02.エリサ案件と再会

 あの事件から数日、我が純白のコップは、平穏なヒビが入っている。


 今、ギルド併設の食堂の4人がけ丸テーブルに、俺、無表情のエリサ、マーク、そして魔族っ娘ことアディさんが笑顔で普通にマークの横に座っている。

 朝集合してコーヒーを飲みながら、予定を話し合う時間だ。一見すると優雅なコーヒータイム。

 お解りいただけただろうか、実は一部のメンバーが病みきってしまっている。


 ここ最近というか事件後からずっとなんだが、アディさんが普通にマークと一緒に出勤してくる。どうして、ねぇ、どうして、何してるの二人で、ねぇ。

 エリサは、もう病みすぎて「あのおんな・・・あのおんな・・・」ブツブツいっている。よく聞こえないと言うか意識的に聞こえないようにしている。

 たまに「ねぇ、なんであの女がいるの?ねぇなんで?」と、無表情で急に聞いてくるようになって心臓に悪い。あと、その時腕を掴まれるんだけど、すごいいたい。


 そもそも、マークがつけてる指輪見て発狂していたのに、翌日の朝にアディさんと一緒に出勤したからもう大変だった。

 初日、俺は完全にサンドバッグ状態だった。



 さて、無事マークも帰ってきたし、いつの間にか仲間も増えたたことだし、そろそろCランクに挑戦しようかっと話題を振って見たが、マークとアディさんは肯定的だ。エリサも、無表情で微動だにしないが、肯定していると思う。


 ちなみに、アディさんはマークとなにかしらの契約をしたらしく、ペアの指輪で繋がっているそうだ。この街では使い魔的な扱いという設定になっている。

 エリサが怖いので深くは聞かなかったが、マークお前、こんな可愛い娘と契約って・・・おっと、魔族と契約なんてめっちゃうらやましい。

 そもそも魔族って人間といて大丈夫なのとか、魔物とかとどういう関係なのかわからなかったので、アディさんに聞いて見たところ。


「そうね。一部は今でも、バチバチしてるみたいだけどね、私は自由に生きてるからそういうの意識したことないわ。そもそも私の時みたいに強引に呼び出されたりとかしない限りめったに人間と魔族が会うことはないわ、住んでる次元が違うのよ。だから一緒にいて問題あるかどうかは、正直わからないわね。私も人間の世界始めてきたし。あと魔物は魔族とは全く関係ないわ。力でねじ伏せて使役したりはするけど、なんで魔物がいるのかわからないわ」


「アディは最近毎日こっちきてるけど、大丈夫なのか?」


「マークったら、私のこと心配してくれてるの?嬉しいわありがとう。大丈夫、なんかあればすぐもどれるから。それに私一人で暮らしてるから、そもそも何もないわ。宅配便ぐらいよ」


 エリサは、無表情のまま掠れた声で「あなたたち、たのしそうね」という。




 よし、じゃぁそろそろいい加減、Cランクの昇級試験に挑戦しようか。

 というわけで、3人を残し逃げる様に受付に行く。


「あのーCランクの昇級試験を受けたいのですが」


「はい、昇級試験は個人単位の試験になります。筆記と実技があり、筆記を通過しないと実技試験は受けれません。筆記は直近ですと明日の午前、午後の枠がありますがいかがいたしますか?」


 とりあえず、他の奴らにも「個人単位だってよー」っとつたえて受付させる。


「じゃぁ、明日の午前でお願いします」


「承りました。頑張ってください」



 受験票を受け取り、テーブルに戻る。

 マークと、アディが戻ってきた。アディが、服を見たいといっている。マークは困った顔している。

 その横をエリサが無表情で戻ってくる。


「なぁ、エリサ、アディが服見たいそうなんだけど、一緒にいってあげてくれないか?」


「えっ」俺


「・・・いいわよ」エリサ


「えっ」俺


「ありがとう、エリサ。女の子の服わからなくて、エリサいつも可愛い服着てるから」


 うわぁ。すげー複雑な状態にしやがった。


「かわい・・・しょ、しょうがないわ。私が服選んであげるわ。アディきなさい」


 俺は、アディさんが何も喋らないうちにギルドから押し出した。


 さて、マークくん。午後まで時間あるよね。

 ちょっとおじさんとお話しようか。


 この際だから、マークにはっきり言おう。お前が鈍感すぎて病みきってる女の子がいることを。

 余計なことすぎるけども。



 数時間後。

 洗いざらいぶちまけた。

 マークは、エリサを傷つけていたことを指摘されて、「俺は、なんてことをしていたんだ」と、目に見えて落ち込んでいる。

 どんなだよ、まじで気がついてなかったんか。お前は。


 とりあえず、戻ってきたら謝るそうだ。

 どう謝るんだこいつは。


 今日は何もせずに、ただ待つしかないな。

 俺は耐えきれずエールを飲み始めてしまった。もうどうとでもなれと。

 マークの分も持てきたが、マークは一切飲まない。

 ただ、二人の帰りを待っていた。


 そもそも、あいつら二人で外出して大丈夫!?

 肝心なことを忘れていた。くっそ、やばい。もう手遅れかもしれない。


 すぐに立ち上がり、扉にむかおうとしたとき、ちょうどエリサとアディが帰ってきた。


 いちゃつきながら。


「ちょっとアディったら、くっつきすぎよ」

「だってエリサかわいいんだもん」

「もう」


「えっ」俺


 なにこの状況。すごい密着しながら帰ってきた。いいぞ。すっごくいいぞ。

 しかし、何があったんだ。


 二人に気がついたマークが、二人の元に走っていき頭を下げた。


「すまなかった。エリサ、君をずっと傷つけていた。本当にすまなかった」


「いいのよマーク、私がアディに嫉妬していただけだから」

「エリサったらかわいい」


「まだ俺と一緒に冒険いってくれるか?」


「あたりまえじゃない、私とアディがあなたをサポートするわ。ねー」

「ねー」


 俺は?ねぇ、俺は?


 マークは感極まり、二人を抱きしめる。

 二人は、嬉しそうに「きゃー」っていってる。


 エリサが俺に、Vサイン送ってる。


 なにこれ。俺やっぱ旅にでようかな。

 と、俺が病み始めた時だった。




 ギルドの、扉がすごい勢いで開き、しってる顔が飛び込んできた。


「魔族の気配を感じて参上。私がきたからもう大丈夫だ・・・って、タケシじゃないか。なんで、魔族とその人たち抱き合ってるんだ?」


 あ、カルディアじゃん。ひさしぶり。今、めっちゃ会いたかったわ。

 

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