第22話
「……ひょっとしてベネディの森で倒れていた死体はコイツにやられたんじゃないか?」
「……そうかも知れませんね。」
俺の呟きにリーンが答える。
「こういう訳のわからんモンスターは魔術研究所の連中が見たら大喜びしそうじゃがのう!」
「………確かに……。」
俺の横でリルとマリスが言う。
「……まあ良い!さっさと次の街に向かうとするぞ!」
リルが先導して歩きだそうとしたその時
「……あのう私共もご同行させていただけないでしょうか?」
と商人の一人が話しかけてきた。
「……えっ?……まあ良いがのう。好きにせい!」
リルがそう返し俺達はクリガまでの道中を商人の一団と一緒に行くことになった。
◆ ◆ ◆ ◆
その頃。
聖都ラングーンでは…………。
魔導騎士団の本拠地裏手の公園にシンはキィールの伝言通りやって来ていた。
「……………………………。」
シンは緊張した様子で眉を寄せて何事かを考えている。
その時闇に紛れて黒い服の男が一人シンに近づいて来て言った。
「……シン様。裏手の勝手口を開けておきましたのでそこから中にとの事です。」
声をひそめて男が言うと
「……分かった。」
とシンは一言だけ返して
男と連れだって魔導騎士団の本拠地の裏へと歩いていった。
キィーッ。微かに裏手の木戸が音を立てる。
静かにシンと男は裏手のドアを潜って本拠地内部へと足を運ぶ。
男の先導のもとしばらく歩くとキィールと数人の騎士の姿があった。
「……よいか。奴には食事の際に強力な睡眠薬を盛ってある。もう効き目が出てぐっすり眠っておるはずじゃ。わしとこの者達が緊縛魔法で奴を縛る間お主にはわしらの側にいて万が一に備えてもらいたい。……ひょっとするとわしらが緊縛魔法を使っている間に目覚めんとも限らぬからな……。」
声を落としてキィールが言うとシンはコクりと頷いた。
「……良し行くぞ……。」
一同がクォークの部屋の前までやって来るとそこにいた騎士の一人がソーッと鍵を開けてドアをゆっくりと開いた。
「!?!?」
キィール達は思わず息を飲んだ。
ベットはもぬけの殻であり窓が開け放たれてカーテンが風に揺れている。
「……ナビスには薬の類いは効かぬ、ということか。」
キィールが呟いている間にシンが窓際まで近づいて窓の外を確認する。
「……奴の姿はどこにもありませんな。」
シンが言い開いている窓を閉める。
「……奴が大人しく立ち去るとは思えんのじゃがのう。」
キィールが眉を寄せて唸り声を上げて考え込んだ。
「……フフフフフフ……。」
先程この部屋の鍵を開けた頭から目深にローブを被った騎士が突然笑いだした。
「……気を付けるんじゃっっ!!……まさかもう騎士の一人になり変わっていようとはな……。」
まだ笑い声を上げている騎士からその場にいた全員が距離をとって遠巻きに構える。
「……揃いも揃って無能よのう。魔導騎士団よ……。
」
そう言うとナビスは騎士の姿から本来の姿へと戻っていく。
長い白髪に頭に生えた2本の黒い角。瞳の色は妖しい黄金色に光り両の手には鋭い黒い爪が生えている。
「ナビス!覚悟っ!!」
そう叫ぶとキィールと回りにいた騎士達が呪文を唱え始める。
「
「……フン!そんなものに掛かっては堪らん!!」
ナビスは素早く後退して魔法から身をかわし窓を
突き破って外へ出ていった。
「……ふぅむ。やはり一筋縄では行かんかったか……。」
「おい!お前達!さっさと奴を追いかけんかっ!!」
「……まあ待てシンよ。悪戯に追いかけていってまた騎士に化けられても困る。それよりも今は皆に知らせ警戒させるとしよう。お主ら他の者に急ぎ伝えよ!」
「ハッッ!!」
と周囲の騎士達がキィールに答えて慌てて部屋の外へ走り去っていく。
「クッッ!!」
シンが悔しそうに歯噛みした。
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