星の一粒

新浜 星路

夜の美術館

優しい気持ちにさせてくれるのはいつだったろう。

夜空を見上げてそう思った。

澄んだ夜空のクロッキーは夏の大三角を描いていた。

白く光る様があまりにも眩すぎて僕の目には涙が横切った。

鈴虫の鳴き声が冷たい風と共に囁いた。

突然、僕はこれが見たくなった。仕事で働き詰めで上司には叱られ、後輩には

バカにされ、居場所もなくなった僕は、仕事を早く終え、この場所にきた。

息を切らして来たそこは夜の美術館。静寂が支配し、虫が音を奏で、風がタクトを振る。

水や木や果実の匂いに敷つめらられたそこは舞台。芝生は僕専用指定席だった。

ここは僕の気持ちをすべて浄化してまた頑張る気持ちをくれる。

どれぐらいの時間が経ったろう。

突然聴き慣れた電子音が鳴り、僕はスマホを取り出した。

嫁からだった。

「今日のご飯は何がいい?」

「肉じゃががいいな」

「わかった、すぐ帰ってきてね」

「うん、帰るよ」

美術館の閉館時間がやってきたみたいだ。

さあ、帰ろう。

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