このカラス、百獣の王を志す。
ハッピーエンド厨
百獣の王
第1話 思い出し
不思議な卵から出た瞬間、前世の記憶が昨日のように蘇った。
「ではぁ、??くんの二十歳を祝って乾杯」
賑やかな居酒屋の中で人一倍大きな声が響き渡る。二十歳の誕生日、人生の中で一際期待がふくらむ日。俺にとってはそれが今日だったりする。俺の友人は俺の初酒体験をみんなで祝おうとと、随分と張り切ってくれた。本当に素晴らしい友を持ったものだ。
「とりあえず、生四つおかわり」
楽しい宴は夜中まで続いた。
「えへへ、空真っ暗」
「やっぱり、初回生じゃきつかったんじゃ……」
「ビールとコンビニワインぐらいしか飲んだことない俺らに他の選択肢あった?」
「「言えてる」」
「喉かわいた〜水〜」
「駅まで待ってくれ……お願いだから」
「みず……あ」
「そんなに飲みたかったら川の水でも飲……め……」
心地よい浮遊感。火照った体には寒い位の風が叩きつける。
そして鈍い音と共に視界は赤く染まった……
……酒で酔って挙句に死ぬって俺史上
最高に大恥かいたな!ごめんなさい、縁起の良い日に一生忘れられないトラウマ作って。
にしてもこの暗い場所は何処だろうか。あの世か?にしては現実味があるくらい岩とかリアルだけど。洞穴らしいな。ていうことは日本?俺死んでないのか?
なんか足短いよな。むしろ人間的な足じゃないくらい。これ……いや過度な決めつけは嫌われるぞ自分。とにかく、近くに少しは水溜まりくらいできてるし、喉も相変わらず乾いたままだ。ひとまず落ち着こう……生水って飲めるのかな。
水面を覗くとうっすらと影が見えた。
鳥?黒……い?これ。
「カラスじゃねぇかよ!!」
卵から出てきた時点で薄々感づいてたけど、もっとこうなんかあっただろう。ドラゴンとか!ドラゴンとか!いろいろあっただろう!よりにもよってカラス……だったら親鳥は?百歩譲って普通巣から始まるよねこういうのって。捨てられた?いきなり人生詰んだ的な。
というか俺死んだんじゃなかったのでは?
「カラスに転生とか……」
「さっきから何を言っている。」
「?!」
背後からドス黒い声が聞こえた。まてまてまて、こんな不遇な転生してから人生即ゲームオーバーですか。暗くて360度警戒できる状況じゃなかったのは確かだけど、これはあまりにも理不尽だ。って言ってる場合じゃねえ!
背後をとられている今、自分の命はもう、後ろのなんらかの生物に取られたも同然。すぐさま最低限の自分の身の安全を……うん、ゆっくり、ゆっくり
ダイジョウブ、声はあれだがきっと生まれたての私を大事にしてくれる優しい優しい仲間がそこにいる。振り向けばほら、とっても凛々しいタテガミが
タ、テ、ガ、ミ
「アーーーーワ?!おいしくないです!おいしくないです!」
「生まれたのか。食わないからそこに座ってくれ。」
呆れたようにそう返してこっちを見た。ライオンだよな?俺のこと食わないとか聞こえたけど、信じていいのか?
「早く座れ」
「え、あ」
なんだか拍子抜けのような会話だ。油断したところを襲うのか。カラスにそんなことする必要もないしそれはない。話くらいは聞いても良さそうだ。
「んと、ところでその〜ライオン様?は一体誰ですか。」
「そこらへんは追い追い話すが。あーどこから言えばいいだろうか。」
言葉を探すように沈黙が続く。
「……まぁとにかくだ、お前は生贄として親鳥が売った。そこでこれからどうするか聞こうと思うのだが。」
聞き捨てならないことが聞こえましたが。
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