03.やっと俺のターン

 お、再開そうそうドンパチ始まる展開か?


「あら、あなた随分、古い血を引いてるエルフね、匂いでわかるわ。私別に人間に敵対してないわよ、悪魔と関わりもないし。どうしてもやりたいなら、お相手するけど」


 古い血?悪魔だと?なんの話だろうか。あとで、聞いてみよう。


「わ、私はちゃんと湯浴びしてるぞ。タケシどうなんだ?」


「あぁ、この魔族の娘さんは、アディさんって言うんだけど、別に悪さしてるわけじゃないよ。むしろ、元人間のリッチーが呼び寄せようとして部屋をめちゃくちゃにされちゃったから被害者だ。そのあとは、まぁ、いろいろあって、こっちに遊びに来てる感じ。あと、べつに匂わないから、汗臭いとかいう話じゃないから」


「そうだったのか。これは失礼した、里にいたころはよく魔族と戦っていたから過敏に反応してしまった。すまない。でも、何してるんだ?こんな魔素の薄いところで、下手したら死ぬぞ」


 え、魔族って、魔素薄いと死ぬの?!

 死という言葉に、マークもエリサも驚いている。


「べつに、良いじゃない何してたって。この子達がかわいいから一緒に冒険者やってんのよ。魔素は大丈夫よ、私そんな低級な魔族じゃないし」


 え、アディさんどんなランクの魔族なの?少なくとも、空間捻じ曲げて登場できるぐらいだから、相当の実力者なはず。


「なに?冒険者だと?!ん、タケシお前冒険者なのか!?」


「あぁ。冒険者になったんだよ俺。今ランクはD。そこのカウンターで、登録すれば・・・その、すぐなれるぞ。誰でも」


「え、すぐなれる・・・だと・・・」


 すごいショックを受ける、カルディア。

 そうそう、こいつはたぶん絵本かなんかでみた知識に影響され、冒険者になるために相当高いレベルの実力が必要と、勝手に思い込んで数十年修行してしまった娘だった。

 武者修行してて、気がつかなかったのか・・・。なに?人がいないところばっかりいってただと・・・人見知りすぎだろ。


 マークとエリサが、きょとんとしてるので、とりあえずカルディアは俺の知り合いで、魔法の師匠でもあることを伝えた。


 そして、カルディアを受付に連れてって冒険者登録する。

 エルフの魔法が使え、弓もひける、あと一応剣士だったので、速攻許可がおりた。俺の時みたいな適正試験はなかった。


 受付の人が、王都のギルドにエルフの方が登録されるのは初めてかもしれません。なんて言っている。

 だめもとで、アディさんの登録もお願いした。

 同じ様に、魔族の方が登録されるなんてこの国始まって以来、初めてかもしれませんて言ってる。

 使い魔的な設定だけど、冒険者登録できた。結構なんでもありだな。


 すごい受付が賑やかになってたため、お偉いさんが出て来て静かにしなさいと注意している。

 事情をきいた偉い人が「え、それはすごくない?握手してください」と二人に握手を求めていた。

 


 ある程度収まってから、カルディアにこのパーティのことを話す。

 カルディアが私もやりたいと言うので、純白のコップに入ることになった。

 アディさんも、使い魔からメンバーとして登録し直した。


 登録が終わったので、今後の役割とかを自己紹介もかねて話すことになった。


「カルディアだ!前衛は任せてくれ。この剣で最強の冒険者に私はなる!」


 それ、ショートソードな。あんまり見せびらかすものじゃないから。しまっとけって。あと、すごい恥ずかしいことを大声で言いやがって。

 周りの他の冒険者が、生暖かい視線で見守ってる。


「えーと、タケシです、剣士です。前衛を担当してます。一応魔法も使えるので、後衛でもいけます。あと、カルディアは、剣も弓も魔法もできますので前衛でも後衛もできます」


「俺は、マーク。戦士で、前衛で敵を惹きつける役を担当してる」


「エリサ、後衛で魔術担当。火属性の魔術が得意よ」


「アディよ。戦闘全般得意よ。あ、そうだ、エリサにも私の力を分けてあげるわ。だから、闇属性の魔法とかスキルが使えるようになるはずよ。タケシ君は、なにかわからないんだけど加護がついてるみたいだから、無理なのごめんね」


 アディさんが、エリサに指輪を瞬時に作って渡す、エリサが「ありがとうアディ」とかいいながら、アディさんに抱きついて、もたれかかってる。

 けしからん、もっとやれ。


「アディさん、ありがとうございます。俺、加護あるんですね・・・なんだろ」



 カルディアとアディが相当強いから、一気にうちのパーティの火力が上がるなぁ。

 俺とマークとカルディアで前衛をやって、後衛をエリサとアディに担当してもらうことにした。

 しかし、アディさんの加護みたいのいいなぁ。俺の加護ってなんだろう。あぁ、あの岩の水の精霊さんか?

