08.Cランク

 流石に、明日は討伐依頼なので、何も考えず寝た。

 酒が入っていたためか、すぐに眠れた。



 夢をみた。

 カルディアと駅で待ち合わせをして商店街を歩いたり、公園にいく夢だった。

 向こうの世界の服をきたカルディアが恥ずかしそうにしていて、天使だった・・・。

 俺が勇気をだしてカルディアの手を握ろうとするところで


「おきろー。朝だぞー」


 現実のカルディアに起こされる。


「夢か・・・。おはよう」

 

 夢ぐらい、もうちょっと頑張れよ俺。

 しかし、この世界に来て初めて元の世界の夢を見た。

 あの日記の所為かもしれない。



 もそもそ俺が支度を始めると、カルディアは、いつものように風呂に走っていった。

 

 食堂に移動してのんびりとコーヒーと朝食を食べていると、マークが起きて来た。

 しばらくして、カルディアとエリサもきた。



 さて、今日はCランクに昇格するための討伐依頼をこなす日だ。


「知ってるだろうけど、アディさんはご家庭の都合でしばらく不参加です。なんかあったら指輪で連絡してだそうです。事務連絡は以上です」


 皆、了承する。


「あと、昨日言い忘れたが、お前らが逃げたのアディさん気が付いてるからな」


 皆、目をそらす。


 当たり前だろ急にフェードアウトしたら。

 まぁいいや。じゃ行くか。ということで、ギルドに向かう。


 


 

 ギルドの受付のお姉さんのとこ行って、Cランクの実技試験として、昨日目星をつけたオーク亜種とオーガの討伐依頼を受ける手続きをした。

 場所は、王都の近くにある西の森だ。とりあえず、さっさと出発だ。



 王都の門を出て、西の森を目指して草原を歩く。

 今日も良い天気だ。王都付近では、駆け出しの冒険者がゴブリンやグラスウルフと戦っている。

 俺もこんな時期があったなあぁ。最初の頃は、ぼっちだったけどな。


 急にマークがグラスウルフの群と戦っている冒険者パーティの元に走って行った。

 劣勢っぽいな。マークは周りよく見てるなぁ。

 俺も付いて行って怪我したやつを治療しておいた。助けた冒険者パーティに激しく感謝されて、ちょっと良い気分。

 


 そして、森の前についた。

 俺らは40階層のオーガを倒せるぐらいの実力があるので、正直適正レベル外のターゲットなのだが、侮ることなく挑まなくては。

 調子に乗ってる時こそ足元がお留守になるパターンだからな。


 カルディアが「森といったら私だろう」とか言い出して、先頭を歩き出した。

 まぁ、エルフだしな。鼻歌歌ってる。すげー楽しそうだな。

 

 しばらくカルディアのよくわからない鼻歌を聞きながら森の中を進むと、オークの群れを見つけた。

 亜種も何体かいる。オーク亜種は体が赤いく大きい。そして、普通のオークもいる。


「あの赤いのでかいな」


「でかいが、そこまで強くないから落ち着いていくんだぞ、タケシ」


「ああ。大丈夫だ。数が多いから乱戦になると面倒だ。俺とカルディアとエリサで魔法でやろう。マークは漏れたのを頼む」


「あとエリサ、燃え移らないように注意しろよ」


「大丈夫。闇魔法でやるわ」


 そうだ、闇魔法使えるようになってたんだった。


「じゃ、いくぞ」


 俺は、修行の時にカルディアから教えてもらった光の矢を放つ。カルディアみたいに連写はできないが。

 カルディアも、光の矢を複数放つ。エリサは、闇の球を複数放つ。

 光線と黒い球が飛び交いあっという間に、オークの群れを殲滅した。

 マークの出番はなかった・・・。


 オーク亜種の魔石と討伐部位を回収して、亡骸はエリサが闇沼に沈めた。えぐいな、闇沼。


 おし。これで一つ目が完了だ。

 次は、オーガだ。

 オーガはこの森のもっと奥の山に近い部分にいるらしい。



 カルディアが、また先頭に立って鼻歌歌いながら歩き始めた。


 途中で、カルディアが急に止まった。


「ど、どした!?」


 木の実を見つけて取り出したので止めた。今はそういうの大丈夫だから、とりあえず依頼を優先しよう。

 つまらなそうに、手に持った木の実をかじってる。


 森の奥に進につれて、魔素が濃くなってくるのがわかる。

 すごく調子がいい。今なら魔法連写できるかもしれない。次も、複数いたら魔法で殲滅だな。


 しばらく歩いていると、また、急に止まった。

 もうほんとにそういうの良いから・・・。


「今度はなに」


「おい、タケシ、この花みろ!すごい珍しい花なんだぞ。すごい薬の材料の一つなんだぞ」


 そう言いながら、カルディアはその花を採取していた。

 ほう。見た感じどこにでも生えてそうな花なんだがな。言われてみれば、それっぽい風格があるようないような・・・。


 その後もカルディアは、いろんな花とか草を採取していった。勉強になるから良しとしよう。

 

