第6話 Side:みずき 七夕に想う


海外で働くことへの興味が強かった私は大学を卒業してすぐヨーロッパで働く環境を求めて日本を飛び出た、数年がすぎて何となく日本の居心地のよさが急にこみあげてきた。そこからは迷うことなく帰国を選んだ。そのあとすぐに就職ししたのが今の営業の仕事。

正直、今までの経験などまったく役に立たない職種。


はぁ~今日も疲れた。お昼の仕事変えようかな。私、やっぱりむいてないのかなこの仕事。そう思っているとメッセージがくる。


【7月7日って出勤??よかったらご飯でも行かない??】


その日は誕生日か、正直、何も予定はなく夜の仕事する気だったので渡りに船だ。そういえば、ママが「誕生日はお祝いになるから必ず同伴してね~」なんていってたかな。

すぐに返信する。


【その日はまだ空いてます。実はその日誕生日なんですよ~。誰も誘ってくれなかったらどうしようって思ってたので。とてもうれしいです~】


お客さんから、言ってきてくれてよかった。営業メッセージとか苦手だし。そうじゃなけれれば、こちらから声かけしなければいけない。しかも、ざっき~さんなら退屈せずに済みそうだし、ドタキャンもなさそうだ。


そこからは、自分の誕生日のことなどまったく気にせず、淡々と毎日が過ぎっていった。日常からゆっくりと色がなくなっていき白黒になっていくような、感情のない世界をただ流されているようだ。

誕生日前日になってメッセージが届く。


【おつかれさま、明日は楽しみにしてるね】


ん?明日?っは!!わすれてた、明日同伴だ。


【お疲れ様です。それは私のセリフですよ~こちらこそ明日楽しみにしています。よろしくお願いします。】


誕生日だということは今思い出したが、現金なもので、それなりに期待はしている

さっ、明日の準備してさっさと寝よう。明日も雨なのかなぁ。


大雨の中、誕生日を迎える。

しかし、ざっき~さんと待ち合わせをする頃には晴れ渡っていた。今年は、織姫と彦星も無事に再会できたのかな。

「今日はこんな素敵なとこで食事なんて、ありがとうございます。私、目の前で鉄板なんて初めて。」

「そ、そう。ならよかった」


ほんとにおいしかった。こんな誕生日は初体験。一瞬、こんな誕生日を恋人過ごせたらと、よぎってしまい少しテンションが落ちてしまった。


「じゃあ、そろそろいこうか」

「そうね。いきましょう。」


ざっき~さんには感謝している。結局、誕生日のお誘いはざっき~さんだけだったから。そう考えているうちにバイト先のスナックに到着する。

からから~ん


「いらっしゃいませ~ざっき~はこっちに用意しているからそこに座って~」

とざっき~さんをママが誘導してくれる。


いくらかの時間がたったころ目の前でママがざっき~さんに耳打ちしている。

「みずきーメニュー頂戴」

ああ、誕生日だからシャンパン入れろって言ってたのか。入れてもらうと少し日当に色がつくからありがたい。

「かしこまりました~~」

ほどなくして、シャンパンば運ばれて行き開けられる

っポン

大人っぽく包装された箱を手渡される

「みずきちゃん、これ誕生日プレゼント。気に入るといいんだけど」

「ふへぇっ!!!!いいんですか?えーーなんでしょう?開けてもいいですか?わぁぁぁ~時計だっ!!!しかも、私は欲しいっておもってたやつです。え、え、これ、えどうしたんですか?」

「ママが教えてくれた。これでよかった?」

「ざっき~ありがとう。」

満面の笑みで自然と言葉がこぼれた。ほんとに嬉しい仕事そっちのけで着けたり外したりみせびらかしたりしている。


ほかのお客さんはここまで準備してくれないよ。今まではお客さんAくらいにしかおもってなかったけど。ちょっと意識しちゃうなぁ。


「やっぱりかわいいなぁ」


ざっき~は聞こえてないと思うけどばっちり聞こえてる。ちょっと恥ずかしい。出会いがここじゃなければ好きになってしまってのかな。疑似恋愛が商売なんて、なんか切ない。


それでも、そんなつぶやきを聞きながらこう想う。


岡崎さんとの距離がもう少し近づきますように

七夕に想いを込めて・・・

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