 カルディアに聞いたが、俺の加護のことは、わからないそうだ。


 まてよ、これはテンプレ的なやつでいうところのピンチの時にわかる系の加護かもしれない。そして、俺TUEEE展開かもしれん。楽しみすぎる。


 俺が妄想を膨らましているうちに、明日筆記試験後にカルディアとアディのランク上げの依頼をすることにして、今日は解散になった。




 エリサが邪魔しちゃ悪いわよとかいいなが、3人で帰って行った。あいつなりに気を利かせてくれた様だ。

 俺はカルディアをつれて街を案内することにした。街を案内しながら、激戦区に向かう。そして、味噌ラーメンを食わす。


「う、うまい!なにこれうまい、ずっとうまい、ずっと食べれるぞ!」


 急に絶叫して、常連をビビらせてたいた。

 替え玉もお願いしていた。口の周りがすごいことになっているから拭け。


 チロさんたちにカルディアを紹介した。お土産にって、デンジャーチキンのソース唐揚げをもらう。

 今度、市場付近でソース唐揚げの露店を出すそうだ。絶対行かなくては。




 一通り俺が知ってるエリアを回った。

 この前お世話になった教会とか、市場とか。


 夕暮れになったので、俺が使ってるスーパー宿にもどった。

 もう一部屋とろうとしたが、うまってしまっていた。明日からなら大丈夫らしい。

 カルディアは、「別に今更だろ、お前の部屋に一緒でいいじゃないか」という。フロントのお姉さんも、頬を染めながら「お客さんがよろしければ、本来ダメですが埋まってしまってるので、今日だけ特別で・・・静かにお願いできればと」とかいいながら、チラチラこちらを見てる。

 ま、まぁ、数年間狭い小屋で一緒に寝泊まりしてたしな。ということで、同室となった。


 そんで、荷物を部屋に置いて、風呂につれてった。もちろん男女で別れてる。大変感動したようで、とんでもなく長く入っている。

 食堂のテーブルで、エール飲みながら待つ。


「すまん、大分またせたな」


 と、湯上りのカルディアが申し訳なさそうにでてきた。あぁ、その顔。ただ眉毛をはの字にしてるだけの顔だ、懐かしいな。


 エールで乾杯して、持ちこみのソース唐揚げをついばんだ。エールによくあうなぁ、冷めても最高にうまい。

 カルディアも美味しそうに食べてる。大満足のようだ。明日も買おうこれといっている。



 そして飲みながら、カルディアの修行の話を聞いた。

 なんでも、修行に旅立つ前日に、いままで行ったことがない次元を見つけたらしく、そこで修行していたようだ。たぶん、あれはダンジョンだなとかいってる。


 この世界のダンジョンは、基本的に別の次元にあるそうで、正規の入り口でその次元に飛ばされるらしい。カルディアは次元を魔法で行き来できるので、横から入ったそうだ。そこを探索している内に、とんでもない強い魔物がいる部屋を見つけて、だいぶ苦労したが倒せたそうだ。それ、たぶんボスだ。

 次元とかダンジョンとか、突っ込みたいところが多いがぐっと堪える。

 しかし、すげー寡黙だよな、こいつ。

 今度つれてってやるって言ってるから、その時は何かしら理由をつけてお断りしようと思う。



 俺の話もした、カルディアが旅立ったあとにすぐに旅に出たことや、ドーソンの街で冒険者になったこととか、盗賊村とか王都でラーメン屋始めた話とか。

 マークとエリサとの出会いの話もした。

 カルディアは、楽しそうに聞いている。盗賊村の剣豪のじいさんに興味津々のようだ。今度いこう。連れてってくれという。ある程度落ち着いたら、盗賊村の様子を見に行こう。もうだいぶ立ってるから、街になってるんじゃないかな。


 しかし、楽しそうだな、こいつ。冒険者になれたのが相当うれしかったのか、登録後から今まで終始ご機嫌だった。ソース唐揚げが歯に挟まった時だけ、難しい顔をしていたが。

 カルディアを見てると、あったかい気持ちになる。


 さて、カルディアが眠そうなので、今日は寝ることにした。おやすみと言ってランプを切った。

 もちろん、俺はソファーで、カルディアはベッドだ。

 いやぁ、今日は最高に楽しかったなぁ。


 


 これは、ついに俺にも恋愛要素きたかもしれない。

 やっべぇ、ねむれねっ。意識しちゃって、全然ねむれねっ。



 結果、明け方まで悶々していた。この感じも懐かしい・・・。

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