3話 殿下どうかされました?
2ヶ月が過ぎた。早いって。しかし、何も起きなかった。何も。
入学して直ぐのオリエンテーションのイベント。『ここどこ?迷っちゃった』ユウマ・ラースのイベントも、1週間後の新入生歓迎会パーティーの『何だか夢の世界みたい迷い込んじゃった?』ランフォンス・シーランのイベントも(よく迷っているな)無かった。そもそも、ユウマ・ラースがいない。なんで?
そして、いまだに主人公が謎なんです。金髪の女子生徒はいるんだけど、金髪だけじゃわからない。
大体、人族は金髪が多いのに、それだけの情報じゃわからない。聖魔術を使う生徒の噂も聞かない。もしかして、主人公もいない可能性が!
ルー様も会えなかったりするの?
はい。短い現実逃避でした。私の目の前にはキラキラエフェクト付きのランフォンス・シーラン殿下がいるのです。少し時間を戻しましょう。
私のイベント観察は全て惨敗しました。4回惨敗したところで、自らイベントを探しに行くのではなく、遭遇したらいいなに止めたのです。
何故なら所々でご馳走が転がっているではありませんか。
それは、この世界には誰にでも一人、
不審者Aで御家取り潰しされるより、隣の甘い果実の方がいいじゃないですか。なので危険な殿下には姿を見せないよう学園生活を楽しんでいたところです。
なのに、その殿下が私の前にいるのです。満面の笑みで、眩しすぎます。
私は只今、食堂で友人たちと昼食を取っていたのです。そしたら、いきなり殿下がいらして、『どうして私の番はいつまでたっても来てくれないのかな?』って言うんです。周りの友人たちを見渡せば皆さん壊れたロボットみたいに首を振っていて、首を傾げてしまいます。一体誰のことを指しているのか、さっぱりわかりません。
「君だよ。メリッサ・キティア嬢」
メリッサ・キティア。はい私の名前ですね。同姓同名がいなければ。
「私ですか?」
「あれ?こんなに番の絆があるのにわからない?」
番の絆?なにそれ。殿下からキラキラエフェクトが出ていているのは分かるけど、絆って何?首を傾げてしまいます。
「何かの間違いではないヒィ。」
「わからないなら。わかるまで教えてあげるよ。」
私メリッサ・キティアは笑顔なのに笑っていないランフォンス・シーラン殿下に強制連行されてしまいました。
はい。こちらメリッサです。ただいま王族専用のサロンに連行されてきました。
食堂で友人たちにSOSの信号を送ってみたのだけどだれも受け取ってくれなかったんです。
そして、なぜか私は殿下の膝の上に座っているのです。この光景、教室でも見たことあります。
番であるコートレス伯爵令嬢とユアース男爵子息のお二人です。まあ。お二人の場合は逆なんですけど。猫獣人のコートレス伯爵令嬢の膝の上にネズミ獣人のユアース男爵子息が座っている光景をよくみます。
コートレス伯爵令嬢が獲物を狙っているかのような目をしてユアース男爵子息を見ているので皆さんハラハラしながら見守っています。
「メリー。あーんして。」
現実逃避をしていると殿下からマカロンを食べさせられようとしています。そして、愛称で呼ばれています。
食べなければならないのでしょうか。
「メリー。お腹いっぱい?」
「胸がいっぱいです。」
「じゃ、食べれるよね。」
食べないといけないようです。羞恥心を押して一口パクリ。甘いのは分かるけど胸がいっぱいで美味しいかどうかわからない。殿下そんなに色気振り撒かないでください。
「明日から、教室が変わるからね。」
「え。」
いきなり何を言い出すんですか。まだ、2ヶ月しか経っていないのに、クラス替えがあるわけないじゃないですか。
「わからないって顔しているよね。番が絆されれば同じクラスになるって知らなかった?」
「殿下のクラス「ラン」」
被せてきた!
「ランって呼んで。殿下って他人行儀でしょ。」
他人だし。ヒィ。心の中を読まれているの?睨まないでよ。
「ラン様」
「なあに」
クッソ甘。言葉遣いが失礼しました。
「ラン様のクラスといえば上級貴族のクラスですよね。私なんかが行っても大丈夫なんですか。」
「私の番なんだから全然問題ないよ。」
それは殿下だけが問題ないだけではないでしょうか。
「もし、何かあれば死を望む程のことをしてあげるから、メリーは何も心配することはないよ。」
こわいこわい一体何をされてしまうんだろう。
そうして、私は殿下の膝の上で昼休みを終えたのでした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます