第10話
起きると
「おはようございます。クアーエさん、昨日の夜はお世話になりました。」
ちゃんと彼女の目を見つめて
「おう、目覚めたか。それではイコォーマに向かって出発するぞ。
リーネオさんが声を掛けて来た。私は支度をしようとベッドを降りた。ふと足を見ると
支度が終わった私とクアーエさんさんが宿屋の受付まで来るとリーネオさんと
「それでは行くか。
昨日の夜、お別れした街の出口にマントゥーリ君はもう待っていた。何か前脚で地面を
「おお、待たせたか。それでは背中の手入れをしてやろうな。」
リーネオさんはそう言うとマントゥーリ君の背中を優しくブラッシングする。彼は眼を細めて気持ちよさそうだ。私もディーナーさんが持って来てくれた
「はい、マントゥーリ君。一杯食べてね。今日も一日
私は彼の眼を見ながらリンゴを上げた。結構大きかったけど一口で食べちゃった。鼻面に
「お嬢、最後にこれを上げて下さいな。」
そう言ってディーナーさんが角砂糖を幾つかくれた。ふうん、甘い物好きなんだね。それを上げるとマントゥーリ君は高い声で
「さて、
私はリーネオさんと一緒にマントゥーリ君の
「今日は良い
そう言ってリーネオさんは街道をゆっくり進みながら色々なことを教えてくれた。麦畑、そこで働いている農家の人、行きかう隊商、その積荷のこと、ゴルジョケアに居た頃はこんな時間を過ごしたことは無かった。
「あの荷車を見よ。ミスピエル湖で
本当に色々なことを知ってるし、人々の
「今日はミスピエル湖の
ソウルジェキの都に着いた私たちは、リーネオさんの
「あの、クアーエさんは一緒に食事しないんですか? 何か申し訳ないんですけど。」
私は二人に聞いてみた。ディーナーさんが答える。
「妹は『密偵』です。人が沢山居る場所で食事をしたりして顔が
ふうん、そんなものなのか。ちょっと納得行かない気がするけど、じゃあせめて感謝の気持ちだけは忘れない様にしよう。いつも有り難うございます、クアーエさん。
翌日は朝早くから港に行った。
「良し、出港だ。ミスピエル湖は大きいぞ! 良く見ておけよ、リン。」
船が湖に出て私はびっくりした。向こう岸が全然見えない。波は穏やかだけど、まるで海だよ。対岸までは100km近くあるってリーネオさんが教えてくれた。しかも長い方では200Km以上あるそうだ。こんな大きな湖、日本じゃ見たことない! 壮観だ~♪
「湖にも風は吹く。だが海と違って吹き方が複雑だ。突然、
なるほど湖面を行き交う船を見ると
「ここで
リーネオさんはまるで自分に言い聞かせるように語った。そうか、
「ふむ、今日は風が良いな。見よ! イコォーマの港が見えて来た。」
船はお昼前にイコォーマの港に着いちゃった。ずっと追い風だったみたい。マントゥーリ君も一緒に皆で船から降りると伝令みたいな人が血相を変えてリーネオさんの
「都の教会の神殿に向かうぞ!
そう言ってリーネオさんは私を一緒に乗せたマントゥーリ君を全速力で駆けさせた。ディーナーさんも大きな
「門を開けよ! リーネオ・フォン・インゼル、
リーネオさんの声ですぐに門が開いた。中に入った私達の周りに神官たちが一杯やって来た。【
「こちらです。ささ、どうぞ!」
一番偉い神官さんが神殿の中に迎え入れてくれる。入るとそこに小さな女の子が居た。
「馬鹿な! 召喚の儀式もしていないのに、この
リーネオさんが叫ぶのを聞きながら私は思っていた。これって「内定」取消しってこと?
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