すゞめの嘴

雪華すゝ゛め

夜の時間

 私が小学生の頃、親には「夜の時間」というものがあった。子供にそんな秘密を作ったら、何をしているんだろうと考えないわけにはいかない。

 私は布団の中で、頭を一生懸命に働かせて、大真面目に、夜の時間、親は二人で何をしているんだろうと考えていた。

 

 一つ目の説は一番簡単な、「テレビを見ていた。」説だ。あの頃の自分(今もそうだが)の暮らしの中心はテレビであった。だから、私が寝た後、二人でドラマを観ているんだと思った。

 

 二つ目が「プリキュアになっている。」説だ。まあ、あの頃の私にはプリキュアは神様だったから、無理もない想像だ。お母さんは私の変身ベルトを使って変身し、お父さんはお母さんを応援するカフェの店員になっているというものだ。

 そう思い始めると、不安で仕方なかった。お母さんはけがをしてはいまいか。しかし、なぜか私が変身して助けに行こうと思ったことは一度もない。


 三つ目は、「話し合い。」説。これは有力であった。「ヘンゼルとグレーテル」という物語の中心は、幼い私にとって「お菓子の家」ではなく、「親に森に置いて行かれる」だった。だから、親は私のことを捨てるんじゃないかとか、私が完全に寝た後に、布団ごとひっくり返して、翌朝私を叱る口実を作っているのではないか。(私は大変寝相が悪かったが、自分で動いたとは考えられず、親のせいにしていた。)と思った。

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