純情な想い

髙木 春楡

純情な想い

 郊外の居酒屋、個室でもないオープンスペースで焼き鳥とビールを味わう。その時間は幸せだ。特に好きな人と味わうのなら他に負けない至福の時間だろう。

 好きな人と味わう時間といえば、誰にとっても幸せな時間だと思う。それが例え、自分に好意を持っていないことを知っていたとしても。

 間違いなく、僕はこの世界で一番幸せで、1番の道化師だった。

「やっぱり、お淑やかでいなくていいってとても楽だね!」

「それは、焼き鳥を串から外さずにかぶりつけることを言っているの?」

「それもだけど、会話の内容もね。正しいと思ったことだけを話すなんて退屈じゃない。もっと好き勝手に自分の失敗も話したいんだよ。」

 その気持ちは分かる。きっと気を使って生き続けるというのは辛いことだ。僕自身がそうなのだから間違いはないだろう。人の気持ちを考えながら会話するのは疲れるのだ。それに、それが正しいとも限らない。

「まぁ、そういう相手とこんな居酒屋に来るのはとても幸せかもしれないね。」

「そう、だから今とても幸せだよ!」

 僕の気持ちを知っているはずなのに、こんな風に言ってくるのだ。残酷だ。でも、その彼女は気にしないというスタンスが、僕にとっての最適解だと知っている。気にされて、気まづくなる方が辛いことだから。

「僕も幸せだよ。こんな時間を過ごせて。」

「そっかー!」

 ふふっと笑う彼女はまさに天使だ。こんな人間に惚れない人間など居ないのではないだろうかと僕は思う。

「そういえば、新しい彼氏はいいの?」

「彼氏じゃないからね。ただ、お互いに執着してるだけ。だから、いいのです!」

 それはセーフと呼べるのだろうか。執着しているということと、好きということにどれだけの差があるのだろうか。僕には分からない。好きという感情しか持ったことはないから。

「まぁ、いいならいいんだけど。僕みたいな男いつでも切っていいんだよ。」

「自信なさすぎだよ!こんだけ話してて心地いい人もいないから。ありがとね。私と仲良くしてくれて。」


 こっちの台詞だと言いそうになるが堪える。こんな僕と話してくれる彼女の方が百倍いい人だ。僕なんて、なんのとりえもない人間なのだから。そう言えば、彼女は否定してくるだろうが、彼女と比べてしまえば僕の情けなさなんて目立ってしまうものだ。

 そんなことを考えていてもせっかくの幸せな時間が、苦しくなるだけだと考えないようにしてその会を楽しんでいた。

 楽しい時間は一瞬で過ぎるものだ。

 食べ飲み放題2時間コースはあっという間に終わってしまった。食べ飲み放題なんかではなく、普通の居酒屋で食べていたらもっと長くいれたのになんて思うが、彼女の帰る時間と僕の金銭的な余裕のなさが食べ飲み放題に行き着かせたのである。だから、そんなことを考えても詮無きことだ。

 会計を済ませ、店を出た。酔ってテンションが高くなっている彼女はくるっと一回転し僕の目をしっかりと見ている。

「今日もありがとう!楽しかったよ!」

「僕こそ、とても楽しかった。」

「帰るのが寂しいなぁ。」

 こんなことをサラッと言うのだから、彼女のあざとさが伺える。

「帰らなきゃいいのに。」

 だから、仕返しだ。こんな台詞を言われても彼女がときめくことはないだろう。それでも、少しでも可能性があるのなら。

「そうもいかないからなぁ。残念。それに、

 お酒飲んで帰ったなんて知られたら怒られるから、コーヒーでも買って帰ろ。」

「そういえば、まだ未成年だったね。すっかり忘れていたよ。」

「そうですよー!後輩ちゃんですよ。だから、ちゃんと送り届けてくださいね、先輩!」

   「わかってるよ。行こうか。」

 あざとい。あざとさの塊だ。普段から好意を持っている相手にこんな風にされれば、誰でも心音が速くなるだろう。


 彼女との出会いは、約1年前。

 彼女がネットにあげていた過去の話に興味を惹かれたのがきっかけだ。

 花木はなきあおいそれが彼女の名前だ。髪の毛の長い不思議な雰囲気のあるかわいい女の子。SNSに自撮りをあげていたから、最初からかわいいのはわかっていた。それでも、僕は顔に惹かれたのではないとだけ言って置こうと思う。彼女の言葉が、存在が僕の心を撃ち抜いたのだ。

