絶望の魔王
たじ
第1章 転生、そして……
第1話
………ゴゴゴゴゴゴゴゴッッッッ!!!!!ゴツゴツとした険しい岩山の上に聳える魔王城。
その最奥部で魔王は玉座に座り静かに微笑む。
「さぁ、勇者よ。さっさと俺を殺しに来い……。」
赤黒い、頭から生えた2本の角にストレートに流した肩まである白い髪。緑の虹彩を見開きもう一度魔王は呟く。
「勇者よ……。早く俺を殺しに来い……。それが俺達全ての願いだ……。」
………魔王の呟きに答えるかのように不気味に雷鳴が轟いた……。
……今日も歴戦のつわもの逹が魔王城へとやって来る。……全くどいつもこいつも馬鹿ばっかりだ。
魔王の臀部からヌニュッと生えている、蜥蜴のようなそれでいて遥かに逞しい尻尾が右に左に揺れる。
……「勇者」以外に自分を屠れる者などいない、というのに……。
明日も明後日も聖都の魔方陣経由でこの魔王城へと腕に覚えがあるもの逹が押し寄せるのだろう……。決して自分達に「魔王」という存在が倒せる訳がない、とは夢にも思わずに。
「ファル・クタン!」
魔王は自分自身に魔法をかける。その瞳に自分自身のステータスが投影される。……一体誰に手が負えるというのだ…。この能力値……。こんなもの、「勇者」以外の一体誰に………。
ひとりでに笑いが込み上げる。
「クククッッ!!ハァーーハッハッッ!!!アーーハッハッハッッ!!!」魔王の目尻にキラリと光るものが浮かんだ……。
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