第20話 元のセリーヌ。

 旅館の食堂で朝ごはんを食べて。


 美味しい玉子焼きを麦パン? の上に載せてチーズかけてトースト。


 カボチャ? を越した風味の冷製スープ。


 んでもってたぶんリザードドラゴンのお肉で作ったハム。


 たっぷり厚切りを炙って香辛料をかけて。じわっと溢れる肉汁がもうとんでもなく美味しくて。



 幸せ。



 シルヴァもたっぷり食べて満足顔だ。なんだか嬉しいな。


 やっぱりご飯がおいしいと幸せになれるよね。


 そんなこと考えてたらダントさんがやってきた。隣にはマーリンさんもいる。


「おはよーセリーヌちゃん! よく眠れた?」


 と、マーリンさんが笑顔で声をかけてくれた。


「おはよーございますダントさんマーリンさん。ええ、よく眠れました。ぐっすり寝ちゃってびっくりしてるくらいです」


 ボクもそう笑顔で返す。


 マーリンさんとはすっかりお友達っぽくなったけど、ほかのメンバーさんはまだそこまで打ち解けてなくて。


 ダントさんもそれが分かってて2人できたの?


「これ、俺の嫁。ほかのメンバーは用事があって今日は来れないけどマーリンはどうしても一緒にくるって聞かなくてな」


「これはないでしょうこれは! っていうかセリーヌちゃん私物の荷物も持ってないし、きっと色々入り用だと思って。あたしいいお店知ってるから一緒にお買い物しましょ?」


 あは。


 そっか。ご夫婦だったのかぁ。仲が良さそう。


 っていうか昨夜一緒にご飯食べてからすっかりくだけた話し方になっててちょっとほっとしてる。


 聖女様呼びや敬語使われるのはなんだかむず痒くなっちゃって嫌だしね。


 買い物も……、楽しそう。


 やっぱり下着とか、代えが欲しいよねそれに普段着も。


 《んー。最初に見せた衣装ケースとかあれセリーヌのだから。今度君のレイスに移そっか?》


 にゃ!


 フニウ?


 《いちお他の人居るし念話で声かけてみた。こうやって話せば声に出さなくてもいいでしょ?》


 まあ、うん。そうだよね。


 っていうか、あの衣装全部?


 《そうだよー。自由に着ていいからね》


 ああ、なら。


 ほとんどがドレスの類で普段着っぽいのはあんまりなかったから、その辺かな。欲しいのは。


 あと下着、特にパンツ。


 フリフリのじゃなくてシンプルなのが欲しい。


 布面積ももうちょっと多目がいいな。今のパンツ、ちょっと心許ないし。


 ってあれが元のセリーヌの趣味なのかな……?


 だとしたらちょっと。やっぱり趣味あわないや。


 《ひどいな》


 え?


 《元のセリーヌだって好きであんなフリフリばっかりだったんじゃないよ? まぁ、フリフリは好き、だけどさ……》


 ん? なんでフニウ? セリーヌの好みの話してるんだよ?


 《うう。まあいいや。買い物は買い物で楽しんでくればいいよ。そうだね。庶民ぽい服も必要だよね》


 でしょー? もっとシンプルなワンピースとかも欲しいよね。


 《あ、もってるよシンプルなワンピース!》


 あるの?


 《うんうんお気に入りだったやつ、って、元のセリーヌが、ね》


 んー?


 フニウほんとセリーヌの事詳しいんだね。


 《まあそりゃあ長年一緒にいたからね》


 なんだか、なんか引っかかるけどまあいいや。



 うん。買い物楽しもう。

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