どうしてもネイリストになりたいので魔術師を目指します
mios
第1話 転生したら、男でした
学生の時からネイリストになりたくて、資格を取ったものの、就活に失敗し、派遣社員としてOLをしていた。
夢を諦めきれず、平日は会社で、週末は、雇われネイリストとして働きながらお金を貯め、ネイリストとして独り立ちするために、日々努力を怠らなかった。
間が悪いのか、運がないのか、私の美咲としての生涯は、ネイリストとして独立する寸前で途絶えた。
大型トラックを避けきれなくて。
即死だった。
失意の私の目の前に神様が現れた。新手の宗教かと思った。似たようなものだったけど。
神様は私に異世界転生させてあげる、と言った。
ああ、何か聞いたことあるなー。
小説でよくあるアレだね。
転生させてもらう身で誠に申し訳ないのだけど、ネイリストとして独立したいので、異世界ではなくて、現世が良いです。是非考え直してください。
神様は、めんどくさそうに言った。
行き先は変えられないけれど、ネイルらしきものはあるから、大丈夫だ、と。
ネイルらしきもの、って何。
後々遺恨が残るのは嫌なので、ちゃんと聞いておきたいのだけど。
私がなおも質問をすると、今度は映像で、見せてくれた。
なるほど、爪に絵が描かれている。この柄は何だろう。ピーコックでもないし、幾何学でもないし。
よし、わかりました。本当にあるのですね。再度念を押した。
では、お願いします。
こうして、私は異世界に生を授かることになった。
そして、今。
前世の記憶と共に、改めて自分の現状を知ることになる。
私は、異世界で、男の子だった。
目が覚めると、白い天井。
私を覗きこむ、小さな女の子。
あなた、だあれ?
「おかあたま、おにいたまおきたー」
バタバタと女の子は椅子から飛び降りて駆け出して行く。
しばらくして帰ってきたのは先程の小さな女の子ではなく、血相を変えた迫力のある美人が部屋に飛び込んで来た。
「ルイ、ああ、よかった…」
膝から崩れ落ちそうになり、周りに支えられたこの美人は、どうやら私の母のようだ。
私より少し大きな男の子が、母の横を器用にすり抜けて、私の頭を撫でてくれる。これが、私の兄、長男のセシル。
後から現れてわんわん泣いて謝っているのは、私の2番目の兄、マシュー。
どうやら彼のせいで私は怪我を負ったようだ。
私はこの家の三男だった。
そして、さっき母を呼びに駆け出していったのは、長女のアデル。末っ子。
そして私は、美咲からルイとして、生きていくことになった。
どうやら、マシューの話から、マシューと遊んでたルイは、足を踏み外し木から落ちそうになったマシューを助けようと下敷きになったそうだ。
マシューは鈍臭いキャラなのかな。
「心配かけて、ごめんなさい。」
早めに謝ってしまおう。
ぺこりと頭を下げる。
母が驚いている。
「おにいたまが、おかしくなったー」
アデルが騒いでいる。
失礼な。
セシルも、戸惑っていたが、ゆっくり休め、と言っただけだった。
謝っただけで、この驚かれようとは。
至急、私はルイについて知らなければならない、と気を引き締めた。
ルイについて、私が知っていること。
・伯爵家三男
・性格はおっとりしている
・おっちょこちょい
・後先考えず行動する
・話下手
・家族と仲がよい
あ、あと家族だけでなく、使用人とも仲が良い。特に庭師のズールさん、と言うお爺さんとは、植物談義をしたりしているようで、私も、この世界の植物について詳しくなった。
この世界について、もっと知りたい私は図書館に行きたいと父に言った。
父は伯爵ですが、元々は宮廷で研究者として働いていた。
爵位も父の兄が継ぐはずだったが、不慮の事故で帰らぬ人となり、父が研究者を辞めて伯爵を継いだのだった。
図書館は前世と比べて、敷居が高く、庶民は利用できない。
しかも、王宮の図書館は、伯爵位以上しか、利用ができないので、父と一緒にでなければ、入ることすら不可能だった。
急に図書館に興味を持った息子に対して不思議には思ったようだが、深く聞かず、連れて行ってくれた。
私はこの国のこと、ネイルのことを知りたかった。
この国のことに関する本はたくさんあり、5歳児の頭に詰めるだけ詰めて、わからないことは父に聞いて、知識を得て行った。
ただ、ネイルのことは全くわからない。本は、とりあえず国の歴史が書いてある本を借りた。父にまた連れてきてくれるようにお願いもした。
もしかして探すところが違うのかと思い、次の機会に、と思ったのだ。
神様はあのとき、何と言ったか。
ネイルのようなものはある。
と言うことは、私が知っているネイルのあり方とはちがうのかも。
考えてもわからない。私は今日借りた本を読むことにした。
この国の生い立ち、とか興味深いことがたくさん書いてある。読み物としても、歴史書は面白い。
昔あった戦争とか、この地方にしか生息していない、動物や植物など。読み進めていくうちに、どんどん知識欲が高まって、楽しくなってきた。
こういう何かをたくさん知りたい、突き詰めたい欲求は、ルイ自身の血によるものか。父の血なのか、それとも美咲?
ページをめくっていくと、ふと紋様みたいなものを見つけた。
魔術師による魔法陣とある。
あれ、これ何か見たことあるな。
神様に見せてもらった映像にあった。
爪に黒で、何か模様を書いているような。
…これ?
これが、ネイルのようなもの、の正体?
これ、爪だよね。
難しい顔をして、本とにらめっこしていた私は、部屋に入ってきたセシルに気がつかなかった。
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