第25話 従属魔法

『しょうがないわね。そういえばリリーア、従属関係っていいと思わない?』 

 『何?まさか、アルを従属させる気?』


 バッ


 リリーアは俺を守る様に前に出た。俺はこれ以上は殺傷行為自体はダメだ。言葉一つですべて終わる、ゴブリンがいない上でクロスボウの抑止力があるが交渉もまだ相手に優位がある状況だ。リリーアはさっき魔力は無いのに何で前にと思ったが…


 ブワッ バサァー


 急に叫んだリリーアの様子を見ると変化が起きていた。


 髪の毛がピンクと紫色の中間の色になり、悪魔の様な翼が生えた。全身に変化が起きていた。というか若干大人びた感じだ。


 『一人にしないでよ!!お父さん、お母さん…アル!みんなどこいったの…何で私を置いて行くの。何で誰も見てくれないの?何で何で何で何で何で何で何で』


 『あはは♡、へぇ~魔力を無理矢理取り込んでるし、視界にそこの男にいないだけで壊れちゃう寸前かな。―!思いついちゃった。出来損ないのサキュバスをもっと苦しめないとね~。ねぇ隠れてる人、男の子の動かないようにしてね。』

『ゴメン、”動かないで”』

 『さてと…リリーアこっち見てよ。』

『アル何で?何で?何で?やぁだぁ~』

 『何でって、あんたが呪われ、愛されないの~♡ほら~♡』


 ダキッ


 メスガキサキュバスが腕に抱き着いてくる。もう一人の子は何か準備をしていた。


『嫌がらないでしょ♡リリーア』

 『……』

「へぇ~…いや、何をするんだ?」

 『んー教えて欲しい?見せつける意味でも教えてあ・げ・る♡従属魔法っていうのはサキュバスの持つ特有の魔法でね。命令形式なんだけど能力を強化した上で行動してくれるの。それを使ってご飯を集めたりとか色々ね。好意なんかもね、その掛けた本人を中心に考えるようになるって感じ…だ・か・ら彼女はアルを取られるって感情的になったんだね。』