 彼女とはネットだけの関係だった。一年前はファンと主役の関係。だけど、話すうちに僕らは友だちのようになっていった。僕が望んでいたのは、違う関係だとしても関係が進展したことが嬉しかったのを覚えている。

 地元はそんなに離れていない。だが、都会で少し距離があれば自然に会うことは気づくことは叶わないだろう。半年ほど前、僕らは初めて対面することになる。

 大学一年生、入学したばかりで授業と課題に追われていた彼女と、会うタイミングを合わせるのは難しいかに思えたが、僕自身はしがないフリーターだ。時間はいくらでも作れる。

 だから、会うことになってから日程を決めるのに苦労はしなかった。でも、僕と彼女の差が辛かった。

「あ、どうも。初めまして.......ですね。花木 蒼です。」

 彼女はとても緊張していたのを覚えている。今とは全く違う姿だ。かく言う僕も緊張していた。

「どうも。柳木やなぎしゅんです。よろしくお願いしますね。」

 ぎこちない挨拶に、よそよそしい雰囲気、僕らはそれを初めて会ってから一ヶ月くらい経って頃、笑い話にしていた。

「あの時は、本当に緊張していたんですから!」

「僕も緊張しすぎてました。でも、その後も 緊張しすぎたのは、碧さんがカッコイイなんて言い出すからですよ。」

「いや、初めて会った相手に言っちゃうんですよ!でも、思ってないと言いませんよ?」

 僕はそこまで、自分の顔に自信が持てるほどカッコよくはない。普通くらいだと自称してる。それに、モテたこともほぼないがある程度の人と付き合っているのだから、普通くらいだろう。

「それは、安心しましたよ。」

 明らかな棒読みで返してやる。

「それこそ、それに負けじとかわいいって言ってきたのも、忘れてませんからね!」

 まぁ、事実会った時の二人は緊張してたのもあるが、ことある事に褒め合うという謎の状態に陥っていた。

 それは周りから見れば、とても面白い状況だっただろう。今となっては笑い話だ。

 そして、それからまた時が進むと僕らの敬語はなくなった。自然体で話すようになり、お互いの身の回りの出来事を相談するようになる。

 前から知っていた事ではあるが、ここで改めて彼女の恋愛遍歴を聞かされることになるのだ。

 敬語がなくなる頃には恋に落ちていた。

 憧れは、好きに変わり恋に変わり愛になっていたのかもしれない。

 彼女は、僕以外の男性と付き合っている。そして、付き合っていなくとも僕以外の男性と依存し合うような関係を築いていた。

『寂しさに弱いんだ。』

 彼女のその呟きに何度、僕も傍に居るよと声をかけたかは分からない。それでも、僕達の関係は進展しなかった。いや、させなかったのかもしれない。何度か、身体の関係を持ちそうになったこともある。それでも、僕は手を出さなかった。出させなかった。

 僕も僕で、怖がっていたのだ。きちんとフラれることもこの関係を崩すことも。

 軽く想いを伝えることはあれど、深く想いを伝えない。僕らはお互いにこの落ち着いた関係を壊すことが出来ない弱虫だった。


 そんな弱虫達は、今夏を過ごそうとしている。

 僕は、夏を楽しめているかと言われれば、絶対にNOと答えるだろう。僕は夏が嫌いだ。暑くて汗だくになるし、みんな浮き足立ってテンションが高いし、恋が多くなる季節だから。

