第25話
「大変です。ゴルジョケアの都には周辺の村々から難民が集まって暴動を起こす寸前まで緊張が高まっています。このまま軍を進めて刺激すると危険です。」
都の様子を偵察してきた兵隊さんの報告を聞いてリーネオさんは少し考える。ある程度、想像はしてたのか驚いたりはしなかった。ゆっくりと口を開く。
「よし、俺とリンだけで行こう。共は
「リーネオ兄、私も一緒に行こうか? 四人だけじゃ危なくない?」
「いや、
「じゃあ、この子達なら大丈夫でしょ。
シューナちゃんが声を掛けると小さな五匹の動物たちが一斉にこっちを見た。どっかで見たことあるような・・・。
「ぴー」
その内の一匹が私の足元に来て膝をぺちぺちしながら見上げてきた。抱っこしてって事みたい。頭から背中が赤と黒の虎縞だ。口の周りとかほっぺが白い毛で覆われてる。丸くてつぶらな黒い目が可愛いね。元気そうにキラキラしてるよ。
「その子は
「じゃあ
私は彼を抱き上げると目を見つめながら自己紹介した。そしたら
「俺のところに四匹は流石に多いな。
リーネオさんの肩や背中に居た四匹のうち、青と黒の虎縞の子がディーナーさんに向かってぴょんとジャンプした。結構、遠いのに風に乗ったみたいにふわふわと飛んで行く。そのまま、ディーナーさんの背中にしがみ付いた。
「そうか、この子たち!」
リーネオさんの肩の上から私を見つめる黄色と黒の虎縞の子、
「この『
都に向かうマントゥーリ君の鞍の上でリーネオさんが教えてくれた。
都に近付くにつれ街道には農民みたいな家族連れの人たちが増えてきた。皆、荷車の上に家財道具や小さな子を乗せて、暗い顔をしてとぼとぼ歩いてる。きっとお腹が空いてるんだね。早くなんとかしなきゃ・・・。
「リン、都に着いたら何が起こっても
都に着く寸前にリーネオさんが私に念を押した。自信は無いけど今は頑張るしか無い。大丈夫、この人やディーナーさん、そして姿は見えないけどクアーエさんもきっと一緒だ。小さな「助っ人」だって五匹も居るし、マントゥーリ君も頼りになるよ。
都の門の所までやって来ると、ゴルジョケアの兵隊たちと人々が言い争っていた。どうも中に入れろ、入れないで
「どうしてだ、都には親戚が居るんだ。中に入れてくれ!」
「もう食べ物も無い。せめて子供だけでも何か食べさせてくれないか?」
「母親が体調を
「都はもう難民で一杯なんだ。これ以上は入れない。食べ物の余分も無いんだ。我々も殆ど食べてない。医者たちも中の患者を診るだけで大変で、これ以上は無理なんだ。判ってくれ!」
ゴルジョケアの兵隊たちが必死になって説明してるけど、人々は口々に
「皆さん、どうか落ち着いて下さい。落ち着いて私の話を聞いてくれませんか?」
私はマントゥーリ君から降ろして貰って、興奮してる民衆たちに話しかけた。一人一人の目を見つめながら一生懸命にお願いした。気持ちが伝わったのか、皆少しずつ落ち着きを取り戻して行った・・・。その時だった。
「ああ! こいつ、敵に寝返った【
私と目を合わせてなかった後ろの方の男の人が石を投げつけてきた。他にも木の棒とか
「きゅいーっ!」「ぴぃぃーっ!」
青い虎柄の
赤い虎柄の
「うわぁ、痛い、冷たい!」「わあぁぁっ、
声のする方を見ると、白の虎柄の
黄色の虎柄の
「あれを見ろ!」
落ち着きを取り戻した人たちの一人が道の脇に停めてあった荷車を指差した。荷車の上には荒い息をしてるお婆さんが寝かされている。汗も凄くて本当に辛そうだよ。そこに向かって淡い黄緑の虎縞の子、
「きゅ~う・・・」
荷車の上に昇って、苦しんでるお婆ちゃんの肩に手を置くと
「おお、母さん。奇跡だ、【
さっき、お母さんが大変だから医者を呼んで欲しいって訴えていた人が叫んだ。私が『
「皆、何を騒いでいる! 道を開けよ、ここを通せ!」
門の奥から、ゴルジョケアの兵隊たちを押し退けて誰かが出て来る。その人は私と顔を合わせた途端に地面にひれ伏してしまった。
「リン様、お帰りを心待ちにしておりました。どうか、あの時の無礼をお許し下さい。」
もう一度、顔を上げたその人は目に涙を一杯
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