ガールズトーク、ボーイズトーク ④
「カメラマン、出番よ」
「ハイ、監督」
レナはマユの指示通り、マコトのかわいい笑顔にメロメロになって微笑んでいるハルの写真を、何枚かスマホのカメラで撮った。
「さすが、スマホのカメラでもプロは違う!!次はレナとマコトとのツーショット、私が撮るよ」
マユはマコトを抱いたレナの写真を何枚か撮って、スマホをレナに渡した。
「それ、片桐に送って。もちろんハルちゃんの写真もね」
「え?リュウさんじゃなくて?」
「いいのいいの。片桐がリュウに見せるから。その後、間違いなくリュウに転送する」
「なんで?」
「リュウは自分から送ってくれとは言わないだろうけど、片桐がリュウの気持ちを察して勝手に送る。リュウは誰にも見られないように一人でその写真を眺めて、早くハルちゃんをお嫁さんにしたいな、子供ができたらこんな感じかなってデレる。間違いない」
「そこまで……。さすがマユ……」
ユウは手元のスマホがメールを受信した事に気付き、メール受信画面を開いた。
【ハルちゃん、お昼前に無事に着いたよ。
美味しそうな桃とブドウいただいたの。
ユウからもリュウさんにお礼言っておいてね。
今、マユとマコトくんも遊びに来てて、
みんなでおしゃべりして楽しく過ごしてます。
写真を撮ったので送るね】
添付された画像を開き、マコトを抱いて微笑むレナの姿を見て、ユウは嬉しそうに笑った。
(めちゃくちゃ可愛い……。それにしても、随分たくさんあるなぁ)
画像を順番に見て、ユウは笑いながら、隣で指輪を眺めてぼんやりしているリュウを肘でつついた。
「なんだ?」
「ハルちゃん、お昼前に無事に着いたって。美味しそうな桃とブドウいただいたから、リュウにも『ありがとう』って言っておいてって、レナが」
「そうか……」
「あと、これ」
ユウは、マコトを抱いて微笑むハルの写真を画面に写し出して、リュウに差し出した。
さっきまでぼんやりしていたリュウが、急に目を見開いた。
「佐伯……じゃなくて、前に雑誌の編集長やってた三浦 麻由、覚えてるだろ?オレとレナの幼馴染みなんだけどさ、子供連れて遊びに来てて、一緒に写真撮ったんだって。さすがレナだ、プロのカメラマンだけあってよく撮れてるよな」
「ああ、そうだな……」
思わずハルの写真に見入ってしまった事が恥ずかしかったのか、リュウは慌てて画面から目をそらした。
(わかりやすいのに素直じゃないなぁ……)
「何枚かあるから、送ってやるよ」
「いいって……。ハルの写真なんて、今更だろ」
「要らないの?じゃあ、もったいないからタクミに見せてやろっと。アイツ、ハルちゃんかわいいって気に入ってるみたいだから。タク……」
ユウがタクミに声を掛けようとすると、リュウが慌ててユウの口を塞いでそれを遮った。
「バカ!それだけはやめろ!!」
「今、オレの事呼んだ?」
前の方に座ってトモとハヤテと話していたタクミが振り返った。
「なんでもねぇ!!」
「そう?呼ばれたと思ったんだけどなぁ……」
焦って返事をするリュウに首をかしげながら、タクミはまたトモとハヤテと話し始めた。
ユウは意地悪く口元に笑みを浮かべながら、落ち着かない様子のリュウを見る。
「ふーん……?それはジェラシー?」
「うるさい……」
込み上げる笑いを堪えながら、ユウはスマホを操作する。
「じゃあ、リュウが見てあげなよ。すっごくかわいく撮れてるから、惚れ直しちゃうかも……。送るよ?」
「わかったから……。もう好きにしてくれ……」
言い返す気力もなくなるほどぐったりしたリュウのスマホに、ユウはハルの画像データを送信した。
「ハイ、送信っと。せっかくだから待ち受けにしたら?」
「するか!!」
「ふーん……。オレはレナとマコトの写真を待ち受けにしようかな。子供が生まれたら、オレが撮ったレナと子供の写真待ち受けにしよう」
「愛妻家な上に今から子煩悩だな、ユウ……」
「かわいい嫁はいくら見てても飽きない。多分、子供と一緒なら尚更だ」
恥ずかしげもなく『かわいい嫁』などと言うユウに半ばあきれながらも、思っている事を素直に言葉にできるユウが羨ましいともリュウは思う。
「ハイハイ……。ノロケ話ほどアホらしいもんはねぇな……」
「って言いながら、リュウも一人でその写真眺めてデレるんだろ?」
「……デレねぇっつーの」
(絶対誰もいない所で一人で見よう……)
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