を聞いたけど、そのときはVR技術が発達していなかったらしいからね。


「ニャー……ニャー……」


「………ん?」


 猫……の鳴き声かな?どこから聞こえてきたんだろう?


 僕は、どこから猫の鳴き声が聞こえたのか探してみた。そして、路地裏のゴミ箱の裏に、猫は居た。


 猫は、身体が挟まって動けなくなっていたらしい。どこかその猫の顔が悲しそうに見えた。


「大丈夫?」


「ニャー……」


 よいしょっと。


 僕は、ゴミ箱をどけてあげると猫は動けるようになったようで路地裏の奥へ歩いていった。


「もうゴミ箱の裏なんかに挟まるなよー。」


「にゃー!」


 僕は、猫を見送っているとふと路地裏になにかあることに気付いた。


「………ん?なんだろう?なにか建物?明かりが付いているから………なにかの店なのかな?バーとか?」


 とりあえず、行ってみようかな。バーとかだったら戻ってくればいいし。


「これって………ゲーム?」


 窓から薄暗い建物の中をのぞいてみると、なにかうっすらとゲームが見えた様な気がした。


「……………入ってみるか。」


 好奇心からだろう。僕は、この中に入ってみたくなった。


 カランコロン


 扉の上についている鈴がカランコロンと音を鳴らす。いろんな店でよくあるやつだ。



「……………おぉ!」


 中に入ってみると、いろんなゲームが数多く集まっていた。今話題のものから昔にあったアナログゲームまで。


 そして、その中にはFAOがあった。


「えっ……!?ある……!」


 僕は、ゲームの入った箱をみてそうつぶやいた。実物でみたのは初めてかもしれない。売り切れるのは、いっつも行列のもっと先。一目見ることすら叶わなかったのだ。だから、興奮していた。


「いらっしゃい。どうしたの?」


「……うわぁ!?…………あっ、大声出しちゃってすみません。」


 そこにいたのは、おばあちゃんだった。駄菓子屋とかで働いていそうな。……って、これは偏見か。


「いいよいいよ。それにしても、普段はお客さんなんて来ないのにねー。路地裏にあって分かりにくいのに、よくここに来れたねー。」


「あの、路地裏に猫がいたので、そしたらここを見つけたんです。」


「へぇー、そうなんだねー。それで、欲しいゲームとかあったかい?」


「はい。このー……」


「あぁ、テレビで最近話題のやつかい?じゃあ……千円でどうだい?」


「えっ!?いいんですか?他の店では店では最近売り切ればっかりしていてネットでは1万円近くでも売られていたりしてたんですよ!?まぁ、今はもう売られてないですが。」


「いいのよ。最近、話し相手がいなくて寂しかったからね。そのお礼さ。」


「……あっ、ありがとうございます!お言葉に甘えさせてもらいます!」


 そして、買うともう一度おばあちゃんに感謝の言葉を述べてから、この店を出た。


 カランコロン


「……それにしても、あんなところに店があったなんてね。それにしても、FAOを買えて良かったー!」


 あー、楽しみでしょうがない!


 いろんな人がFAOで動画投稿とかしてたからなー。見た限りでもすごい景色がきれいで、戦闘シーンも迫力がすごくて、すごい楽しみだったんだよなー!


 僕は、ルンルン気分でスキップしながら家に向かったのだった。









「ただいまーっと。」


 僕は、誰もいないマンションの一室に向かって挨拶をした。一応、誰もいなくても挨拶は怠らないようにしている。


 手を洗ってうがいをして。


 学校の宿題は……面倒から後でやろう。


「よしっ、これでゲームの準備は完了だね。」


 僕は、前に先にゲームのVRの機器の方は買っちゃっていたから追加で買う必要はなかった。


 最初は、普通に手に入れられると思って先にVRの機器を買っていたんだけど、買えなくてがっかりしたんだよなー。買えてよかったよ。


 そんなことを考えながら、僕は電源を入れたのだった。電源ボタンを押してから電源が入るまでの時間は少しなのに、どういうことか5分くらいすごい長く感じていた。

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