終末世界で見える景色

ゆで卵

終わりの世界で

 いつだったか。


 何処かを旅していた。


 始まりの海を渡り、終わりの大地を踏み締め、揺蕩う空に浮かんで。


 宛があった訳では無い。


 今となっては出発地点も定かではなく、夜闇に揺らぐ月を仰ぐ。


 様々な場所を見てきた。


 初めの記憶……といってもそれがのだが、それはともかく、始めの記憶は白い光が瞬く黒蒼の空。ゴツゴツとした、お世辞にも球形とは言えない岩のような場所。


 ただ、同じような岩がぶつかる度にくっついて、大きくなって。


 次第に形も整えられて、気付けば一つの大きな星となっていた。驚いたなぁ。急に地面から水が溢れて来て、これまた気付けば蒼一色の海で。


 残っていた赤黒い地表が緑に覆われて、時折赤く染まったり、幾度かの白銀の世界を超えて今、私は何も無くなった荒野に立っている。


 ふと空を見上げれば、眩く光る星がいくつか見受けられる。


 昔はもっとたくさんあったと思うのだが、ある時を境に一気に数が減ったものだ。このくらいの時分であれば月が地表を照らしたのだろうが、その月もついこの間岩の欠片となって降ってきてしまった。おかげでただでさえぼこぼこになっていた地表が更に凹んでしまったりもしたが……あれはあれで意外と良いものであった。


 さて、もう後数刻もすれば、弱々しい光を放つ太陽が現れ、そして、今日この日をもって燃え尽きる。


 そうなれば、私もきっと消えることだろう。なんとなく、そんな気がするのだ。


 嗚呼、私は、私は、何者だったのだろうか。


 大地が産まれるより前からここにいて、海が干上がっても尚生き続け、気付けばここは終焉の地となってしまった。


 さらばだ、我が生と共に生きた星よ。


 美しき世界よ。


 新たな地に辿り着けるかは分からぬが、私は征く。


 願わくば、昔話ができるような者と、出会えんことを。


 日が昇る。


 弱々しい、今にも消えそうな日輪が揺らいでいる。


 ………


 …………


 ……………


 消えていく。

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