38.
村を出て走るカイル達はすぐに駐屯地へと到着した。そこには、マーサの言う一つ目の巨人と村長であるエスペヒスモが居ることを確認すると同時に、クレイターが倒れているのを発見する。
「クレイター大佐!」
「ぐ……カイル少尉にフルーレ中尉か……」
「貴様村に来た男……それにマーサか! その様子だと全部話したらしいな」
「父さん……もう止めて……」
マーサが泣きながら言うも、エスペヒスモは目を見開き大声で叫ぶ。
「何も言うな! お前の父はこれから大量殺人を行う。これは報復だ、過去だろうが未来だろうが関係ない。私達のことを風化させぬよう、この島は我らのものとするのだ! やれ、サイクロプス!」
「オォォォォォ……」
「マズイ! いけシュナイダー! お前の相手はこっちだ! フルーレちゃんは村長を拘束してくれ!」
動き出したサイクロプスに発砲しつつ、イリスを降ろしたシュナイダーにクレイターの救出と、フルーレにエスペヒスモの捕まえるよう指示を出す。
「わかりました!」
チュン!
威嚇射撃を足元に放ち、一気に駆け出すフルーレに教科書通りの動きだなと苦笑しつつ目をサイクロプスに向ける。フルオートで連射しているが、サイクロプスに効いている感じがせず舌打ちをする。
「チッ、皮膚が固いのか? 剣ならどうだ!」
「オオオオォォン!」
ズン!
クレイターを踏みつぶそうとしたが、カイルの攻撃に気を取られ、攻撃目標を変えてカイルを踏みつけてくる。
「見かけのわりに速いな、だがその足、もらったぜ!」
『……! お父さん、ダメです』
カイルがずしんと降りてきた足に向かって剣を振りぬく。二足歩行の相手なら腱を斬ればという判断だったが、
バイン!
「なんだ!?」
「オオオオ!」
「ぐあ!?」
「カイルさん!?」
剣があっさりと弾き返され、サイクロプスの蹴りをもろに受けてカイルはゴロゴロと地面を転がる。それを見たエスペヒスモが鼻を鳴らしながら言う。
「ふん、こやつの体は弾力が凄い。銃はもちろん剣も通らないぞ? ふん!」
「きゃあ!? この……!」
近づいて押さえつけようとしたフルーレがを投げ飛ばすエスペヒスモ。直後、タンタン! と、反撃をするが体に当たっても痛みも死ぬこともないエスペヒスモは涼しい顔でクレイターへ近づいていく。
「帝国兵め……! 来い、魔獣たちよ!」
クレイターの周りを魔獣が囲み、片膝をついたままエスペヒスモを睨みつけながら、クレイターが口を開く。
「う……ぐ……お前たちはいったい……」
「五十年前、お前たちに滅ぼされた村のものだ!」
「魔獣にやられたっていう……あの村か……!?」
「お前たちの間ではそう伝わっているようだがな。本来は違う。まあ、今から死ぬお前たちに言っても仕方がないがな。皇帝が出てくるまで殺戮を続けるだけだ……!」
「ガオォォォウ!」
「魔獣か! ならば……!」
エスペヒスモが近づいていくと、回り込んだシュナイダーが牙を剥いた。エスペヒスモは素手でそれを防ぎ、赤い珠をかざす。
「グォウ!」
「なに!? 操れない魔獣だと!?」
「今です!」
「ぐう……!?」
ハンドガンで赤い珠を持つ手を撃ちぬくフルーレ。走り出そうとしたところでサイクロプスに阻まれる。
「どいて!」
バイン!
剣も銃も効かないため、フルーレは仕方なくマーサのいる場所まで戻り牽制の射撃を続ける。クレイターも何とか持ち直した部下が回収して建物の陰へと非難することができた。
「か、カイル少尉は大丈夫かー!」
「ヤツは全力で蹴られたのだ、無事なわけが――」
エスペヒスモがそう言うと、遠くでイリスが倒れたカイルに話しかけているのを目撃し、目を見開く。
『お父さん、大丈夫ですか?』
「痛ぅ……大丈夫なわけないだろ……咄嗟に自分で飛ばなかったら全身バラバラだぞ……」
『それは良かったです。私のデータベースを検索したところ、あれはサイクロプスという個体で、全身がゴムのようになっているようです』
「自動車のタイヤと同じってわけか……弱点はあるのか?」
『あります。あの大きな一つ目。あそこだけは外膜に覆われていません。なので、攻撃が通ります』
「なに……!? どうしてそれを……奴らしか知らぬはずでは……!」
「(奴ら? どういうことだ……?)」
エスペヒスモが冷や汗をかきながら呟いた言葉を聞き逃さずカイルは胸中で反芻する。しかし、今はそれどころではないかと立ち上がり再度アタックをかける。
「おおおおおお!」
「させるものか!」
「わ、わたしも!」
『シュー、こっちへ』
「わおおおん!」
カイルが顔に向かって乱射しながら突撃し、エスペヒスモがそれを遮るようにカイルへと向かう。サイクロプスは弱点を手で隠しながら駐屯地の破壊を始める。そこへクレイターの怒号が響き渡った。
「撃て! 撃ちまくれ! ……何!? そっちにもいるのか!?」
「く、はは! 他の町にもサイクロプスが到着したようだな! ならば……!」
ターン!
「俺の銃か……! いつの間に!?」
エスペヒスモがいつの間にか拾ったハンドガンを使い、魔通信機を破壊する。カイルの弾丸は背が高すぎる故に命中精度に難があった。
「くそ……! どうする……? あ!」
「イリスちゃん!?」
『ここは私が。<レ*****ン>』
ブオン、とドラゴンを倒したときに出現させたパイルバンカーをどこからともなく取り出した。瞬間、カイルは自分の耳を抑えて片目を細める。
「(なんだ……!? 今、イリスの言葉、意味が聞き取れたような……? それにあのサイクロプス、俺はなんとなくアレを知っている気がする……)」
直後、
ズドン!
『あなたも私と同じみたいですね。ですが、マスターを傷つけるのであれば、ここで終わりです』
ボッ!
「オオォォォォォォ……!?」
「馬鹿な……サイクロプスの足を!?」
ズゥゥゥゥン……!
「……! いまだ!」
「撃ちます!」
フルーレが両手で構えたハンドガンから弾丸が射出される――
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