「そうか。」

 『他人事って感じだけど君が当事者なんだけど…』

「リリーアを何でここまでして連れ戻すんだ。」


 リリーアの事を知るメリットの方が大きいので態度を軟化させていく。


 『特別に、インキュバス様はリリーアを使って子孫を増やそうとしてるみたい。』

「何か気に触って逃げたように聞いたぞリリーアから逆にリリーアじゃなければダメなのか。」

 『それは分からないけどお気に入りのね。あの方の愛人は私以外いないわ。』


『ほらぁ、出た♡サリアのいつもの、あんな風に積極的に行かないと取られちゃうかも。さてサリア、そろそろ掛けて私はゴブリンに使ったから…貴方の番よ。』ばっ


 メスガキサキュバスは離れ、サリアと対峙する。体は依然動けないまま…


『これで、リリーアを取り戻せるわ。ここまで不安定な心にして彼に依存させたし。何もできないようにって言われたし。ごめんね、リリーア。』

 『魔力は十分、従属魔法は先に掛けた方が優先されるけど…ずっとそばにいる為には…。』

『色恋を信じ、あらゆる愛を受け入れ、共に支え合い『全部詠唱する必要ないわよね。フルチャーム』


 リリーア…詠唱をして発動させようとしているが間に合わず詠唱を省略したサリアが発動した。


 ピキーン バリン


『はっ何で?まあいいわ。私も詠唱するまでよ。私の目を見てなさい、『ともに心を通わせあっ…』


 リリーアは目開け、見ると瞳がハートになった。


 『……”ウゴ”』

『まぁ、約束は叶えて・あ・げ・る♡から裏切らないの。ワタシニハンパツスルトワカルワヨネ』


 ピカーッ


 リリーアの地面に怪しい紫の光と共に魔法陣が出現する。


 「魔法陣?」

『いや、淫紋の授ける儀式よ。私のここを見て、可愛いでしょ♡』


 胸元にピンク色の紋様がある。


『私のこれはね。精気を本気で摂取しようとすると人間の方が付いてこれなくなっちゃって死んじゃうからってので普通の食事からも摂取できる淫紋ね。』

 『厳密には違う。』

『まあ、どうでもいいでしょ♡』

 『…ヨクナイ』


 無口な子は学んだ事を大切にしている所を見るに真面目な無口な子ランクアップした。

 お腹当たりが急にピンク色の小さな紋様が現れた。


 『……あっうぅ~///…』

『異性に対しての精気収集と魔力変換の能力強化の淫紋、彼がリリーアに施そうとした物よ。』


 リリーアは、意図的にチラチラこっちを見て俯き、顔も真っ赤になりゆでたまご状態になった。


 バタン  タッタッタッ


 「っ―――?!ちょ…いきなりどうした?」

『んぅーすぅ、信じ…歩み……ふぅ』ギュウ


 リリーアが抱き着いて来た。

 

『あぁ、なるほど魔力の枯渇時に欲情しやすくなるものね。』

 『発情。でも、強引すぎるから…流石に殺すのは…』

『知ってる。でも彼に最も従順で優秀なサリアが従属魔法を掛け終われば問題ないわ。』


 まるで小さなリスの小動物のようで可愛らしく、庇護欲が駆り立てられる姿でまとわりつかれてる状態である。というより、リーズの姿と被るせいで力ずくというのが取りづらいのだ。


 しかし、アルもここまで近寄られると突き放そうとする。


 バッ

 

『やだぁ~♡いかないでよ///』

 「ぐっ……(やべっ、めっちゃ声刺さった…)」

『さぁて、試して見ましょう♡リリーア、従属魔法を掛けるための魔力足りてないでしょ。良い物かけてあげるわ。』


 『ヒート』


 リリーアを突き放してる手が…熱い…というか、手汗かくレベルだ。


『っ――――?!?!!!///』


 クンクン クンクン


 『あぁいい匂い、ペロッ///はぁ、おいし…もっと~ぉ~♡』

「汗舐めんな、離れろ。」


 暑いから突き放そうとしても完全にくっつき虫状態なので離れない。


 『リリーアさ、お願いすればずーっと一緒に入れる魔法の言葉あるの。従属魔法ってさ、全部魔力も乗せて言うといいらしいよ。じゃないと化け物って言った彼の物になるよ。』

『ねぇ、アル……私、ずーっと傍にいて、何でも言う事聞くから…』

 『魔力枯渇状態になった。術式発動♡』

『『フルチャーム』』


ピキーーン


『へっ、えっ何、白いひか…』


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 ……ここは、あぁそうだ。

月曜日か、会社に行かないとなぁ。


 『この仕事お願いね~…』『ここはこうしてこうすれば』


 初めのうちって何でも楽しく感じていた。ゲームでも成長してるという実感が大好きだった。


 普通の日常が続いていた。でも、それは成長していると感じている自己満足にしか過ぎなかった。

 空虚な成長を感じ満足していた、でもそれはいつしか壊れる体の衰えだ。デスクワーク…一日中そういう作業していたら、体力は少しずつ、体も少しずつ弱くなっていた。それだけならまだよかったと思う。


 それは、1年後に起こる、疫病が発生した。情報も錯綜し、将来の希望がなくなった。

 本当に不安な気持ちが出てくると、耐えるか、引くか、守り切るか。


 

 不安はいつしか心を蝕む…色んなことを考えたがまずは状況や不安を相談した。


 『3年もすれば収まる、大丈夫だ。まだそういう時じゃない。』


 その言葉を信じた。耐えるという、何もやらないという理由付けにしてしまった。後悔した所で自己責任なわけだ。責任を問う事なんてできない、空虚な成長を無くせば自分を維持する事なんてできるわけないからだ。


