ワンナイト・カーニバル
情緒不安定
第1話 気になるあの子
美人はたいてい窓際の席に設定されがちだが、篠宮夢乃の席もやはり窓際だった。高校に入ってすんごい美人がいるという噂はあっという間に広がり、そいつが自分のクラスに、しかも俺の席の隣になろうとは思ってもみなかった。篠宮の睫毛はとても長く、つけまつげをつけているのではないかと疑わしく思うほど。彼女の一挙一動に周りの男子は興奮し、ため息をついた。僕も認めたくは無いがそのうちの1人である。今だって彼女の黒髪に触れたくてたまらないし、その柔らかそうな二の腕をもみもみしたいと本気で願っている。篠宮は隣の席の俺がそんなことを思っているとはつゆ知らず、真面目に数学の授業を聞いている。俺は「何で点Pが動くんだ」と誰でも言える愚痴をちいさな声で吐いたところでノートを取ることを諦め、彼女をこっそり眺めることに集中し始めていた。そんな俺だが彼女にあまり話しかけたことはなく、おはようくらいしか会話をしたことがなかった。消しゴムをわざと忘れたこともあったが、結局言いだせず、単に不便な一日を過ごしたこともあった。今日こそは。今日こそは彼女に話しかける。俺は早く休み時間になるのを誰よりも待っていた。俺は彼女のことをもっと知りたい。
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