ためいきのゆるさ

識名 たつみ

書店

中学3年の夏休みから、週一で書店に行くことが僕の楽しみになっている。


どの書店でも、お店に入ると必ずといっていいほど、

まず目に飛んでくるのは、新刊や話題書だ。

テレビやネットで紹介された人や話題本、

有名な作家さんの新刊などが並ぶ場所だ。

ここは素通りできない、決して見逃せないスポットなのだ。

オフィス街、住宅街、ショッピングモールなど書店のある地域や広さ、

店員さんの陳列方法などによって生み出される多少の違いが、

その書店の個性として表れ、自分好みの書店かどうか。

そして居心地の良さのカギを握る。

と僕の感覚があるからだ。


それらにザっと目を通してから、

音楽、芸能、ファッション、スポーツ、旅行、デザイン、料理、女性誌、インテリアなどなど、雑誌の表紙は見逃せない。

自分とは無縁と思っているものの中に発見があるのだ。

とはいえ先ほど述べた半分のジャンルは、僕にとって高尚なものになっており、

文字通りパラパラと目を通すことしかしていない。


というのも中学生、高校生の時は予算に今以上の厳しい限度があったため、

一冊の本しか買わない、いや買えないのに4時間書店にいることもあった。

最近の書店は椅子などが置いてある場所もあるが、あの頃にはまだなかった。

それでも椅子がなくても、立ち読みで過ごせるほど楽しかった。

しかし最近は悲喜こもごもで、そこまで時間をかけることができない。


この他にも、あまり知り合いに出くわすこともなかったので、ゆっくりできたこともある。

もしかすると書店での時間は人に干渉されたくない時間なのかもしれない。

唯一の例外は、幼稚園の同級生とたまたま立ち読みで隣同士になり、

ご飯にいくきっかけとなったことくらいだ。


書店に平積みされた本のブックカバーの文字のフォントやイラスト、

配色などデザインはもちろん、時期や出版社によってカバーが違うこともまた興味をそそられる。

同じ本であっても単行本と文庫本の違いや、ブックカバーが違うだけで手に取ってみたくなったりもする。

かつては読んだことのない本ばかりだったのが、読んだ本も増えてくると、

「これいいよね!」「ブックカバーがかわいくなってる!」

「あ、しぶいとこついてきましたねぇ」など、心の中で一人楽しんでいる。


特に夏休み前はそういった企画やフェアをよく見かける。

そこに散りばめられた本だけではなく、

印刷された文字やフォントの種類、丸文字の手書きPOPから本の内容だけでなく、

その書店の店員さんの好みやオススメを読み取ることができる。

僕の書く字は、本人が見返しても、

驚くほどに暗号化されているので、ここにはあこがれも含まれている。


混雑する書店は苦手だし、友人からオススメを借りたり、ネットで本を探して購入することもある。でもたまたま出会った本の中に新しい感覚が見つかったりするから書店は楽しい。きっとこれからも訪れ続けるだろう。





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