三十、リフレクトなんちゃら
あー、こちらクリア。ただいま風を感じてます。
私を枕にしてた満腹妖精が目覚めたと思ったら、すぐに抱えられてダンジョン内を飛翔中。
身体に抱えるサイズの空き瓶(中身入り)を自重にプラスして飛ぶ妖精はまさにファンタジー。
反重力機構でも積んでない限りは不可能だわ。
さて、この最新のテクノロジーが搭載された妖精ですが、行き止まりの奥底から再び浮上すると、どっかの横道を迷いもなく突き進んでいます。
ちゃんと考えて飛んでるのかな?
程よい広さの横穴がずっと続いているらしく、巨大なトンネルの壁面には光る鉱石が所々にあり、照明のように内部を照らしてくれている。
流れる風景は夜のドライブのようで。
連れられた私は心をときめかす……そんなロマンチックなわけないでしょ。
眼下には時たま彷徨くモンスターを見掛けるけど、そこまでしらみ潰しに駆逐する気はないみたい。
一匹一匹倒しても時間の無駄だろうからね。
この妖精、分かっているわ。
レベル上げの基本はまとめて範囲スキルだって事に。
なに? 廃人プレイヤーなの? 青ポーションがぶ飲みなの?
いかに青ポーションが涌いてくるとはいえ、大胆な性格してるわねぇ。
もし私が魔法を使えなくなったら、どうするつもりなんだろ。
飛んで逃げればいいのか。
空を飛べるって、絶対的なアドバンテージよね。私も鳥になりたかったわ。
空き瓶のアドバンテージってなに? お腹が減らないこと!
でも、モンスターにも飛べるのがいると思うんですけどね。
「キェ……ァ……!」
噂をすればなんとやら。
鳥……だろうか。
例によって闇をぶっかけたような形をした飛行するモンスターが現れた。
翼の形状を見るにコウモリなのかな?
いずれにしても不定形であり、気味の悪いい鳴き声を上げているのは今までの奴等と一緒だ。
「スミー!」
いや、索敵発射! みたいなニュアンスで鳴かれても。
それでも放置すれば襲われるかもしれないし、ダンジョンではモンスターは狩るものだからやりますけどね。
前面に『レンズ』を展開する。
ふむ、相手は一匹だから『ライト』でいっか。
歪んだ魔力場に光球をくぐらせて……発射!
━━キュン!
ぼさっ。命中。
そんな擬音を上げて闇のコウモリを撃ち抜くも、直撃はしなかったようだ。おしいっ。
「スミ、スミ!」
あれ? もしかして怒ってらっしゃる?
相手も飛んでるし、こっちも不安定な空中なんだから仕方ないじゃないの。
自分で狙ってもいないくせに、文句言わないで欲しいわね。もう。
「ギィ、ィイ……!」
あ、周りをぐるぐる回りだした。
こりゃあ、怒ってるわねー。
いきなり砲撃されたんだから、そりゃあ怒るか。
スミーに文句言われるのは癪だけど、仕掛けたからには最後まで戦わないといけないわね。あちらさん、見逃してはくれないようだし。
一瞬、スミーだけが狙われて、私は見逃してもらえないだろうか━━という思考が過ったが、スミーがやられたら私も移動できないし、落っこちて耐久値を減らすのも嫌だ。
なんだかんだ言って一蓮托生なのね、私達。
よーし。先制攻撃しておいてなんだけど、いっちょやってやるかぁ。
私達の周囲を乱雑な軌道で飛び回る闇のコウモリ。
鳥と違って動きが複雑だ。軌道が読めない。
一発、光球を飛ばしてみる━━避けられた。
むむむ、さっぱり捕捉できないわ。
生前、夕方に公園の空を飛び回っていたコウモリを見つけて、全く動きを捉えられなかったのを思い出す。
こちとらスポーツは得意じゃなかったしなー。
そもそも魔法って命中率とかあったっけ? ゲームでは基本必中だったと思うんだけど。
妙なとこがリアルね。そこは異世界じゃないんかいと。
これじゃ、弓職とかと同じじゃないのよ。
うーん、どうしよう。
スミーはなにか攻撃手段を持っているか━━私を前面に押し出して盾にしてるところを見ると、そんなのはないわね。ていうか、やめなさい!
ガスッ。
いて! 痛くないけど耐久値1減った!
このままじゃ無駄に耐久値を削られるだけだ。
耐久値の回復手段が無い現状、真面目に倒すことを考えなくちゃ!
一つで当たらなければ、『マルチライト』でたくさん飛ばすか……?
数打ちゃ当たるとは言うけれど、
一度使い切ってしまえば、回復するまでやられ放題になってしまう。
それに、数を出してもあの不規則軌道に当てれる気がしない。
極太の『ビーム』? 消費量が論外です。
相手が動くなら、こっちも動かしてしまうのはどうだろう。
私の属性は光。
光は形のないものである。
『レンズ』で圧縮することもできれば、
閃いたわ! 光球を飛ばしてから━━ここよっ、『ミラー』!
放たれた光線に、闇コウモリが身を翻す。
超音波を使って障害物を察知するコウモリは、一見乱雑に飛び回っているようで、木々に当たったりはしない。
だけど、避けたと思ったところで方向が変わったら、避けられるかしら?
パキン。
闇コウモリから外れた光線の先に輝く
その先には避けたつもりでいる、余裕綽々なあんちくしょう。
「ギィ、ギョエェエ!?」
光線が胴体を貫いた。
断末魔を上げる闇コウモリは、身体が霧散するようにして魔石だけが床に落下していく。
はっはっは、上手くいったわ。
直線的にしか飛ばせない光線を、『ミラー』で反射させることによって想定外の場所から攻撃することがてきた。
闇コウモリの奴は、最期まで不思議に思っていただろう。
避ける事ができた攻撃が、どうして? ってねえ。
ふふふ、これが人類の叡知よ。空き瓶に人の魂が入った意味もあるってもんですよ。
これはモンスターには理解できまい。
スミーもこれを機に、私のことを少しは敬ってみてはどうかしら?
「スミー!」
うわっ!?
急にガクンと高度が下がったと思ったら、スミーの奴……落ちた魔石を追っかけてった!
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