パパ活ってどうなの?金でみんな解決してやるキモいおじさん

@shouwa46nen

第1話妻が死んでいた

布団の上で、四つん這い状態で、枕に頭を突っ伏したまま妻は動いていない。


下腹部からは尿が漏れていた。


仰向けに起こそうとすると、顔は青白く、舌が少し口元からはみ出していた。



「おいっ!」


と大声で呼びかけても、反応なし。


目を閉じたまま、息をしているようには見えないし、体を揺らしてもまるで人形のようだ。



僕はあの時、新聞配達員をやっていて、朝7時ごろ帰宅していた。


いつも妻から買い物を頼まれて、コンビニに寄り、少し雑誌を立ち読みして、時間をつぶしてから帰ることにしていたのだ。


2ℓのペットボトルの水を3本買い込んで、自宅に帰って部屋に行くと、妻はあの体制でタバコでも吸っているのかと思っていて、一旦冷蔵庫にペットボトルを入れ、また部屋に戻ってもその体制。


これはまずいと思ったが、手遅れであった。


愛犬が2匹、妻に寄り添って普通に寝ているので、何事もないと思ってしまっていたのに。


恐らく、愛犬は妻のことはすべて知っているに違いないが、人の言葉をしゃべれたら良かったのにと。


妻も眠るように死んでしまったのか、愛犬から見たら、日常と同じ時間が流れていたのかもしれない。



119番通報し、救急隊の言われるがまま心臓マッサージをしたのだが、頭が混乱して、ちゃんとできたかどうかわからない。


「おいっ!起きろ!大丈夫か!」


何が何だか、状況がつかめないまま、妻の胸を何度も何度も押していたが、5分くらいして救急隊が到着して言われたことは


「心肺停止してます」



救急隊が来る前に、愛犬が救急隊に吠えたり、噛みついたりしてしまうのを防ぐため、風呂場に移動した。


愛犬は分離不安なので、飼い主から離れると、狂ったように吠える。


特に2匹だと、争うように吠えまくるからうるさい。



その風呂場から泣き叫ぶように聞こえてくる犬の鳴き声を尻目に、救急隊に心臓マッサージを受けながら、声も何も発しない妻は担架に乗せられ、救急車へと運ばれていった。



2月の寒い朝だった。


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