国王なので魔王を倒した姫騎士を妃にしたいが「あたくしは異世界転生して5000兆円持ってるチート冒険者だけどアバター解除したらただの男子大学生ですわぞ」等と意味不明な発言をしているし語尾もおかしい
おいしいホットドック
プロローグ
「おお、勇敢なる姫騎士、ローゼッテよ! よくぞ魔王を倒してくれた。感謝の言葉も与えるべく褒賞も尽きることはないが、まずは祝賀会を行おう! その戦い抜いた己自身をゆっくりと休めて、心も共に癒してくれ」
私が彼女にそう告げた瞬間、待ちかねたようにファンファーレが鳴り響いた。
王宮の広間には勇者の凱旋を祝うため、数日前より楽隊が控えていたのだ。
祝賀会の準備はもちろんこれだけではない、多くの料理や美酒も取り寄せた。踊り子も奇術師も呼んである。勿論、各国の王侯貴族もおいでくださっている。
広間に振り撒かれる花びらと貴賓による拍手に包まれて、しかし勇者となった姫騎士・ローゼッテは笑顔になるどころか、呆然と立ち尽くしていた。
あまりの歓迎ぶりに驚いているのだろうか?
それとも、大義を果たし疲れが一気に押し寄せているのだろうか?
私は若干心配になり、玉座を降りるとローゼッテの傍へと歩み寄った。
「ローゼッテ? いかが致した?」
しかし彼女は私の顔を見ることもなく、焦点の合わない目でただ宙を見ていた。美しく波打つ豊かな髪に、舞い落ちる花びらが降り積もっていく。
「……どうして……」
微かな声が彼女の唇から漏れて、私は聞き逃すまいとローゼッテに顔を近づけた。
「どうして、日本に戻れないんだ? ゲームクリアしたんだから、これ、エンディングでスタッフロールが出るところだろ……?」
にほん?
げーむくりあ?
すたっふろーる?
聞き慣れない言葉の数々に、私は一瞬躊躇した。が、大切な話を伝えそびれていたことを思い出し、ローゼッテの肩に両手を置いて彼女の顔を覗き込むと、笑顔で告げた。
「さぁローゼッテ、約束だ。『そなたが魔王を倒したら、その暁には我が妃として王宮に迎える』。今こそ、誓いを果たす時。私の妻に、なってくれるね?」
しかし麗しの姫騎士は素っ頓狂な悲鳴を上げると、慌てて私から離れ、壁の隅まで後ずさった。
「いやいやいやいやいやいや無理無理無理、ごめんなさい!! あたくし……いや、俺、この『姫の姿』はアバターで、そりゃ異世界転生して5000兆円持ってるチート冒険者だけど、アバター解除したらただの大学生だから!!」
あばたー?
ちーと?
いせかいてんせい?
またしても初めて聞く言葉が多数飛び出したので、私はただ目を丸くして、真っ青な顔で慌てふためくローゼッテを見つめることしかできなかった。
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