第2話
楠(くすのき)春人(はると)は今年で28歳のフリーターだ。毎日毎日、好きでもない深夜のコンビニでレジ打ちとして糊口を凌いでいる。
……本当なら今頃デビューして印税生活だったのにな………。
3年前のことである。春人がギターボーカルを務めるオリジナルバンドがコツコツとやって来たライブの評判も相まってたまたま来ていたレコード会社の人間の目に留まり、トントン拍子にメジャーデビューが決まった。
やっと俺達の音楽が認められた。今まで自分を冷ややかな眼で見ていた周りの連中に一泡吹かせてやれる、と意気込んだものだ。
……しかし、悲劇というものはいつも突然人に襲いかかるものだ。ある日のスタジオからの帰り道、春人は後ろから蛇行してきた大型バイクに跳ねられた。その結果、両腕を複雑骨折してしまい、二度とギターを弾けない体になってしまったのだ。それに伴ってデビューの話も立ち消えた。
(畜生!!)
深夜のコンビニで客もおらず、一人陳列に勤しむ春人は思わず舌打ちする。
(あの酔っ払いのせいで俺の人生ぐちゃぐちゃだ!!畜生!!)
思えば7年前もそうだった。(百合江(ゆりえ)………。)
俺の人生はいつもこうだ。幸せが向こうからやって来たと思ったら無惨に希望は打ち砕かれる。
「……もう、限界だ…………。」
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