 あまりに不安が強すぎた時に転職とかも考えた。ただ、運が良かったのか一発で今の会社に内定してしまった。だから転職に失敗した。 

 とにかく、実績を作りたかったが…ノウハウがなかった。


 この時自分に絶望したが、仕事が忙しくなった。日常が戻って来ると思った。

 本を読んで知識だけは行動が伴わなければ意味ないという、この事実は変わらなかった、ある出来事が起った後に深く刺さる事になるのはまだ知らなかった。




 ある出来事が起こる前…


 幸せって何なんだろうと考えるようになったり、知識が増えた分色んなことを考えるようになった。


 挑戦自体はして失敗した…自分はとにかく守り、周りに迷惑をかけず最低限のコストで満足できる生活というのが答えだった。もちろん、過去の幸せを目指したくもあった。結婚していちゃラブして子供作って、それを見ながらのんびり生活するようなを目指したくもあったが…時間が経つにつれ、何も実績を作れず。社会人になってからの成功経験が極限なまでになくなり、自信がなくなったいやな諦めるという結果が答えになった。


 恐らく、自分の嫌な部分を…自分が無能である事を知ってしまった。だからこそ、いつしか自己中にならざる負えない状況にコミュ力自体も低くなって、一人ごとを言うくらい…手が付けられない状態になっていた。最悪を考える事になる切っ掛けができた。


 もう空っぽだった。AIに不足している能力を補って貰いたかったぐらいまでであった。

 昔の方が体の衰えが無い自分に嫉妬し、過去の成功していた自分を思い出すたびに、自己中、無謀、無能と思えてしまってた。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 思い出した、今ならやり直しができる。もう自分に対する優しさなんぞ捨てる、とにかく時間を有効活用しなければ…だって将来老いたら無能になるかもしれない。それなら一気に成長して全体の能力を維持しながら選択と集中ができる。それは、過去に考えてた幸せを実現できるかもしれないんだ。


『一体何が起きたのよ。ってえぇぇぇぇ~!!!』

 『何で、何でそうなるの?』

『???』


『アル?…ん?あっ///』

 「ってアレ?どうなってんの?」


 『なんっで!!!リリーアの方がフルチャーム掛かってるのよ。おかしいじゃない!!!』

『教え方が悪かったんでしょ……多分…』

 『そんな事……普通起きない。?!あなたも?』


 急に叫び出して、会話のテンションの温度差とかも出てきて、状況がよく分からなくなっていた。


 門限守ってないから今後森には入れなくなる方がヤバいし、森の恵みを知ったりサバイバルの知識を身に着けられる所だ。急いで帰らないと……リリーアに目線が合う。ただ、目の前にいる女の子を手が届くなら助けたいが…とりあえず逃げたい、今は空飛べる相手と魔法を使ったアウトレンジに魅了がただただヤバイから。


