貼り付いた笑顔


「コラッ!待て!さとり!?ここがどこなのか答えろ」ダッ


「そんなの待つわけないでしょ!どうしても知りたいなら私を捕まえてみれば!」ダッ


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「さとりのやつ、どこに逃げやがった!?」


「ふふふふ…」


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「やっと見つけたぞ!?」


「見つかった!?逃げなきゃ!!」ダッ


「あっ! クソ 待てさとり!!」ダッ


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


何もない白い部屋が続くだけの場所。

その最奥の部屋の前でさとりは立っていた


「追い詰めたぞさとり。いい加減ここがどこだか白状してもらうからな」


「やっぱり追い詰められちゃったか…仕方ない。…お兄ちゃん…全部話してあげる。だから付いてきて?」


有無を言わさぬさとりの態度に気圧される

それでもここから出る為に俺はさとりについて行くしかなかった



--------------------


さとりが俺を招き入れたのは今までの真っ白く何もない部屋とは対照的にあたり一面が黒一色の部屋だった


「さあ…お兄ちゃん、今ならなんでも答えてあげる…聞きたいことはある?」


質問するような口調にも関わらずさとりの声はいつもと違いどこまでも重く、まるで俺が尋問されてるような気持ちになる声だった


「…質問はないの?お兄ちゃん。」

さとりのその声を聞いた瞬間、今までにないほどの不快感が俺を襲った。


声が出せない。吐き気がする。脳裏にノイズが走り、まるで身体中の皮膚下を百足が這い回ったような不快感に襲われる


嫌な予感と身体中が訴える不調を堪えて彼女の方へ顔を上げた


…そこにはの笑顔で俺の顔を覗き込んでいるさとりがいた


「あああああああぁああああぁ!!!!!」

身体が震える。あまりの恐怖に顔を上げられない。記憶の底に沈めたはずのあの言葉が、笑顔が、また蘇ってくる。



もうとうに捨て去ったはずだった…

あの家を捨てこの街に一人で暮らし始めて

死のうとしてをまこに命を救われた。

学校に通いユキに心を救われた。

雨鬼に失ったはずの感情をもらった。


もう関係のないことだと、俺は十分にやったんだと、割り切れていたはずだ。

それなのに…なんで…なんで…


さとりが…笑顔言葉が…呪い家族が…こべりついて離れないんだ…


「…やっぱり全部覚えてたんだね」


「お兄ちゃん♡」


「取り返しにきたよ。奪われたもの。失ったもの。捨てられたもの。全部全部。全部取り返して元に戻す為に。ねぇ…お兄ちゃん、今あなたが持ってるそれはなあに?」


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