 そう、ひと夏のアバンチュールなんて言うが、真剣に恋をしている側は、それに振り回されるのだ。ひと夏で終わるような恋に巻き込まないでくれと何度思ったことだろうか。

 とはいえ、これは自分の性格とか見た目とかの原因を考えなかった場合の話だ。恋したが付き合ってみて駄目だと思われた可能性だってある。そんなことを言ったところでなんの意味もない。ひと夏のアバンチュール。僕は、変わらぬ恋をしている。

 そう、僕の夏はまだ楽しめてはいない。

 だけど、夏祭りに行く予定が出来たことで、僕の夏は少し期待が持てるようになった。

 夏祭り自体は嫌いだ。人混みに酔ってしまいそうだし、歩きづらいし暑い。でも、浴衣を着た好きな人が見れたり、少し高いが何故か美味しい屋台の料理にビールを楽しめるところは評価すべきだと思う。

 そんな夏祭りに蒼と行ける。

 幸せと表現するしかないだろう。

 もしかしたら、他の男に断られただけかもしれない。それでも、一緒に夏を楽しむことが出来るのだ。他のことを考えてては、勿体ない。

 祭り当日、甚平を持ってるわけでもなく浴衣を着るわけでもない僕は、ジーパンに半袖のシャツというシンプルな格好で祭りへと向かった。夕方近く、まだ日は落ちる気配を見せていない。混んだ電車は夏祭りの様相だ。

 祭り会場の最寄り駅は、更に夏祭りの様相を呈していく。これだけで僕は祭りに来たという満足感に浸っていたのだが、待ち合わせ時間の午後六時、彼女の姿を見て心がざわめいた。

 もちろん、悪いざわめきではない。浴衣姿の彼女に見惚れてしまったからだ。

「今日は浴衣なんだ。」

「せっかくのお祭りで花火大会なんだから、浴衣着ないと損だからね!」

 僕にとってその選択は正しいものだと胸を張って言いたいところだ。

「似合ってるよ。とても。」

「ありがと!」

 僕らは、そのまま祭り会場へと足を運んだ。

 人混みの中、彼女が離れていかないように定期的に彼女を確認する。若干歩きにくそうな彼女と、緊張して早歩きになりそうな僕。

 手を繋げば離れない中、僕はその手を握れないでいた。

 行き交う人の笑い声に、屋台から溢れる煙、屋台の匂いに混じって僕の鼻腔を擽る彼女の匂いは、人工的な香りではなく自然な香りだ。僕の心は落ち着かずそわそわしてしまう。屋台の香りなんて僕の鼻には届かない。彼女の蠱惑的な香りばかりが入ってくる。

「人多いね!」

 いつもより少し大きな声で彼女は話す。

「そうだね。屋台で何か買って移動しようか。」

 僕が人混みが得意ではないのと、はぐれてしまいそうな不安もありそう提案した。

「それもいいかもね。土手とかなら少しは空いているかもしれないしね!」

 各々歩いていく中で、気になったものを買っていく。ソースがふんだんに使われたイカ焼きに焼そば、チョコバナナやりんご飴、そして直ぐにぬるくなってしまうビール。僕らの両手はすぐにふさがってしまった。

