No.3 Frohes neues Jahr!
ドイツの年越し、ジルベスター。それ自体を知ってはいたが、やはり直に見たのは新鮮だった。
勤勉なドイツ市民の一年に一度の国全体の大騒ぎ。他の期間では購入できない花火や爆竹を使う事ができたり、ジルベスター・コンツェルトと称しクラシック音楽のコンサートが開かれたりと、ドイツでの大きなイベントだ。
そうめでたい日なのだが、良いことばかりでは無い。日頃の鬱憤を晴らす為か、昨夜の光景からも分かる様に危険な行動をとってしまう者も少なくない。打ち上げ型の花火なのだが、それを真上の空にあげずに家屋にぶち撒けたり、ビール瓶を上にぶん投げて落下した地点にいた哀れな被害者の脳天に直撃したりと…。
そんなこともあり、年越し、明けは警察の仕事が増える。暴行事件や火事等、色んな事もあるもんだ。
さて、着いたついた。Schmidt(シュミット)さん宅だ。ベルを鳴らし、入れてもらう。
「Frohes neues Jahr (あけましておめでとう)シュミットさん。」
「こちらこそFrohes neues Jahr、D.M.さん。」
警官のベン(Ben)さんももう来ている。
「Frohes neues Jahr (あけましておめでとう)ベンさん。」
「こちらこそFrohes neues Jahr。」
「それで、これですか。」
「はい。あなたの言う通りだった。」
木の板に不自然な焦げ跡がある。とは言え、計画通りなのだが。
「動画は、撮れましたか?」
「はい。」とシュミットさんは答えてから、スマートフォンで撮影した動画を見せてくれた。夜中の道に不自然な複数の輝点。
「それでは、行きましょうか。」
「こちらで応援呼んでおきますね。」
そう言って、目的地に向かう。
数日前のこと、アレックスとこの近くを歩いていた所で、妙な物を見つけた。
上の方を見ていたら、所々で光る何かがある事に気がついた。よーく見てみたら小さい鏡らしい。普通に歩いているだけじゃ見つけられない様な位置にあった。しかもそれは多数ある様だった。
そこでもう気がついた。念のために周り全体を見てみた所、沢山の箇所にも同様に鏡がある。だいたいそこで詳しい事は予測できた。
この周辺の地図は頭に入っていたので、後は照らし合わせ、計算するだけだった。鏡の大きさ、向き、位置。完璧だった。
そこで誰が犯人になり得て、誰が被害者になりえるかも手にとる様に分かった。
それから警察に行き、自分の考えを話した所、一人の警官(ベン)を僕のバディとして用意してくれた。
さて、逃げる準備は整った。
だが、肝心の鏡が回収出来ていない。あれは絶対に回収せねばならない。
油断していた。バレないと思って素手で鏡を設置してしまっていた。
あれが回収されればもう終わりだ…指紋認証でバレる…
ドアベルの音が鳴った。
…まさか、な。
恐る恐るドアに向かい、ドア穴からドアの向こう側を覗いた。ベン君だ。友人が新年の来訪かな…?一応彼は警察官だ。しかし、今は私服みたいだ。事件の事では無い…か?
それと、子供を連れている。インド人っぽいが、この子は何なんだ…?
仕方ない、ここで出ないのもそれはそれで疑われる。不自然な態度をとってはいけない…。そうして、出来るだけ自然な立ち振る舞いで彼らを迎えよう。
「Frohes neues Jahr!」
「ただいま〜」
「あら、おかえり。ホテルの一室だけど。それで、どんな事があったの?」
「あぁ、食事の時に詳しく話すが、要するに放火殺人未遂犯を捕まえた。」
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