第30話 危険なゲーム(3)作戦会議の夜

 皆で、そいつらで間違いない、と意見が一致した。

「しかし、流石は涼真君!」

 悠花は褒めているのだが、涼真には褒められている気がしないでいた。

「相手に違和感を抱かせずにしゃべってもらうなんて、特技だぞ?」

「そう言うけどね」

「羨ましいわ。私の所に来る人って、全員、緊張して……はあ」

 雅美の所にはそういう男子しか行かなかったのだ。

「俺も、普段から避けられたり緊張されるからな」

 湊はあっさりとそう言った。

「私、それよりも経理の不備とかばっかり見付けちゃって」

 悠花が苦笑した。

「な。自信持てって」

 湊がそう言って肩を叩き、涼真は微妙な気分で一応頷いた。

「じゃあ、今月2日に花園神社の裏で何があったかを調べて、そこにどの生徒が関わっていたか調べれば済むな。

 室長」

「わかりました。そちらの調査は、警護課に回しましょう」

 錦織が言って、ミーティングは終わった。

「あ、涼真。送って行くよ」

「いいよ」

「どこから見ても高校生だからな。補導されたら困るだろ」

「くっそう!ありがとうな!」

 それで解散して行った。


 吉村達4人グループは、真面目な顔で額を寄せ集めていた。

「あれ、絶対に俺達を探してるよな」

 山田が言う。

「学校のやつらの中にも、怪しんでいるやつはいそうだぞ。急にやめたから」

 加藤が言うと、

「関係ないところでやっとくか?」

と井上が言った。

「いや、あいつらが手分けして探してたらまずいだろ」

 吉村は言って、溜め息をついた。

「くそ、ついてない」

 彼らはいつも通り、今月2日の夜、花園神社付近で自転車によるあおり運転をしていた。花園神社近くのラブホテルから出て来た車がターゲットだ。

 囲んでゆっくりと走ったり、車内の2人の顔を録画して焦ったような顔を楽しみ、生卵をぶつけて横道に逃げこんで逃走に移る。

 いつもならこれで上手く行く。

 それで、動画を編集して、「不倫ですかあ」とか「お疲れ様」とかふざけたキャプションを付けてアップする。

 なのにこの日は、通行人にぶつかった。神社の裏で、スッと出て来た若い男とぶつかり、慌ててお互いの荷物をかき集めて走り去ったのだ。

 しかしその翌日から、チンピラが学校の周囲に現れるようになってしまった。

「あれかな」

 ぶつかった吉村が言い、皆、それを思い浮かべた。透明なラムネの瓶に入った、色とりどりのドロップだ。

 こちらの荷物に紛れていたのに気付いたのは、そこから離れて、フードとフェイスマスクを取った後だ。

「あれ、何だろう」

「見た目通りの飴玉ってわけじゃなさそうだし」

「まさか、麻薬?」

 全員、黙り込む。

「なめてみるとかできないし」

「誰かになめさせるとか?」

「いや、それはまずいだろ」

「警察に届けるのもなあ。どこでどうしたって言わないといけないし」

「拾った事にすれば?」

「飴玉を拾って交番に届けるか、普通」

「怪しまれるな」

 頭を抱えて、唸った。

 フードとフェイスマスクで、顔がわからないようにしていた彼らだが、ぶつかった時に自転車に貼ってある「自転車通学許可証シール」が見られていたのだ。あおりをするときは黒い紙で覆っているのだが、ぶつかって荷物を拾い集める時、至近距離だったので、めくれたのが見えたのだ。

 その事は吉村達も気が付いていた。

「校門の前に置いておくのは?」

「職員とかが捨てないか?ゴミだと思って」

 考えはまとまらなかった。

 



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る