ナミと逆時計
「はあっ、はあ…… アストレア! ここ!?」
「そ、そうね…… ここよ……」
私たちはアストレアの屋敷から処刑場まで全力で走ってきた。 走っている途中に処刑場の方から貴族らしき人たちが何人か歩いて出てきたがそんなことに構ってはいられなかった。
きっとナミの処刑を見に来た人ではないはず! お願いっ! 無事でいて!
処刑場の入り口で管理人のような人が近付いてきた。 どうやら私たちの慌てぶりを見て不審に思って話かけたようだ。
「何だ君たち、処刑ならもう終わったぞ。 今は後処理中だから入らない方がいいだろう」
「え!? 終わったんですか!?」
嘘でしょ!? ナミは!?
「処刑された人ってどんな人ですか! まさか猫耳少女じゃないですよね!」
「うん? さっきまでのは確か盗みを働いた男だったかな。 安心しなお嬢ちゃん、猫耳少女なんて見ても聞いてもないよ」
良かった…… これで一安心、と言いたいところだけどナミの羽衣の感覚がないんだよね……
考えられるのは二つ、ナミが死んでいるか水のある場所にいるかなんだよね。
「アストレア! この辺に水がある場所ってない!?」
「水か…… ここの近くだと町の中央にある噴水くらいだな」
アストレアが言ったのは私たちが最初に集合場所にした広場にあった噴水のことだろう。 およそ直径十メートルほどなので探知ができないのも納得がいく。
「じゃあすぐ行こう!」
「だな! アストレア、案内を頼むぞ!」
「またわたくしですか…… けどお姉さまの頼み事なら断るわけにもいかないわ!」
そう言ってアストレアは全力ダッシュで走り出した。 私とマーシャは少し遅れ気味に走り出した。
私はインドア派だからこんなに走りたくないなあ……
「ナミー! ナミー!」
広場に着いた瞬間私たちはナミの名を呼んで探し始めた。
「呼ばれて飛び出てニャニャニャニャーん。 で、呼んだかニャ?」
「ナミ!? 無事だったの!?」
「無事も何もケガ一つしてないニャよ」
ナミは噴水の淵に座っていた。 服装は水の羽衣ではなく変装のために用意した侍女の格好をしていた。
「じゃあナミは何をしていたの?」
「なんか怪しい男が処刑されるとかだったからついて行っただけニャー」
ナミは処刑される予定の男が怪しいと思ったらしく後をつけていたそうだ。
「それで何か収穫はあった?」
「なんか変な時計を拾ったことくらいかニャー」
ナミは男の遺品である懐中時計を見せてきた。
ん? 今時計って言った?
「それは……
「「……ええええええええええ!?」」
私とアストレアは叫ばずにはいられなかった。
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