「買ったなあ!祭りでたくさん買うのってなんか憧れだったんだよね!」

「確かに子どもの頃にはできない事だもんね。」

 僕よりたくさんの袋を手にしている彼女の純粋な笑顔が眩しい。

 そんな顔を横見に見ながら、僕らは土手へとやってきた。人は少ないわけではない。それでも、歩いている人は多くなかった。皆、花火の場所取りをしているのか座っている。

 そんな中、僕らは空いていた階段へ座った。

「なんだかんだ、歩いてたけどそんなに時間経ってないんだね。」

「確かに、もっと時間が経ってそうな疲れ具合だよ。人混みって大変だ。」

 陽が落ちかけている空、花火の時間にはもう少し時間がある。ゆっくりとこの陽が落ちていくのを眺めながら食べていれば、いい時間になるだろう。

「そういえば、今日は良かったの?」

「何が?」

「僕が相手で。他の人とか。」

「あぁ、まぁね。いいんだよ!」

 そうとだけ言って彼女はそれ以上話さなかった。気になる内容ではあるが、それ以上聞くような無粋なまねはしない。

「花火見るのは久しぶりだな。」

   話を変えるために他のことを話してみる。

「一年ぶりってこと?」

「いや、数年ぶりって感じじゃないかな。去年は見に来なかったし、一人だと見に来ようと思わないからね。」

「そうなんだ。去年は来たなあ。」

「そっか。」

 きっとその相手は男の人なんだろう。彼女顔を見ればわかる。少し悲しそうで、懐かしむようなそんな感じ。

「まぁ、今年も楽しめるからいいの!」

「そうだね。凄く楽しみだ。」

 袋の中身が減っていく様子に、だんだん暗くなっていく空が、僕の気持ちを表しているようだった。

 そして、陽は落ち花火の時間がやってくる。

 遠くから聴こえるアナウンスに音楽、それが花火開始の合図になった。

 空に打ち上がる花火達、儚げに咲いては散り咲いては散っていく。花火の光に照らされた彼女の美しい顔。何を考えているのだろうか。

 僕は、花火に集中出来なかった。

 彼女が気になり、彼女を眺めていたくて、心が爆発してしまいそうになる。

 僕の心も僕の行動も、この花火のように咲き誇れるだろうか。

 だから僕は、この花火を見ながら決意する。僕の想いを今日伝えるんだ。この花火のようになる為に。

 最後の花火のラッシュが起きる。最後だと知らしめるためか、儚さなんて微塵も感じさせない派手な花火達。僕にとっては開戦を知らせるほら貝のように鳴り響く激しい音だ。

「終わったね!綺麗だった。」

「そうだね。本当に綺麗だった。」

 綺麗だと思っているものの違いはあれど、

 僕達の想いが重なった。

「終わったし帰ろうか。早く帰らないと怒られちゃうからね。」

「そうだね。」

 暗闇の中、立ち上がって帰っていく人達の様子が見える。祭りの終わりの電車は混むから皆が急ぐ気持ちも分かる。

 もちろん、彼女も立ち上がろうとする。僕はそれを止めるつもりだった。でも、やはり手が伸びない。彼女の手はどこまでも遠いのだ。

 それでも、僕は覚悟を決めなければならない。僕の想い、あの光景ほど美しいかは分からない。それでも、純粋な想いは美しいはずだ。

「あのさ!」

 立ち上がった彼女を、歩きだそうとする彼女を過去に出したことのない大きい声で呼び止める。

「どうしたの?」

「話があるんだ。」

 不思議そうに僕を見つめる。なんの疑いも持たない目。きっと僕から想いを伝えられるなんて思っていない目だ。

「いきなりなに?」

 僕の心臓の音が彼女に伝わってしまうのではないだろうか。花火より大きい音が僕の中では鳴り響いている。

 雑踏の中、か細い僕の声は消えてしまうかもしれない。それでも、僕は僕の声で作らない想いを伝えたいと思った。

「この花火に来てくれてありがとう。それを、伝えたかったんだ。」

「こっちこそ、ありがとうだよ。」

「それだけじゃなくて.......色々伝えたいことが増えてて。何から言っていいのかわからないんだ。それでも、聞いて欲しい。」

「うん。聞くよ。」

 真っ直ぐと僕を見つめる彼女の目は穢れを知らないような美しさを秘めているように見える。

 様々な経験をしていても穢れないその瞳。

 僕はその瞳も好きだ。

「僕はやっぱり、君が好きなんだ。」

 顔を見ることは出来ない。反応を見ることは怖い。だから、僕は言葉を繋げることだけに必死になっていく。

「きっと、僕の想いなんて些細なものだ。君が誰かを好きで、誰かに執着してて、僕以外の誰かを求めている。それでもいい。それでもいいから、僕の想いを君に伝えなきゃと思ったんだ。」

