第45話 もしもお兄ちゃんが……騙されているのなら……。


 お兄ちゃんがおかしい……暫く会わないうちに……何かおかしくなっている……。


 スマホを持って慌てて部屋に戻るお兄ちゃんの背中を見て私は不安に襲われる。


「お兄ちゃん……まさか……」

 神って……お兄ちゃんまさか……変な宗教にでも……。

 いやいや、まさかお兄ちゃんがそんな……物に興味を示すとは思えない。


 と、すると……やっぱり…………女?

 雪乃さん一筋だったお兄ちゃんがまさかとは思うけど……でも高校デビューって言葉もあるし……。

 そもそもお兄ちゃんは小学生の頃、そこそこモテてたのよね……本人それに全く気付いていなかったけど……。


 いわゆる……天才肌って奴? お兄ちゃんは昔から何もしなくてもそこそこ出来ちゃうから、多分努力の仕方を知らない。

 現に県内トップの進学校に入学してるし……。

 ちょっとやる気を出せば入れるなんてレベルの学校じゃないんだけど……それがわかってないのよねえ……。


「ひょっとして……変な女に引っ掛かったんでは?」

 女の子慣れしてないから、うちのお兄ちゃんは多分チョロい……。

 例えば綺麗な顔だけで惚れちゃう様な?

 まあアメリカじゃ珍しくないけど、金髪美女とかにコロッと騙される日本人の様な? そんなイメージがある。


「……久しぶりに帰って来た妹をほったらかしにして会いに行く女……」

 しかも騙されているかも知れない……多分買い物かなんかに連れていかれて……たかられる? いやいや、普通の家よりも小遣いは多いかも知れないけど、高校生の財力じゃあたかられると言ってもたかが知れてる。


「じゃあ……荷物持ちとか……」

 なんにせよ……心配だ……もしお兄ちゃんが騙されているならば、妹としては見て見ぬ振りは出来ない。


「確か……明日イケフクロウの前に……とか言ってたよね?」

 ここは妹として全裸にならなければ……あれ? 下着を脱がなきゃだっけ?


 …………あ、一肌脱がなきゃか……oh! ニホンゴムズカシクテワカリマセーーン


 なんて一人で遊んでる場合じゃない……とりあえず……明日お兄ちゃんの後をつけよう。

 そしてもしも騙されているのなら……私が……。

 


 私はお兄ちゃん様子を伺う為に自室に戻って隣の部屋にいるお兄ちゃんの声を聞く為に……壁にそっと耳を付ける。


「ふふふ、あ……ぽんが……や……ぽ……が……俺と……ふふ」


 微かに聞こえるお兄ちゃん声……何か笑って誰かの名前を呼んでいるって……気持ちわる!


「ヤバイよ、やばすぎるよ……お兄ちゃん……これなら何かの宗教の方が良かったかも……」


 お兄ちゃんの好きなラノベならば、ここは妹が自ら恋愛という物を教えてあげたりするのだろうけど……さっきの態度だと脈なしだよねえ……。

 まあ、私もそんなつもりはないんだけど……なんだろう……なんでこんな事を……なんか……誰かに言わされている様な……。

 

 とにかく……明日はお兄ちゃんにバレない様に変装をして後をつけよう……そしてもしも……騙されているってなったら……その時は……。


 私は……部屋に置いてあるトランクを開け……鈍く黒光りししている物を取り出す。


「──M1911……コルトガバメント……ふふ、ふふふ」

 もしも……お兄ちゃんが……騙されているならば……これで……相手を……ふふふ、ふふふふ……。



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