78、一緒にエッチなビデオを見ている


 一体何が起きているのか分からない。

 なぜか今、二葉先輩と一緒にエッチなビデオを見ている。


『やぁー、あんあん』


 画面いっぱいにエッチな映像が映し出されている。


 まさか家のリビングのテレビで、こんなものを見るとは思わなかった。心の置きどころが分からない。


「……は、はわぁ……」


 二葉先輩は怖い映画でも見るみたいに、顔を両手で覆いながら画面に目をやっていた。


「う、うひゃあ……な、何あれ?」


「あれは、まっさーじきだと思います」


「ま。マッサージ器? 何であんなところに……」


 何とコメントして良いのかわからない。

 下着の上からマッサージ器を押し当てられた女の人は、アンアンとあえぎ始めた。


「……えぇ、どういうことなの」


「何なんでしょう」


「え、エッチなビデオは、間違った性知識だってネットで見た」


「俺もそう思います」


 先輩はその後も「うひゃあ」と声をあげながら、テレビ画面に見入っていた。


 めちゃくちゃ凝視しているじゃないか。多分、二葉先輩は、この手の映像を見たことがないのかもしれない。


 それにしても俺はどうすれば良いんだ。


 悩んでいる間にもエッチなビデオは、どんどんとエッチな方向に進んでいく。


『ほら、もうこんなになってるじゃないか』


『や、やだぁ。み、見ないで』


『ほらも、乳首もこんなに』


『きゃ……』


 男優が下着を脱がす。


 でかい。


「う、うわぁ、おおき……」


 先輩が目を覆いながら、ため息をつく。


「……ああいうのが好きなんだね」


「本当に、俺のじゃなくて」


「う、嘘は良いんだよ。すごく大事そうに閉まってあったからね。わたし分かっちゃったんだから」


 スルスルと伸びてきた手が、俺の手をにぎった。緊張したように、彼女がギュッと強く力を入れるのも分かった。


 心臓がばくばく言っている。


「……それにしても、す、すごいねぇ……」


 喉がカラカラだ。


 頭がおかしくなる。


 このまま二葉先輩と、エッチなビデオを見続けて良いんだろうか。いろいろ限界が迫ってきている。


 二葉先輩は何を考えているんだろう。

 俺の手を握って、テレビ画面に見入る彼女が、何を考えているか分からない。


『クチュクチュ』


 画面の中ではキスが始まった。舌をべろりと突き出して、濃厚なキスをしている。


「わ、わぁ……」


 先輩が驚いたように声をあげる。


 とんでもなくエロくキスを交わすシーンに、彼女は言葉もなく見入っていた。


「な、なんか」


 手に込められた力は強かった。 


「す……すごいチューだね」


 上目づかいでこっちを見ながら、先輩は言った。 


 もう何も言えなかった。


「……先輩」


 彼女の身体を、ギュッと抱き寄せて、俺はチューをしてしまった。

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