 「リリーア、今なら逃げれるから」

『やだぁ///離れたくない。お願い…』


 ド…キュン


 さっきも刺さった…捨てちゃだめだ。…もういいや、連れて行こう。色んな問題なんて大人という家族に押し付けてでもだ。


 「分かった。首に手をまわして…」

『ふぇ??!?!』スッ

 「思いの外軽いな。よいしょ」

『///すんすん、ふぅ…』


 タッタッ


 そういえば、帰るのが遅くなった理由とこの子の説明どうしよう。そのまま話せばいいか。

 行動が飛び飛びで吹っ飛び過ぎて信じてもらえないだろうな。

 リリーアに説明お願いしよう。補足で俺が蛇足で情報入れまくればなんとかなるでしょ。

 ここを離れる寸前だった。


 パサッパサッ


『あなた、どうして私が従属魔法に掛かってるのよ。まさかリリーアが何かしたっていうの?その状態で?』

 『……分からないよ。サリア、だって私も掛ってるんだよ♡。』


『なら都合が良いわ♡』

 『サリアに命令しなさい。魔法を使うなと…そして自分の居場所に帰りなさい、それであなたへの命令は終わり。』


 ぁ…



 半分以上進んだものの少し休憩。


 「はぁ…はぁ…走るとかやった事ないけど疲れるな。うぉ」


 ペロッ


 『ん…おいし///』

「だから…舐めんな。」

 『お花の蜜みたいな味で美味しいんだもん。ねぇ、アル』

「発情って治せるの?」

 『舐めたら少し収まったかも?さっきよりも無くなってる。』

「あれ、よく見たらが戻ってるな…髪色。」

 『多分、枯渇するとサキュバスの魔力が宿るって聞いた。』

「何でもない。はぁ、いくぞ」

 『待って、アル』

「サリアを助けて欲しいの。魔法使えないから、もしゴブリンに襲われたら戦えないから。」

 『……』

「?…寝てる。」


 寝ると人の体は重くなるし、仮眠というわけか…。さすがにリリーアを背負いながら森を抜けるのはキツイか。茂みの間に隠すようにリリーアを置いてサリアを助ける。


『キャアーーーー』


 家帰ったらすぐ寝たかったなぁと少しでも早くついて許してもらおうっとポジティブに考えながら、言い訳考えよ。でも助けに行くか、クロスボウ数発撃てば引くやろ相手もバカじゃないだろうし。


 ガサッ ザッ カチャ


 茂みから森で暗いし視界も悪いが派手な髪色が見える。横にスッーっと移動しているため声の方向も分かってたのが大きいけど…


 遠距離からできる事だけをした、サリアには少なくともバレない形だけどな。それだけをして戻ってきた。


 『くぅ~くぅ~…』


 寝てる…起こすのもアレだよな。はぁ


「まあいいや、抱っこに変えて行こ。」


 家に着く。


 ガチャ

 

「ただいま~…遅くなってごめん」

 『ア~ル、しんぱ……その子どうしたの?!ってサキュバス?』

「えっと……色々あって~オナカ、スイタカラゴハンタベタイナー」

 『そう。何でその子の服ボロボロなの?』ジー

「えっ、ゴブリンに襲われてたから?それよりご飯…」

 『何か隠してるでしょ。全部言うまでご飯抜きよ。』 


 誤魔化せなかった。orz

 軽く流れを話していた。複数のゴブリンに出会って所辺りでお父さんを探しに行った、お父さんが戻って来ると殴られてた。


何で?!


 リリーアを俺のベットで寝かせてた。


 『んぅ~う~ん、ここどこ?』キョロキョロ

「落ち着いて聞いてくだ…じゃない……おはよう?ここは俺の家の部屋だよ」

 『そっか。あっ///えっと?不束者ですが?よろしくお願いしましゅ?』

『まだ眠そうね。そこにアルのお古の服があるから着てから、リビングに来てね。』


 俺の服でも絵になるもんだなぁ。俺が着てる時のイメージ違うわ。


『自己紹介しましょうか、私はアルの母のセーラね。そこにいるのが父のギルバードね。』

 『リリーア…リリーア・エルフィールです。』


 くぅ~

 

 りんごの様に真っ赤になって、顔をすぐに隠していた。


 『一旦、ご飯にしましょうか。』

『はい…お願いします…』


 ご飯を食べた後、ちょっと寝るには早いが眠い


 『えっと…私は、母と父が死んじゃって…老衰でなくなるさきゅばすが多かったから両親が呪われてる…って…エグッ、それで私は呪いの子って呼ばれて逃げ出して…ヒッグ…』


 ナデナデ ダキッ


『大丈夫よ…「うんうん」』

 『アルが私を見つけて襲ってくわけでもなく、温かいご飯くれたの。呪いの子として見てなくて…でも、この日しか会えないと思った。アルと別れた後、昔のお友達とゴブリン?連れてきて、襲ってきてもう無理って思った時にアルが助けてくれたの。そこからの記憶があいまいだけど……///発情して…襲っち』

『ちょ、ちょっと…。アル…さっき話さなかったわよね。』

 「軽く話しただけ、というか意味わからん状況だったし。」

『アルは悪くないよ。呪いの子の私が悪い。』

 『確かに、色々とサキュバスとかの知識がない。アルがわけわからなくなるわけね。』

『だからって、さっき殴る事ないだろ。』

 『ふぁーあぁ』

 『まだまだ育ち盛りだし、一旦お開きにして続きは明日聞くわ。』


 ガミガミ ギャギャ―


「『すぅー……すぅ~…くぅ……』」


 その後、眠りの世界に入ったのであった。


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