妹キャンバス

第7話 My sister's troubles

「蘭堂友梨佳（らんどうゆりか）？」

「そう」

「その娘（こ）がやたらとお前に突（つ）っかかってくると。」

「そう」

「友達なのか？」

「全然。それなのに何かと言うと私の事を貧乳呼ばわりするのですよ。」

「Ｂカップは別に貧乳じゃないと思うぞ？」

「・・・何で兄さんが私の胸のサイズを知ってるんですか？シバきますよ。」

なぐさめたつもりがヤブヘビである。

俺は慌（あわ）てて話を元に戻そうとする。

「そ、それはけしからん奴（やつ）だな。しかしそんな風に言うって事は、その娘（こ）はスタイルがいいのか？」

「・・・まあDカップ以上はあるでしょうね、多分」

妹は不機嫌（ふきげん）そうに認（みと）める。

「お前も我慢（がまん）しないで、言い返せばいいじゃないか。」

「無理ですよ・・・取り巻きの連中もいるし、兄さんが考えるほど簡単じゃないんです。」

誰かに話す事で少し気が晴れたのだろうか、制服のままの妹は着替えるため、自分の部屋に戻っていった。

俺は蘭堂友梨佳（らんどうゆりか）という名前に何となく聞き覚えがあったのだが、それが誰なのかまでは思い出す事が出来なかった。

妹の通（かよ）っている学校はいわゆる名門女子校であり、妹は高校からの編入組（へんにゅうぐみ）だ。

この学校に高校から編入（へんにゅう）するためには、偏差値（へんさち）73は必要であり、相当高いハードルと言える。

一方、生徒の大部分（だいぶぶん）を占（し）めるのは校内で「内進組（ないしんぐみ）」と呼ばれる小中からの内部進学者（ないぶしんがくしゃ）たちだ。

平均的（へいきんてき）な成績（せいせき）は編入組（へんにゅうぐみ）の方が明らかに勝（まさ）っており、家柄的（いえがらてき）にアッパークラスが多いのは内進組（ないしんぐみ）だ。

そのため同じ学校の生徒と言っても編入組（へんにゅう）と内進組（ないしんぐみ）の間には見えない壁があり、独特（どくとく）の緊張関係（きんちょうかんけい）が存在するらしい。

そんな中でも妹は内進組（ないしんぐみ）の生徒とも積極的（せっきょくてき）に仲良くし、編入組（へんにゅうぐみ）だけでなく内進組（ないしんぐみ）からも人望（じんぼう）があるようだ。

しかし内進組（ないしんぐみ）の中には、それを快（こころよ）く思わない生徒もいるらしい。

彼女たちにとって妹のような編入組（へんにゅうぐみ）は、自分たちの仲間などではなく、あくまで「よそ者」なのだ。

俺にはよく分からない世界だが、妹は入学以来、そんな不文律（ふぶんりつ）のような校内差別（こうないさべつ）と闘（たたか）っている。

ただ、妹が現在悩んでいる事だけは、俺にも理解できた。

『そうか、可哀（かわい）そうにな。全てはお前の胸がＢカップである事が原因だ。ここは兄が一肌（ひとはだ）脱（ぬ）ぐしかあるまい。』

こうして美野里（みのり）にとって大変迷惑（たいへんめいわく）な計画、名付けて「妹Dカップ計画」が始まるのだった。