9、
そしてとうとう姉は完全にわたしの呪いを解く呪文を言う。
「あなたって、なんて運のいい子なの。ずっと思っていたけど我が妹ながら、あなたには本当にかなわないわ!」
その途端、わたしが自分にかけていた運の悪いヤツという呪縛から完全に抜け出したのである。
姉と比べられることでわたしは自分を運の悪い女だと思っていた。
姉はそのわたしを運のいい子だという。
それは本心からでた言葉。
姉妹は互いに、ないものねだりだったのだ。
姉は姉。
わたしはわたしでいいじゃない?
そう思うと世界が違ってみえたのだった。
彼は一流大学に進み、わたしは私立の大学だったけれどずっと付き合いは続く。
美貌の姉は、告白され付き合っては別れることを繰り返している。
姉が付き合ってきたのは、誰もが知る実業家だったり、俳優だったり、医者だったり。
とても普通の女子では手がとどかないどこで知り合うのか想像もつかない大物たちばかりだった。
「でも、本当の自分のことは見てもらえていないから別れるの。まるごと受け止められているさくらが本当にうらやましいわ。わたしほど男運の悪い女はいないかもしれない、、、」
姉の最近の口癖である。
どちらが運がいいのか悪いのか。
姉の男運の悪さを解く呪文はなんなのか。
それをじっくりと考えようと思う。
彼はわたしに特別にプレゼントしたいものがあると言っている。
こじゃれたレストランも予約をしてくれている。
わたしは彼に捕まえられて、世界一運のいい女となったのだった。
完
世界一運の悪い女 藤雪花 @fujiyuki_hana
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