第10話

「なんだ」


ざぱーん。というのは少々幼稚な表現ということで多少文学的な表現に変えれば、誰かが水辺に上がる音。

どこが文学的か。と言われる方に言えば、確かにそうだ。これを文学と呼ぶ地域はない。


事務処理が主な王様と違い、魔法使いと魔王は場数を踏んでる側。

すぐさま臨戦態勢。

魔法使いは明かりを照らす魔法を唱える。暗闇では目くらましにも使える。ここら辺は創意工夫と年の功


「きゃ、何、誰」


まぶしい光が映し出したのは若い娘。


「いきなり魔法を唱えるでないわ。失礼じゃないか。すまないね。娘さん。二人とも気が立っていて」


王様は魔法使いを叱る。

魔王も合わせて臨戦態勢を解く。


「あなたたちは誰ですか?ここは遊びにきていい場所じゃありませんよ」


光の中で一瞬映し出された姿は若い娘だったがよく見ると違う。

下半身が魚だ。人魚というやつ。城下町にいたのか。

湖の岸に腰掛けるようにしてこちらを見ている。上には簡単な水着。

人魚も法は守らなければならぬ。


「ここは王家の土地です。入り込めば死罪になりましょう」


そこで人魚は三人を見定める。

老人と愛嬌があるおじさん。あとかっこいい若者。

遊び半分で入り込む人間には見えない。


「それともなにかの拍子に迷い込んでしまったのですか?」

「そうなんだが、ここは王家の土地なのか」


あなた達の城のことでしょう、と魔王は目線で主張する。


「そうです。ですから早く離れて下さい。帰り道がわからないなら案内しますから」

「陛下、その、正直に話した方がよろしいかと」


魔法使いは言った。

王家の土地に無断で立ち入るのは重罪。重罪ではあるがそれは王様には適用されない。


「そうだなぁ。こういう自己紹介もどうかとおもうが、俺がこの国の王なんだ」


ややこしいことにはしたくなかったが、王家の土地に出入りする娘(人魚でも娘でいいのか?)なら話してもいいだろうと王様。


「おじさんの冗談にしても笑えませんよ」


真顔でこう答える人魚。

正直王様らしさがないもんなぁ、とは魔王の心のうち。

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