第38話 Sandwiches

「実は私、お弁当を作って参りました。」


友梨佳ゆりかは右手に持ったバスケットを御門みかどに見える様にかかげると、にこやかに宣言した。


友梨佳ゆりか持参じさんしたのは、お弁当の定番であるサンドイッチだ。


「へえー、お弁当か・・・蘭堂らんどうさんは料理も出来るんだね。」


「いえ、料理が出来るなんて、そんな事ありませんわ。」


友梨佳ゆりかの返答にうそはない。


今まで、お弁当を作る必要など無かった友梨佳ゆりかにとって、これが初めて作ったお弁当である。


実際には母にサンドイッチ作りの特訓をしてもらったのだが、彼には内緒だ。


それでも当日は失敗し、材料をだいぶ無駄にしてしまったが、味見をしてもらった母に、何とか合格点をもらう事が出来た。


友梨佳ゆりかにとっては、まさに苦労の結晶である。


蘭堂らんどうさんの手作り弁当か・・・それは楽しみだね。」


「本当に大したものではありませんので、あまり期待なさらないで下さい。」


「この近くでお弁当を開ける所って、どこかあるかな・・・そうだ!どうせなら家に来ないか?」


御門みかどさんの家ですか?」


「うん。結局この前は色々あって作品を見せる事が出来なかったからね。今日、約束を果たすよ。」


御門みかどの提案を聞いた友梨佳ゆりかの表情がわずかにくもる。


「ありがたいお話ですが、私がいきなりおうかがいしたら、ご家族に迷惑が掛かかるのではないでしょうか?」


友梨佳ゆりかの言う『ご家族』とは、鷹飼美野里たかがいみのりほかならない。


それをさっした御門みかどは、彼女の心配をのぞく。


「大丈夫。妹は今日、夜まで家に帰って来ないよ。」

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