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雨上がりの道路は、非常に滑り安くなっている。そんなことは、誰でも知っているような当たり前のことで、マンホールなどの上は、特に滑り安くなっているのは、小学生の頃などに、誰もが経験したことがあるだろう。

俺はいつものように、自主練のランニングをしていた。

いつものコースを、いつものペース、いつもの時間に、音楽を聴きながら走る。いつもと違うことは、昨日の夜の雨によって、地面が滑り安くなっていることぐらいだろう。

「運命。ペースをあげよう」

俺は、音楽の種類に合わせてペースを変えたりすることがある。

流れる音楽によってペースを変えるのは良くないと、言われることもあるが、これをすることによって、実際に走っている時に、ペースを急に乱されても、対応ができるようにもなったりする。

乱されるのがそもそも良くないと、言われたりもするが、ラストスパートをかける時や、勝負を仕掛ける時などの練習になるため、俺はこの方法を悪いとは一度も思ったことがない。

「坂道を登りきるまで…」

そう口にしてから、脚に力を入れて、ペースをあげようとした時だった。

「あれ…」

気付いたら俺は落下していて、日が昇りきっていない空は、所々に雨雲が残っていて、先程まで雨が降っていたということに、気づかせてくれる。

地面に叩きつけられた衝撃で、全身に痛みが走り、立ち上がることはできない。

力が抜けていき、声を出すこともできないが、意識だけは、はっきりしている。

「大丈夫か?」

そう聴こえたのを境に、目の前が真っ暗になり、重い瞼を開けると、先程までとは違う、真っ白な天井が見えた。

「天国かな」

何気なくそう口にして、左を見ようとすると、聞き慣れた声がした。

「何言ってんの?あんた」

「え……」

きっとこの時の俺の顔は、絵に書いたような阿呆の面をしていたのだろう。母は笑いながら、先生を呼びに言ってくると、言って、病室から出ていった。

「病院に運ばれたんだ」

まだ少し体は痛かったが、無事であることにホッとして、口からは安堵のため息が出た。

少し待っていると、扉が叩かれ、白衣を着た男性と一緒に、母親が病室に入ってきた。

「元気そうだね。痛いところとかない?」

白髪まじりの髪の毛の男性は、優しそうだ。

「全身少し痛いんですが、我慢できないほどでは無いです」

そう言うと、笑いながら昼前に検査をするから、と言って、熊谷(くまがい)という医者は、病室を出ていった。

母もそれに続くように、着替えとか色々持ってくるね、と言って病室を出ていこうとするので、スマホは?と尋ねると、それの中と言って、ベッド横にある、収納スペースを指さした。

「一応皆に連絡するか」

そう言って、スマホを操作し、トークアプリで、仲の良い人達のグループに文を送り、横になる。

「陸上どうしよう」

そう口にして、自分の身体に残る痛みを感じながら、目を閉じた。

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