第6章 色恋沙汰編

01.カルディアとのデート 前編

 翌日。いつものようにカルディアに起こされ、のそのそ支度して食堂でぼーっとコーヒーを飲む。

 みんなが起きてきて、同じテーブルについた。


 今後どうしようかという話を始める。

 ダンジョンの41階に挑むか、ランクをあげるか。


「ダンジョンは、急ぐ必要無いと俺はおもうんだけど、みんなどうかな。まずランクを上げて上位ランクの依頼を受けないか?」


 皆、どっちでもいいよという顔をしている。


「じゃあ、ランクを上げるでいいな。今日からランク上げのために依頼をバンバンこなそう」


 マークが手をあげる。めずらしい。


「はい、マーク」


「申し訳ないんだが、2日ほど休んでもいいか?」


「お、どうした?休みは全然いいけど」


「ちょっと個人的なことなんだ。申し訳ない」


「わかった。じゃあ、今週は休みにしよう。最近ずっと休み取ってなかったしな。資金も問題ない。一息つこう」


 皆、了承する。


「じゃぁ、今日からお休みだ。解散」


 マークとエリサは部屋に戻っていった。




 カルディアは、席に残ってる。


「よし、タケシ。せっかくの長めの休暇だ。修行しよう。この前私が修行した次元に連れてってやる」


「聞いてなかったのか?休むんだって。修行とかダンジョンとかで、休みとってなかったろ?だから、長めに休み取ろうって話したでしょーが。なんで修行しようとしてんだよ」


「私はいつも休みの日、修行しているぞ」


「確かにお前いつも修行したりなんか作ってるけど」


「だろ?じゃあ、修行しよう」


「まてまて、だろじゃなくて。今回は、修行とか製作依頼とかやらないで、のんびりしよう」


「別にいいが、なにするんだ?」


「そ、そうだな」


 どうしよう。一緒になにかする流れになったぞ。

 ちょっとドキドキする。



「・・・街をぶらぶら歩いたり、公園でぼーっとしたり」


 なんとなく夢でみたカルディアとのデートが思い浮かんだ。


「それ楽しいのか?」


「た、楽しいかどうは人それぞれだが、俺は楽しいかな」


「ならいいぞ。今から行くか?」


「え、いいの!?ちょ、まって、雰囲気が大切なんだって。街を歩く服装だから防具とかいらないし、あと、待ち合わせとかしよう」


「待ち合わせ?ここで待ち合わせじゃないのか?」


「いや、中央地区の噴水の前に、10時に待ち合わせにしよう」


「なんでわざわざ、別の場所なんだ」


 面倒そうなカルディアを強引に説得して部屋に送り出す。一人テーブルに残り、コーヒーを一気に飲む。

 これ、デートだよな?これはもうデートだ。

 うっきうきで、部屋に戻る。そうだ、風呂入ろう。ヒゲもしっかり剃って。

 身だしなみ揃えて、比較的くたびれてない服装に着替えて。もちろん下着も俺が持ってるやつの一番新鮮なのにした。 






 そして、待ち合わせ場所に到着。

 まだ30分もある・・・だいぶ早くついてしまった。

 やっべ、めっちゃ緊張してきた。別のことを考えよう。



 ここからは、王都中層への門がよく見える。


 噴水に腰掛けて、ぼーっと門を見る。

 ん?あれはマークかな。門の方に向かっていった。

 そういえば、あいつどうしたんだろ。聞けばよかったかな。

 まぁ、個人的なことって言ってたし、深く聞かない方がいいんだろうな。

 なんかあれば、相談してくるだろうし。

 

 また、ぼーっとする。

 忙しなく人が行き来する。結構人多いな。さすが王都の中央地区。

 今日もいい天気だ。空の雲を見ながら、なんの形に見えるかを考え始めた時、声をかけられた。

 


「お、おい。タケシ。待たせてすまん」


 カルディアの声が聞こえて振り向くと、すごく可愛らしい女神の方がいらっしゃいました。

 え、ど、どしたの?どうしちゃったの?そんな可愛い服もってなかったでしょ?

 あれ、お化粧してない?うっすらお化粧してない?髪にも編み込みはいってるし・・・。

 うわ、直視できない。この子に、何がおこったの。


「お、おい。ジロジロ見ないでくれ。恥ずかしいから」


 女神様が照れておられる。ありがてぇありがてぇ。拝みそうになった。いや、拝み始めてる。


「あの、そ、そのお姿は」


「こ、これは、エリサがやってくれたんだ。タケシと出かけるって言いに行ったら、いろいろ聞かれて・・・それで・・・服とか貸してくれたんだ」


 エリサ。今までごめん。お前は素晴らしいやつだ。お前は病んでなんかいない。あの黒いのは、誰がなんと言おうとルーさんだよ。

 あとで、なんかお礼しないと。なんか、黒いもの買ってけば喜ぶかな。


「化粧だって戦闘化粧ぐらいしかしたことなかったし、今まで髪とかもそのままだったから、急にやると変だよな」


「す、すごい可愛いです。全部いい、全部すっごくいい。その服もすごく似合ってる。髪型も、お化粧も全部がすばらしい。素晴らしいよカルディア」


「あ、ありがとう。あんまり変なこと言わないでくれ。恥ずかしいから」


 恥かしがってる。ここまで恥かしがってるカルディア初めて見た。





 とりあえず、市場に向けて歩き始める。

 チロさんの唐揚げ専門店がプレオープンしてるので、そこに行く予定だ。

 

 結構人通りが多く、さらにすれ違う人がカルディアを見てるのがわかる。

 こんな可愛ければ、誰でも見ちゃうよな。


 あれ、カルディアが静かだ。そうか、恥ずかしいのか。


「カルディア大丈夫か?」


「そ、その、人に見られるの慣れてなくて」


 気が付いてないだろうけど、お前いつもギルドで大声出して注目集めてるからな。今更だぞ。

 そういえば、こいつ知らない人が苦手なんだった。


「俺の後ろに隠れながら歩くか?あと道の端っこ歩こう」


 カルディアが小さく頷いて、俺の後ろを下向きながら歩きはじめた。

 なにその動き、そんな動きもカルディアさんできるんですか!!動きが可愛い。


 しかし、可哀想なことをしちゃったな。これは2回目のデートはできなそうだな。


 


 しばらく歩いていると、俺の服の裾が引っ張られ始めた。


 こ、これは・・・全身に緊張がはしる。俺は全神経を服の裾に集中する。

 間違いない。裾を持たれている。デート系鉄板ネタじゃないっすか!!!


 待てよ。これは、手を繋いだ方がいいかもしれない。

 きっとカルディアは、はぐれないように裾を持ったんだし。

 それの進化系は、手を繋ぐことだと思うんだ。

 市場は人がごった返している。そこでは裾だけでは心もとないよな常識的に。

 結論、手を繋ぐべきだ。 



 頑張れ俺。

 勇気を振り絞って、言うんだ!俺。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る