トーキョーにて、狂戯劇、開幕。


 日本時刻、午後一一時五八分、東京。


 溢れかえっているはずのあの人々が、いない。誰もが、家でぬくぬく籠っている。

 

 日本の都市、トーキョーを、世界中の人々がネット中継や動画サイト等を介して見守っている。ジャパニーズ・シブヤ・ハロウィンなんかじゃない。それよりも狂気的な物だ。


 「地球」という檻の中にいる誰もが続くと思っていた「いつもの生活」が、今、崩れようとしているのだ。

 それを防ぐためか、流星群の様に現れた一三×二人の使徒たちが今、二組に分かれてビルの上に立っている。


 肌を指す様な風が吹いている。日本の年越しはとても厳しい。

 悲しさは無い。そこにあるのは希望か…それとも。

 もうじき時が来る。


 「彼ら」は黙って夜空を見上げている。


 なんとも!「彼ら」は成年にも満たない者しか居ない!大きな改革だと言うのに大人一人いない!いや、いらないのか。

 世の中はこれから加速していく。付いていけない形だけの『大人』は邪魔なだけだ。


 そう。


 これからこの世界の人々の命、そして「彼ら」の命が賭かったグローバリー・ルネサンス・ゲームが始まる。


 指揮者の準備はできている。この狂った楽章を。


 ゲームスタートまで、


拾、玖、捌、七、陸、伍、


 「「行くぞ!」」

 各チームのリーダーの鬨の声に他が喊声を上げる。


肆、参、弐、壱、


 「「開始!」」とまた叫ぶ。


 零。


 ごうんと鐘の音が空から響く。

 そのとたんに空に亀裂が入り、穴が開く。 

 その中から「何か」が栓を切ったようにどばどばと出てくる。

 世界中の人々が驚きと恐怖の声をあげる。


 人か?獣か?はたまた悪魔か?そんな事分からない。

 それでも、「彼ら」は恐れていなかった。

 それどころか、「魔人」の元へ飛び込んでいく。

 ある者は舞姫のごとく「魔人」の攻撃をしなやかにくぐり抜け、鮮やかに魔人たちを虐殺していく。

 ある者は関守の如く、ビルの屋上から乱れるような攻撃を放っている。

 「彼ら」は愉しんでいた。

 この死ぬか生きるかのヒリヒリとした状況をアトラクションとして味わっているのだ。


 いや、愉しむしかないのかもしれない。人生と同じではないか。

 化け物は忽然として現れ、無情にも襲いかかってくる。観測者達は『戦士』として捌いていかなくてはならない。

 とても非情だ、残酷だ。愉しんででもいないと、この幻は辛すぎる。


「ほんと、夢みたいだよ・・・。ほんと、狂っていく・・・。」

 そうリーダーの男は思い馳せながら、愉快に嗤っていた。


「こんなこと、一年前には想像もしなかった。」

 そう彼らは思っていた。


 この狂戯劇は、一年前から始まっていたのだ。


 さあ、語ろうか。

 彼らがどんな運命を辿り、どんな結末を迎えるのか。


 そう。これが、彼らの 

    守護者たちの狂想曲だ。



  神技使いのカプリッチオ(狂想曲)

      第一幕 神樂道樂~蠱毒~

                                 開幕。

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