キツネの墓標

ルー・ガルー

温泉

「ナナ、その肩のキズ痛くないの?」

あ、あーこれね、と少し恥ずかしそうに傷跡を隠した。

「そういうキズならパークの技術で完全に治せるって聞いた事があるけど、アレは本当じゃないの?」

と片目に眼帯をつけたまま温泉に浸かる悪魔は不安そうに言う。パークの医療に大切な人を預けているから不安なのだ。

「うん、本当は綺麗に治せるんだけどね」

「だけど?」

キタキツネの問にナナはなかなか答えられなかった。

「思い出...?上手く言えないけど、大切な傷跡なの」

「私、何となくわかるかも。大切な思い出がキズで残るの」

トナカイとキタキツネはええーと理解できないふうだ。

「それに私はこれがあるから強くありたいって思えるの。飼育員としての誓いかな」

「そっかー。でもボクは傷跡はない方が綺麗だと思うなぁ...」

ナナはハッとした。キタキツネはこの傷を見る度に謝っていた。私にとっては愛おしい傷だったけれど、もしかしたら本気で私の傷に心を痛めていたのかもしれない。本当は傷なんか無い方が好きだったかもしれない。

だけれど、手元に残った僅かな思い出として刻まれた跡は消すことは出来ない。

私はいつまでも墓標を背負って生きていくそう決めたのだから。

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キツネの墓標 ルー・ガルー @O_kamiotoko

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