 花火の綺麗さ、それを眺める君の美しさ、そして逃げ回る僕の汚さ。僕も、君に近づきたかった。君の純粋で汚れている人間らしさに近づきたかった。

「僕は君の人間らしいところが好きなんだ。誰かがいないと生きてけなくて、愛されると思うことで生きていけて、でも、人と近づくことが怖いと思うそんな人間くさい君が大好きなんだ。」

 そうだ。彼女は美しい。でも、どこか人間くさい。誰よりも人間という存在であって、誰よりも人間を怖がっている。そんな彼女が好きなのだ。

「何もかもを愛してると言ってもいいかもしれない。君の全てを受け入れたいんだ。誰かの元へ行く君を僕は寂しく思う。それを許容するだけの心の大きさが僕にはない。それでも、それでも、君を受け入れたいと思えるほどに、僕は君が好きなんだ。」

 何もかも伝えてしまえ。僕の想いを勢いに任せて全て言葉に出してしまえ。

「僕は、君が僕のものになればいいのにって何度も思ってきた。僕を好きになれば悲しませないのにって。僕なら僕なりの精一杯で君を幸せにするのにって。でも、それは僕のエゴなのかもしれない。だけど、僕は君を幸せにしたいんだ。僕の手で幸せにしたいんだ。僕は君が.......君が大好きなんだ!!!」

 僕の想いよ届け。

 誰よりも純粋だと信じてやまない僕の想い。それが、君に届いてくれたらと。

「いきなり、ごめん。でも、伝えたかったんだ。答えは求めてないなんて言えないけど、じっくり時間をかけてもいいから、聞かせてほしい。今までの関係を続けててもいいから。君のことを、花木 蒼のことをここまで好きな人がいるんだって知ってほしいんだ。」

 全て伝えきった。僕の想いを僕の自分勝手な想いを、自分勝手に相手の気持ちも考えずに。それでいいと僕が思ったから。

「本当に.......いきなりだね.......こんなタイミングで、こんな光景に見せられた後にそんなことを言うなんて、峻くんはずるいね。」

「ごめん。」

「でも、ありがとう。」

 この感じは駄目だったのかもしれない。それでも、後悔はない。何も伝えずに逃げ回るくらいなら立ち向かった方がきっとよかったのだ。

 僕はそう言い聞かせる。

「答えはそう簡単に出ないよ。私は、ずっとこの生き方を続けてきたから。それでも、それでも、嬉しいと思えたよ。君の言葉だから。」

「え.......?」

 言葉の意味が理解出来なかったわけではない。それでも、彼女の言った言葉が希望に溢れる言葉だったから、僕は理解出来ない風になってしまった。

「まぁ、有名になったら考えてあげる!私は一般人にはもったいないでしょ?」

 彼女の顔は暗く見えにくい。それでも、なんとなく濡れた顔で笑ったのがわかった。

「僕が有名にか。なれるかな。」

「さあ、どうでしょう。」

 僕らの物語は動き始める。花火のように散るだけでなく、また次の年咲き誇れるように動き出すのだ。


「これ、やっといて。」

「はい、わかりました。」

 上司に顎で使われる生活。それでも、充実はしていた。

 僕は、有名にはなれなかった。だから、彼女の言葉は叶わなかったと言っていいだろう。僕は僕なりの精一杯を生きている。

 それでも、僕は幸せだ。あの頃から変わったこと。それは、自分の想いから逃げなくなったことだろう。自分の想いと向き合って、誠実に生きている。

 まぁ、凡人の僕が有名な人になれるわけもなかったのだ。彼女とは違う人間なのだから。

 だから、今日も家に帰る。家族の待つ家へ。

「ただいま。」

「おかえり〜、疲れたでしょ。ご飯は出来てるよ!」

 有名にはなれなかったかもしれない。それでも、僕は手にしたかったものを手に入れることが出来た。暖かい家庭と君。

「今日もありがとう。蒼。」

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純情な想い 髙木 春楡 @Tharunire

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