普通の会社員の異世界冒険物語〜仲間から追放される訳でもなく、寝取られそうな幼馴染がいる訳でもなく、だから復讐もなく。程々に強いがちやほやされる訳でもなく、悪い奴もそんないない異世界で必死に生きる〜

ときすでにおすし(サビ抜き)

第1章 カルディアの弟子編

01.異世界初日

 気がついたら異世界としか思えない場所に、立っていた。


 だだっ広い草原と森の境のような場所。

 上をみると太陽っぽいのが2つ。大きいのと小さいの。


 はい、地球じゃない。


 そして横を見ると、遠くの方に馬鹿でかい恐竜みたいな生き物が見える。


 はい、地球じゃない。


 絶対近づかない方がいいやつ。

 そして、目の前には森、後ろは草原。



 俺の名前は、タナカタケシ。歳は32で独身、彼女なし。特別な技術とかがあるわけでもない、ただの無気力系会社員だ。格闘系の趣味があるわけでもなく、休日はアパートのベランダで空見ながら昼寝をしている無趣味な男だ。


 なんで、こんなことになったのだろうか。

 たしか、会社帰りに、行きつけの焼き鳥屋で、鶏皮とネギま食って、一杯飲んで、そんで、歩いてアパートまで・・・

 そう、帰っていたはずだった。


 テンプレみたいな、神様とか女神様とかみたいのもいないし、これからどうしたらいいのかもわからない。だいぶ落ち着いてるけど、ついさっきまで発狂気味だった。



「ここは異世界なんだろうな」


 誰もいないのに、一人で喋っている。


 きっと、とっても可愛い女神様がドジっ子で、そのドジで俺がこの世界に呼ばれて、たぶんテンプレ的な展開もドジっ子だから忘れちゃったんだろうなぁ。もうドジっ子の女神はしょうがないなぁ。

 きっとそうだ、ちきしょうドジっ子め。


 くだらない考えが一巡して、現実にもどる。


 さてと、持ち物はっと、んーん何もない。持っていたはずの、会社用のリュックも、スマホもない。服はTシャツとジーパン、会社帰りに着ていた服装のままだ、乱れもない。

 またちょっと発狂しそうになったが、幸い寒くも暑くもないことに気がついて、自分は運がいいと思うようにしたら落ち着いた。



 とりあえず、森と草原の境を、大きな恐竜っぽいのがいない方に、歩くことした。歩きながら、「ステータス」とか言ってみたり、念じてみたが何も変わらない。

 「ファイヤ」とか「ヒール」も試してみたけど、ダメだった。

 そういうシステムは、ここはやってないらしい。せめてそういうシステムのところが良かった・・・

 それか才能がないのかもしれない。



 いろいろ考えたり、テンプレ的なことをやってみたけど何も成果が得られない。


 体感で1時間ぐらい森に沿って歩いていたら、ゴゴゴォっと森の方から音がきこえた。何かが森からこっちに迫って来てる。すごく近い。

 あぁ絶対何かトラブルになるなって感じの音だ。とりあえずダッシュ。


 止まってたら、絶対死ぬって思いながら必死でダッシュ。

 ダッシュ始めて数秒前に自分がいたところを、でかいイノシシみたいなバケモノが飛び出してきた。


「アッ、ヤベ」


 少しだけ軸足がかすって、吹き飛ばされる。


 地面に叩きつけられる俺。


 意識が朦朧としている中、ぼやけた視界で、走り去ろうとするバケモノをみる。

 傷だらけだった。相手はまったく、俺を意識してない。何かから逃げてるのか。


 そして、後ろからすっごい光る線のようなものが無数に飛んできて、バケモノの後ろ足の付け根に刺さる。バケモノは、悲鳴のような鳴き声で、滑り倒れながら森を向く。


 それと同時に、金色の髪の人がすごいスピードで森から飛び出して、剣でバケモノの頭を刺す。

 ものすごく素早く、一瞬で。ビクンと動いてバケモノは、そのまま止まった。死んでしまったのだろうか。



 目の前で起きたことが、ショッキングだったからかもしれない。

 地面に叩きつけられた衝撃で、脳震盪が起きたのかもしれない。


 どっちかというより、どっちもだったと思う。

 そこで、俺は気を失った。


 女性の声と、何かが自分の中に流れ込んできて、体が暖かくなったのをなんとなく覚えてる。

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