一話フラグは回収されるもの

剣と魔法の異世界に転生した

ついでにその時にスキルを貰って

俺は今度はもっと自由に生きていくと決めた




今世での名前はエスト

この世界では僕に血の繋がった家族はいない

所謂孤児だった僕は16歳まで孤児院で他の子供達と一緒に暮らしていた

16歳に成人として孤児院を卒業して外に出た

と言っても街は移動しない

僕は冒険者になった

装備は適当に数少ない路銀で揃えた

余った手持ちのお金は銅貨20枚

これが僕の全財産だ

冒険者ギルドの受付の人によると明日の朝

初心者の為の講習会があるらしい

必ず参加してほしいと言われたので今日は

そのまま宿に泊まる事にした

一泊銅貨10枚だった

僕の残金は残り銅貨10枚になった

明日からは依頼を受けなければいけない


翌朝


朝早く起きて冒険者ギルドに行く

ギルドの中は朝にも関わらず沢山の人で溢れていた

ギルドの受付に行って講習会について聞く

丁度運悪く入れ違いになってしまったらしく

後から追っかけてくれと言われた


場所は南門を出てすぐの平原で行われているらしい



「よし!次は魔物について...ん?君も講習を受けに来た冒険者か?」


「すみません。途中からですがよろしく

お願いします」


「何、心配は要らないぞ!まだ始めたばかりだからな!」


「そうですか...ありがとうございます。」


やはり間に合わなかったようで他の受講者

からの視線がこちらに向かう

だが教官の冒険者が話始めるとすぐにそちらの方に視線を向けていた

教官が話している間に僕は暇なので他の受講者達を少し観察する事にした

やっぱり見てみると殆どが恐らく僕と変わらない成人したばかりの少年少女だ


この世界では冒険者は前世であった

小説や本とほぼ同じ内容だった

成功すれば富と名声、失敗すれば命を失う

危険な職業だ

普通だったらなろうと思えない

しかし冒険者は英雄譚などで出て来る人気の職業でもある為、なりたい者は少なくない

孤児院でも半分が冒険者志望だった

僕が親なら泣いてるね

まぁ親居ないんだけどね...

とは言えそんな僕も冒険者志望なのだから世の中本当に捨てたものだ

どうせなら燃やしても良いくらいに


僕は転生した時に特典として貰った色欲というスキルがあるからまだマシだが

普通なら孤児院に男として生まれたら余程優れた何かが無いとそのまま強制的に冒険者になって野垂れ死ぬかギリギリの生活をする

とかいうクソルートである

気付いた時、当時12歳だった僕は自分より年下の女の子達の前で泣いた

僕はあの4年前からキャパがオーバーすると泣く癖がついてしまったのだ

本当に酷い話だ


話が脱線し過ぎていたが僕と同い年の彼らの装備は僕と似たり寄ったりの安物だった

何なら僕より酷いやつも居る

さっきも言ったが冒険者を志望するのは

物語などの冒険者に対する憧れだ

きっと退屈な日常から刺激を求めてやって来た者も居るのだろう

いつかここの誰かとパーティーを組むかもしれないな


「こら、そこの君!しっかり説明を聞いておくように」


などと考えていたら遂に教官にバレてしまった


講習会が終わったあとギルドに行き依頼を

受ける為に依頼の掲示板を見る

僕の冒険者ランクはルーキー

最底辺である

当然受けれる依頼もランクが低いものばかり

取り敢えずルーキーでも受けられる討伐の依頼を二つ受ける事にした


「これと・・・これでお願いします」


「はい、スライムと大鼠の討伐依頼ですね。

....ソロで受けるつもりですか?」


「はい、お願いします」


そう答えると受付の人の目が諦めたような気がしたが特に何も言われる事なく


「そうですか..くれぐれも死なないように頑張って下さい」


「?ええ、勿論です」


お生憎様、男に心配されても嬉しくないが

人としての常識があるので返事をしておく

そのまま西門の付近にあるフェンリルの森に

向かった

いざ人生初の討伐依頼へ




「あの少年は駄目かも知れないな」


少年が完全に出て行った後に諦めたように呟く

ここ最近は見かけなくなって安心しようとした途端にまた現れたものだから

つい愚痴を吐いてしまう

2年前にこの街に導入された冒険者になりたてのルーキーに向けた講習会は主に熟練の冒険者が培ったノウハウを教えるという簡単な内容だった。

が、この講習会のお陰で

ルーキー達の死亡率が目に見えるほど下がり

今では殆ど居なくなった程である

しかし稀に熟練の冒険者の言う事を聞かない者も現れるのだ

大抵がちょっと腕に自信があったりして討伐に挑み森に行き帰らぬ人となる

受付の自分からすれば今したあの対応も

見殺しにしているも同然の行為だった

止める権利は有るが、相手にも受ける権利がある注意した所で講習を聞いて尚、討伐を選んだ者が止めることは殆どなかった


「ジュフさん?珍しいですね。そんなやるせない感じになってるなんて」


後輩のシエラが話しかけてくる


「...実はルーキーがソロでフェンリルの森に向かったんだ」


「ええ?そ、それはご愁傷様ですね...」


「まだ死んでもいないうちからそれは良くないぞ。ま、考えても仕方がない。

仕事に戻るぞ」


縁起でもない事を言うんじゃないと注意しようとしたが、自分も同じような事を思っていたと気付き話を終わらせる事にした


「あ、ルーキーといえば私の方でもさっき何組かパーティーが来て雑用依頼をしっかり受けてましたよ」


「おお!そうか、ちゃんと講習会を聴いていたのか。それなら安心だな」


1人こそ討伐に行ってしまったが他のルーキーはしっかりと話を聞いていた様だ


どうかソロで討伐しに行ってしまった彼も

無事帰ってくれば良いのだが

とジェフは祈るのだった





フェンリルの森




この森は良くこの街の冒険譚などで出てくる有名な森だ

名前の通りフェンリルが棲まう森の為危険なのだが広大過ぎる上にフェンリルが現れるのは森の中心部あたりだ

僕が今いる所はある程度森を進んだが外に近い方なのでまず遭遇する事はないだろう


依頼は順調にこなせている

今の所スライムが3、大鼠が4匹討伐している

依頼ではどちらも10匹倒さなければいけないのでもう少し討伐する必要がある

偶にゴブリンなど違う魔物に遭遇するが特に問題なく殺せている

手持ちの武器はナイフのような短剣四つ

セットで安くなっていたので買ったのだが

予想以上に切れ味が良い

何事もないのでこのまま行けば今日の依頼達成出来て銅貨60枚が貰える

帰り道も把握しているし冷静に行こう

・・・もしも道に迷ったりしたら大変な事になる

まぁいざとなれば森を全部燃やせば視界も

広くなって帰り道も分かるようになる筈だ

万が一にもそんな可能性は無いが









魔物との戦闘に夢中になって気付いたら来た道が分からなくなり迷ってしまった

僕はこの森を焼く事にした

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