第22話 Side:さとみ 傷つくのが怖い。

今日は、岡崎さんとデートだ。日ごろ、私の趣味全開で、ほとんど一方的にお話している。岡崎さんは聞き上手だ。だから今日は私が聞き役になろうと思う。


っとその前に、会社の後輩である みずきちゃん とランチの約束もしている。


みずきちゃんとの待ち合わせの場所ににつくとそこにはもうみずきちゃんが立っていた。いつもぎりぎりなのに珍しい。


「お待たせ。結構待った?」

「さとみ先輩。こんにちは、わたしもさっきついたとこなので、大分早く着いたと思ったのに先輩はいつもこの位前には来てるんですか?」


「楽しみにしてる約束の時だけよ。」


そして、ランチを楽しみながらみずきちゃんの話を聞く。

みずきちゃんが夜のお仕事をしているのは、前から聞いていたので特に驚きはないけど。お客さんを好きになったなんて、なかなか信じられない。この前までは、『すごくよくしてくれてるお客さんと誕生日もクリスマスもお仕事として過ごして仲良くなったけど、恋愛対象としては見られないんです』なんて言ってたのに。


ランチも終わり岡崎さんとの待ち合わせ場所近くのカフェでお茶することにした。


「今日の先輩はむっちゃ、お洒落っすね。夜はデートですかあ〜」


「みずきちゃん、実は・・・そうなの。」


「へえ~珍しいっすね、あれから、『男なんて』って言って紹介されても乗り気じゃなかったのに」


「最初は乗り気じゃなかったんだけど、すごくいい人で、ほら、私ってディープなアニオタじゃない。その人はあんまり詳しくないし、そんなに興味もないはずの私の話をすごくキラキラした顔で聞いてくれるの。話してて楽しくなっちゃって。」


これは本当だ、詰まんないであろう私の話を一所懸命に聞いてくれている。それだけでも好感が持てる、しかも前に私が好きなアニメだって言ったのを覚えてくれて勉強までしてきてくれたので、ホントに一緒にいて楽しい相手。


その後すぐに、みずきちゃんが帰っていったまだ、時間があるので最新刊のラノベを読んでいる。こういうひとりの時間も悪くない。


まち合わせの時間が迫ってきたので、お会計をすませようとレジに向かうと、もうすでに済まされていた。みずきちゃんの分は私がおごるといったから誰が?とおもい、店員さんに尋ねると。男性だということしかわからなかった。もしかすると、岡崎さんかもとなぜか思った。


待ち合わせ場所に到着すると、そこにはもう岡崎さんが待っていた。



◇◆◇


1件目、2件目と静かすぎず、お洒落過ぎないお店というのは会話が思った以上に弾む。

バレンタインで用意したハンカチも気に入ってもらえたようで、安心したのかお酒の力もあってか、普段口に出さないようなことを口走っているもので・・・


「もうすこし、岡崎さんといたいな」


ふつう、こんなセリフ言ったら、即ホテル行きだとは思うが、そこは良くもも悪くも岡崎さんで・・・


「え、あ、そ、そうなの、じゃっ、じゃあカラオケにでもいく??」


岡崎さんの口からホテルってワードが出なくてよかった。


「そう~~ですね、いいですよ。」


カラオケに移動して二人で個室に入る。独特の緊張感あって、この感じ久しぶりだな~なんて思いながら、岡崎さんの歌声を聞く。



無茶苦茶うまい。。。



そして、バックナ〇バー:ハッピーエ〇ドがかかる。

元カレの浮気が発覚して、落ち込んでるときに別れを決意させてくれた曲だ。

最近聞いてなかったなと思い、当時は自分と重ねあわせて、よく泣いていた。


サビに差し掛かるころになって、涙があふれてきた。



せっかく岡崎さんと来てるのに。



歌い終わった岡崎さんに私は、涙があふれた理由を話していた。



ダムが決壊したかのような涙とともに。



その時、岡崎さんは、わたしを抱きしめて言ってくれた。



「その彼のことホントに好きだったんだね。今まで忘れようとして頑張ってたんだね。でも忘れらなかったんだよね。だったら、その気持ちはさとみさんの心の一部なんだよ。忘れようとか、捨ててしまおうとせずに、今はつらいけど大切にしまっておおけばいいじゃないかな。それも含めて今の素敵なさとみさんなんだと思うから。」


そんな言葉初めてかけられた。いままで吹っ切ろうとしてた。忘れようとしてた嫌いになろうとしてた。大好きだった人のこと。


そっか、思い出として・・・・・終う・・か


「・・ぐすっ・・ありがとう・ございま・・・す」



そして、目があって見つめあう。彼はすこし微笑み、顔が近づく。






コンコンコンコン


ガチャ


「追加のの飲み物お持ちしましたー」



急に恥ずかしくなって、私は目を逸らし俯いてしまった。


彼もそうだったのか、とどいた飲み物を一気にあおった。

「じゃ、今日は帰ろっか。」


そのあとは、タクシーで帰った。タクシーの中で私は彼のぬくもりを思い出し、また泣いていた。


私はまた人を好きになってもいいのかな。傷つくのが怖い。




でも進まないと・・・そう思って、スマホを手に取り彼にメッセージを送る。


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