ねこねこくえすとぅ
雪菜 つむぎ
第1話 すべてはここから
「あぁ~、ちかれたぁ~。もうらってらんねぇよ〜」
そう愚痴をこぼしながら、暗く人気のない路地を千鳥足でフラフラと歩いている。
特に理由もなく大学まで行き、周りに流されるがまま一般企業に就職してからはや二年。
俺――夏梅蒼也(なつめそうや)は社会の荒波に飲まれていた。
もーマジでつらい!
あのクソ上司が何度も無理難題を押し付けてきて毎日毎日残業だし、
自分がミスした時は、「連帯責任だから」とか言って俺も一緒に謝りに行かせるんだぜ?
もー今度会ったらぶん殴ってやる!(まぁできないんだけどね)
とまぁ、こうした鬱憤がたまって我慢できなくなり、俺は今日酒に逃げた。
結果、泥酔して終電も逃してしまい今、寒空の下を歩いているのである。
「くそぅ、ぜってえつぎはていじでかえってゴロゴロしてやる~」
「うぅ、ほんとなにいってんだろ、なさけない……ねぇ、なぐさめてよぉ~」
と、若干面倒くさい男となっていたその時、
『……聞こえますか……』
と、どこからか不意に声がした。
良く通る中性的な声だ。
だが、ここは真夜中の人気のない路地。
それに近所でもないため、声を掛けられることはまずない。
普通なら警戒し無視したりするのが安全なのだが、
「ふぇ?らんれすかぁ~?」
そう、俺は酔っていたのだ。
『あなたは、異世界に転移する権利を得ました。これよりあなたの下にゲートを開きます。あと数十秒後に完成するので、しばらくお待ちください』
『それと異世界に行くにあたって何か一つ願いを叶えましょう。身体のステータスアップなど、世界をs……』
「なんだよ、さっきからいみふめーらこといって~。え?ねがいかなえてくれんの?じゃーねー、おれはぁ、ねこになってまいにちだらだらしたーい」
『ち、ちょっとあなた!そんな願いでいいの⁉これからあなたは…ってゲートがっ‼』
「げぇと?なんだよそれぇ~。もぅいいからはやくねこに……ウギャ‼」
どうやら、道の側溝におちてしまったらしい。
だが、そんなに深くないはずなのにどこまでも落ちていくような感覚がある。
『……ッ!どうかご武運を……』
遠くでさっきの声が聞こえる。
俺は疲れからか、酔いからか、それともなにかしらの力のせいなのかとてつもない眠気に襲われた。
「きもちいいし、ねちゃうかぁー」
朦朧とする意識の中、重力から解放されるような感覚を味わいながら、俺は深い眠りに落ちた。
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