第4話 ケンタウリの森。

「それじゃぁそろそろマシンメア・ハーツの世界に送ろうか?」


 フニウがそういうとこの真っ白な世界にボワんと黒い穴があいた。落とし穴? 違うよね……?


「この穴から飛び降りれば目的地だからねー」


「え? いやいやいやいや、さすがに怖い」


「大丈夫だって。別に上空の高いところから落とすわけじゃないから。ちょっと飛び降りればすぐだから」


「って、下見えないじゃん。こわいったら!」


「もう。世話がやけるなぁ」


 穴を覗き込んで尻込みしてるボクの背後にふよふよ回り込んだフニウ。一瞬、まさか、と思った時には遅くって。


 ドン!


 背中を押されて穴に落ちた。


 真っ黒な闇に包まれボクはそのまま落ちて行き。


 その最中、背後から声が聞こえた。


「そうそう、君の名前はセリーヌ・マギレイスだからね? 物語のパーツの一人。ちゃんと演じてね」


 ってなにそれ? 聞いてないよそんなの?


 そのまま黒い闇の中を落下するボク。ボクの抗議の声はフニウには届いてないのか、それに対しての返事は無かった。




 ☆☆☆



 気がついたらなんか柔らかい土の上? に、しゃがみこんでたボク。ああこんなとこに座ったらスカートが汚れちゃう、と、慌てて飛び起きてお尻をはたく。

 真っ白なドレスも考えものだよね? すぐ汚れちゃいそうだし、って、そんな事を思いながら肩越しに身体を捻りお尻を見てみるけどまったく汚れの気配なし?

「魔法のドレスだからね。汚れは寄せ付けないんだよそれ」

 と、耳元で声がする。


「フニウ? いたの?」


「そりゃぁいるともさ。僕は君のナビゲーター、だからね?」


 あは。ちょっと安心。途方にくれなくても良いってことだし。


「で、ここは、どこ?」


 あらためて周りを見るけど今は夜? 闇夜のような暗さ。どうやらここは屋外で、地面には草がびっしり生えているっぽい。周囲に木が見えるし、ここって森の中のちょっとした開けた場所、みたいな? そんな感じ、かなぁ?


「ここは、聖なる地、ケンタウリの森。……です。なんだけど……」


 ん?


「どうしたの? 珍しくはぎれが悪いよね?」


「うん。ちょっと変なんだ。此処には聖なる女神が居るはずなんだけど……」


 女神イベント? なのかな?


「女神のありがたーいおはなしが聞けるはずなんだけどね? ちょっと手違いでもあったのかな……?」


 周囲はなんだかおどろおどろしい黒い霧が舞って。よけいに視界が悪くなってきた。


 うーん、ゲームのイベントなの? まだ初回からなんにもわかんないうちからこれじゃ、先が思いやられるなぁ。


 そんなこと考えながら周囲を見渡すボクの目に、うっすらとしたオレンジ色の光が飛び込んできた。



 目を凝らしてよく見ると。



 漆黒の三角錐の身体に昆虫のような形の三本の脚が見える、そんな化け物がそこにいた。身体の中央にある単眼? が、オレンジに瞬いた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る