「こ、この実は!!」


「ど、どした!レアか!レアの実なのか!?」


「いや!すごいうまい実だ!」



「もういい加減、オーガを狩りにいこうぜ」


「む?じゃあ、タケシはいらないようだな。エリサ食べよう」


「ほんとだこれ美味しい」


「だろう、マークも食べろ」


「お、うまいな。これ」



 みんなで美味しそうに実を食べてる。

 く、くそ・・・


「ごめんなさい、食べたいです。俺にもください。お願いします」



「しょうがないやつだな、ほれ」


「あ、うっま。なにこれめっちゃ甘くてうま」

 

 気がつけば2個目に俺は手をつけていた。


「あ、タケシあんまり食いすぎるな」


「先、言えよ!なんだ、これ毒でもあるのか!?やべ、解毒の魔法かけないと」


 急いで解毒の魔法をかける。魔素が豊富なので思いっきり強めにかけといた。


「いや、毒は無い」


「無いんかい」


「果物を急に一杯食べると体冷えるからお腹壊すだろ」


 お母さんかお前は・・・。




 その後は、何事もなく進み、オーガの気配をカルディアが見つけた。

 ちょうど、1体しかいなかったので、今回はマークが行くことになった。

 近づいて一振りで片付いた。

 まぁ、強さ的には30階層までに出てくるオーガの低級のやつだろうしな。


 はい、これで依頼終了。

 そそくさと、ギルドに戻る。




 ギルドに戻ると、行きに助けたパーティにあった。

 助けた盾役の女の子のマークを見る目が、ハートだ。俺もあなたを回復したけど。


「先ほどはありがとうございました。純白のコップのみなさん」


 リーダっぽい男がお礼を言って来た。


「あ、気にしなくていいよ。たまたま通りかかっただけですし。無事でよかったです」


「あそこでマークさんが来てくださらなかったら、本当に危なかったです。タケシさんもありがとうございました」


「危なかったら逃げるのも大切だからな。命あっての冒険者だ」


 マークがアドバイスしている。

 当たり前のことをいってるだけだが、いちいちかっこいいんだよな。

 盾役以外の女の子も目がハートだ。さっきのリーダも感動した顔だ。

 お、おい、言ってることは普通のことだぞ?大丈夫かお前ら。


 そのうちマークに、女性たちが質問し始めた。マークは真摯に受け答えしている。


 カルディアは、リーダーの男を捕まえて、独自の冒険者論を語りだしている。

 ちょっと迷惑そうだったが、面倒だったので放置した。


 自由だな。


 あれ、そういえば、うちの病み属性が静かだな。どこいった?

 カウンターでコーヒー飲んでるだと!?ど、どした。あいつ。

 最近、意識してなかったけどマークに対する執着的な物を感じない気がする。



「な、なぁ、エリサ。最近どうした」


「急になに?別に普通よ」


「その、マークが今女の子に囲まれてるじゃないですか」


「あぁ、そうね。いつものことよ?」


「そ、そうですけど・・・」


 エリサは、カウンターにいる黒い何かと遊んでる。

 たまに、肩にのってたり、突っついて遊んでるところを目撃してたけど・・・。

 なにそれ・・・あれ、動いてる・・・え、生きてない、それ?


「あの、その黒いのは・・・」


「あぁ、この子?ルーさん」


 その後は、沈黙。続きはなし。


「そ、そうですか・・・。あ、そうだ。俺、ちょっとカルディア止めてくるわ。リーダーさん迷惑そうだし」


 大丈夫何も問題ない。大丈夫。大丈夫。俺はそれ以上考えることをやめた。

 そして、持論を一方的に語ってるカルディアを強引に止めて、依頼達成報告に行った。



 報告後、無事Cランクになった。

 次はBランクを目指して、どんどん依頼をこなそう。

 討伐系をメインに進めればすぐに上がるはずだ。お姉さんもそう言ってるし。


 よし、今日はお祝いだ!みんなで飲みに行った。アディさんは忙しいらしく合流できなかった。

 二次会は、アディオさんとこのラーメンを食べて、チロさんとこでソース唐揚げを買って宿に戻った。

 そして、風呂上がりにエールと唐揚げで乾杯して三次会をやって、その日は解散になった。



 あ、やべー、ご褒美考えんのまた忘れちまった。

 急がねーと、カルディアのことだから、忘れちゃいそうだしな。

 あ、でも、日記も読まねーとな。交換条件だし。

 ”帰りたい” の文字がページ下部を埋め尽くしてるの見てから、若干読むのが怖いんだよな・・・。

 次のページに、どんな事が書いてあるか怖くて・・・。

 



 まぁ、いいや。今日は結構飲んだから、明日から頑張ろう。

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