第38話 記憶の奔流。

 あ、あ……。


 キオクの奔流がボクを包む。


 なんだかものすごく気持いい。



 流れ込むキオクが落ち着いてボクの心の中に定着する。


 うん。


 ボクは……。あたしは……。セリーヌだった。


 戻ってきた。帰ってきたんだあたし、この世界に。


「ありがとう、女神様……。あたしをこの世界にもう一度戻してくれて……」


「あは。あたしのことはラギレスって呼んでね。たぶんこの名前、あなたの名前、ラギからきてる。あたしもしっくりくる名前だなーとは思ってたんだけどね。あなたの名前って知って、納得したんだ」


 え?


「キオクの中にあったでしょう? あたしは未来の貴女なんだってば。未来に貴女が生まれ変わった存在、それがあたし」


「っていうかフニウもラギレスだった? もしかしたら」


「あは。実はね。そう。ずっとフニウとして貴女のそばにいたんだよね」


 そういうとラギレスの姿、境界がぼんやりとしてきてそのまま猫の姿に変化した。


 クリーム色のそのかわいい猫。まちがいない。この世界でずーっと一緒にいたフニウだ。


「でもね。あたしはフニウのふりをしていただけだけど、実はこの世界には本物のフニウも存在はしてるんだ。今回は名前を借りてただけ、だけどね?」


 そう言って猫のラギレスは片目をちょんとつむり。軽くウインクをして。


「で、どう? いまって悠希ちゃんだった事も覚えてるの?」


 ああ……。そうだ。


 あたしは佐藤悠希、だった。


 そのはず。


 でも、どうして?



 アリシアは?




「あたし、アリシアって子のナカに還ったんじゃなかったの?」


「還ったよ?」


「ならどうして……」


「ああ。どうして悠希ちゃんだったかって事?」


「うん。そう」


「あの世界はね、また別の世界なんだけどね。アリシアはコールドスリープしてるって話ししたよね? その間にこの世界に心だけ来ちゃってるって。アリシアの世界ではコールドスリープ中に心を生かしておく為に、特殊な技術でその脳をVR世界に繋いでるの。もともとはこの世界も悠希ちゃんの世界もそんなVRの世界だったんだよ。ほんともともとは、ね?」


 え?


 えーー!!?

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