第15話

翌日から私とティタルちゃんは毎日、港に行って軍船に乗せて貰った。最初の頃は少し怖がっていたティタルちゃんも私が付きってることもあったのか、だんだん船やミスピエル湖にれて来た。元々、好奇心が強くて活発だしね。


「わー、はやい、はやい! このおふね、はやいねー。」


船橋せんきょうでティタルちゃんが大喜びしてる。今日はなぎの時間にかいいで全速力で軍船をあやつる訓練だよ。船の上を通り抜ける風が急に強くなった。自転車でちょっと速く走ってるくらいかな? この間、リーネオさんに教えて貰ったんだけどイコォーマの軍船はかいを使ったときの速さはミスピエル湖で一番なんだって。


その秘密は何と言ってもかいぐ人たちの体格だ。この国の人たちはみんな大きい。兵隊さんたちは一番小さい人でも身長170cmくらい。つまりゴルジョケアみたいな普通の国の一番の豪傑とか言われる人と同じ位なんだよ。平均で175cm以上あるし、180cmくらいの人も結構るよ。


自動車を例にとると大きいエンジンを着けてる方が速いって単純な理由かな。でもイコォーマだけ、どうしてこんなに大きい人が多いんだろう。女の人たちも身長160cmの私が普通くらいの背丈だしね。ゴルジョケアに居た時は他の女の人と並ぶと浮きまくってたよ。あっちじゃ女性は150cmあると大きい方だったからね。


「どうしてイコォーマの人たちはみんな大きいのですか? 」


私はリーネオさんに聞いてみた。答えは即答だったよ。


「そうだな、一番の理由は子供を大切にすることだろうな。イコォーマでは赤ん坊が産まれたら国から援助をするのだ。子供専門の医者も居る。出来るだけすこやかに育つようにな。文字なども小さいうちから教える。そうやって健康で賢い民を増やせば、結局は国がさかえるからな。」


それに加えてミスピエル湖の水産物や酪農らくのうが盛んで肉や乳製品が良く手に入ること、交易が盛んだから色々な野菜が入ってくること、様々な条件が重なって子供の頃から体が大きく成るんだそうだ。頭の良い人も多いんだって。


そんな感じで日は過ぎて行き、3月15日に成った。プロージアの【戦巫女いくさみこ】ヴァイムって人の任命も、もう終わった頃だね。ここからは何時いついくさが始まってもおかしくない。周りの兵隊さんたちも表情が緊張して来たみたいに感じる・・・。



「それでは行ってくる。3月の18日までには戻ってくる。」


リーネオさんは最近、周辺の国を飛び回ってる。ソウルジェキの偉い人たちと会議をしたり、他の隣り合った国の王様に会ったり、大忙しだよ。今度はストルバクって商人の大国に行くそうだ。その国は王様は居なくて商人の代表たちと会議をするって言ってたよ。



3月も20日を過ぎた頃からイコォーマの国のアチコチで麦の取入れが始まった。リーネオさんのお話だと北のプロージアでは麦の取入れが始まるのは1週間くらい後だそうだ。でも油断は出来ないって言ってた。戦場になるのは主にミスピエル湖だから少しくらいなら早く繰り上げて戦を始めるかも知れないんだって。



3月も25日になった。何故かゴルジョケアから使者が来たんだって。リーネオさんは戦の備えで忙しいから、イーサ王が代わりに対応したそうなんだけど話にならないって追い返したって聞いたよ。何の話をしに来たんだろ・・・。


「斥候から連絡が入りました。プロージアの港で軍船が多数、出撃の準備を始めているそうです。このままでは明日の夜明けにはイコォーマの沖に達するようです。」


イコォーマ軍の伝令の人がリーネオさんに告げる。つまり開戦は3月26日ってことだね。リーネオさんが頑張ったお陰で3月27日を過ぎるまで戦は起こらない感じだったのに急に早まった気がする。嫌な予感がするな。


「リン、軍議が始まる。今すぐ付いて参れ。」


リーネオさんが私を呼びに来る。いよいよいくさが始まるんだ。

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