つ、着いた

「暑い……」


 私たちは今、砂漠を歩いています。 帝国領に入ってからというもの五時間近く歩いていますが一向に町らしきものは見えてきていません。


「ニャアアア…… 暑いニャ……」

「頑張れ海凪にナミ。 本当にもうすぐだからな」

「それ言って一時間は歩いてるニャよ……」


 砂漠では水が熱をもってしまうために水の羽衣は着ず、耳飾りから出発前にハイラ村でもらった全身が覆える布の服を着ている。


 でももらった時より数段良い服なような気がするんだよなあ。 気のせいかな。


「もうすぐなのは本当だぞ。 歩いた時間でしか判断はできないがもう着いていてもおかしくはない頃合いだぞ」

「それならいいんだけど……」


 そう思っていると陽炎の中に何か建物が見えた気がした。


「今何か見えた、かも」

「ホントかニャ!?」

「多分だけどね」


 砂漠だからあんまり使いたくはなかったけど……


『水よ、映したまえ』


 私は水のレンズを作り出し望遠鏡として使ってみた。


「見える! 見えるよ!」

「おお! 遂に帝国に着いたのか、それならこれまで以上に服装などに気を遣わねばな」

「でもやっとこの暑さから解放されるニャアア!」


 服は顔も隠せるしこのままでもいいかもしれない。


「マーシャは町に入る前にコルセットは捨ててね。 それで私たちが服を買ってくるからそれまで待っていてね」

「ん? なんでだ?」

「男装のままだとバレるかもしれないし体に悪そうだからね」


 おそらく帝国にも顔は割れているだろうしコルセットをしていながらだと何かと不便だろう。


「なるほど、それもそうだな。 服は任せるとしよう」


 マーシャは何か考えているようだったがなにか変なことは考えていないだろうか、と心配になってしまう。




 そうこうしているうちに町の前の門までやってきた。 そこでマーシャと別れ私は服を調達しに店を探し始めた。

 ナミはというと私からマーシャを見ておいて、と頼んでおいた。


「えーと、マーシャが着れそうな服は……」


 意外と多くの服屋が並んでいて迷ってしまう。


 マーシャは何気に出るとこ出てるからなあ。 私サイズで選んでしまうと私が傷つきそうだから大きめのを買って行こう。


「あ、これ可愛い」

「なんだい嬢ちゃん、異種族の子かい?」

「そうです。猫人族ケット・シーです」


 私は素直に答えた。


 別に異種族と言っても珍しいわけでもないみたいだしいいよね。 まあ私はこの世界ではまだ見たことないんだけどね。


「へえ、初めて見たよ。 似合いそうだしそれ持って行ってもいいよ!」

「え、いいんですか!?」

「もちろんさ!」


 落ち着いた柄のワンピースを二着ほど持ってマーシャのもとに帰ることにした。

 門のあたりまで来ると……


「なんだあの美人は!」

「美しすぎる……」


 観衆の中には今まで以上に綺麗になっているマーシャがいた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る