第44話 池袋といえば……
イケブクロのイケフクロウって……駄洒落か!
その名の通りフクロウの多分石像が北改札の通路にドンと置かれている。
夏休みとあってそれなりに待ち合わせの人が立っていた。
こんな所に有名人のあやぽんが来たら……まあ、でもこの間みたいに黒髪スーツの様な格好で来るのだろうかと……そして俺はある一つの可能性を考えていた。
そう……なぜ池袋なのか?
池袋と言ったらある意味オタクの聖地……特にお腐れ様達の聖地がある所。
俺はひょっとして……という気持ちが抑えられずにいた。
そう……あやぽんが……オタクという可能性だ……。
モデルでインフルエンサーのあやぽんが……実は腐女子だった。
なんてタイトルが思い浮かぶ……。
「マジか……もし……そうなら……」
もしもそうなら……あやぽんの本当の姿でここに来るかも知れない……ぼさぼさの黒髪で眼鏡をかけて……制服姿で……って……それじゃいつもの綾波じゃないか……。
「ヤッホーー」
そんな事を考えていると、唐突に後ろから声をかけられた。
俺はドキドキしながら声のする方に振り向くと……。
「うおお!」
この間の黒髪眼鏡……とはまるで正反対の、金髪ロングに黒の派手な柄の入ったTシャツ、デニムのショートパンツ姿のギャルギャルしい格好をしたあやぽんがそこに立っていた……。
「えーーーー!」
なんかどこからか大きな声が……って今はそんなDQNに構っている場合じゃない。
「何?」
あやぽんは不思議そうな顔で俺の前に佇む。
「……いや、凄い格好だなと……」
「そう? 普通じゃね?」
「じゃねって……ギャルですか……」
「えーー? 似合わない系?」
「……いえ……スッゴク似合います!」
ある意味予想通りでホッとした。そして少し残念な気持ちになる。
だって、これじゃあ、俺と全く釣り合わない……。今から俺がこんな綺麗な人の隣を、あやぽんの隣を歩くなんて……と思ったら不安しかない。
美女と野獣ならぬ、美女とオタク……いや、ギャルとオタク……。
それにしても、いつものあやぽんとは違う恰好過ぎて逆に周囲は気が付かない……まあ、池袋自体○○が多いからこっちの方が目立たないけど……。
いつものあやぽんは、どちらかと言えば派手さの中に清楚さを感じさせる恰好が多く、あまりギャルギャルしい恰好は見た記憶がない。
「じゃあ、とりあえず行こうか?」
そう言って俺の腕に自分の手をかける。
「えええ! えっと行くって……どこに?」
ま、まさかこのまま、あの大きなビルの方に?!
まだ、その可能性が捨てきれない……しかし、あやぽんは美しくネイルされた人差し指を立てて上に向けた。
「池袋って言ったら買い物でしょ?」
「……ですか」
「うん! あがる!」
「いや、でも……だったら六本木とか原宿とかじゃないんですか?」
「ああ、そういう所のは仕事がら貰えるのよ」
あやぽんはうんざりした表情で手をヒラヒラと横に振った。
「ですか……」
貰えるって……やっぱり……すげえな……この人は……。
「ほらほら行くよ」
あやぽんはそう言って俺の腕を引き寄せ自分の腕に絡める。
すると……。
「ひうっ!」
どこからか妙な悲鳴が聞こえて来る。
「……ん?」
「ああ、気にしない気にしない、池袋には○な人が多いから」
「○とか言うなし」
○ってなんだ? お洒落だと入らないぞ?
俺はあやぽんに引っ張られる様に買い物へ向かった。
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