「ただいまあ」


僕の旅が終わった。


だから帰ってきた。


故郷に帰ってきた。


愛する故郷へ。


色んな人と出会い。別れた。


伝説の龍とも会ってきた。


旅の目的を果たしたのだ。


後は無事に家に帰るだけだった。


早く会いたいな、愛する家族の元へ。


故郷の風はやっぱり氣持ちがよかった。


自然が生き生きとしていた。


あるがままに。


動物たちも僕が帰ってきたのを遠目に眺めている。


「おーい!」


とこちらを見ているうさぎに手を振るとサッとどこかへ行ってしまった。


僕はしばらく手を上げたまま時を止めていた。


すこし寂しかった。


故郷の森を久しぶりにぶらぶらと歩いた。


鳥のさえずり。


僕の出迎えをしてくれたのかな。


ちょっぴり元気になった。


目の前に大きな、大きな木があった。


故郷の森の主さまだ。


「主さま、ただいま」


ぼくは硬い肌に手を当ててそう言った。


ざああああああと梢が風に揺れている。


「あはは、ありがとう」


少し歩くと家があった。


僕の家だ。


やっとついた。


やっと母さんに会える。


父さんにも、兄さんにも、妹にも。


家はいつもどおり、ツタに覆われていた。


「変わんないなあ、みんなも相変わらずかな」


木でできたドアをギイと押し開けた。


これもいつもどおり。


変わんないな。


懐かしいな、もう三年ぶりくらいになる。


僕は家の中に響くように大きな声で言った。


家の中はしんと静まりかえっていた。


薄暗い家の中は汚くよごれていた。


「みんなあ帰ったよお!」


リビングのテーブルに腰掛けている母さんを見た。


「母さんただいまあ」


僕は母さんをだきしめた。


母さんの頭ががっくりと僕の肩に乗っかる。


離れると母さんの頭は横に倒れていた。


次は、ソファに座っている父さんにも抱きついた。


腕が落ちた。


三年会っていなかったからしょうがないだろう。


後でくっつけてあげよう。


駆け足で、二階へ続く階段を上がった。


ベッキ!


段の木が折れた。


脚がはまった。


「ありゃりゃ」


ズボン破けちゃった。


ギギギと引っかかる音をだしながら、僕は脚を穴から抜いた。


ガチャリ、


「帰ったよ!兄さん!妹!」


椅子に首の落ちた兄さんと床にグッタリとなっている妹がいた。


はぐを二人と済ませた後、僕はベッドに腰を下ろした。


「帰ってこられてよかったあ、とりあえず寝よう」


ゆっくりと僕は目を閉じた。


家には人形しかいなかった。

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